これまでも、海軍の潜水艦から発せられたソナー(音波探知機)の音により、クジラやイルカが大量死するケースが報告されていたが、海の騒音は他にもある。
海上に風力発電を設置するには杭を打ち込まねばならないが、この時にも激しい音が発生する。地震調査もそうだ。これらの音が、イルカやアザラシといった海の哺乳類たちを難聴にしたり、方向感覚を失ってしまう恐れがある。
そのため各国は海の騒音規制が設けているが、現行の規制は米海洋漁業局による7年前の研究に基づくものだ。
このほどデンマークの研究グループが、騒音と海洋動物の聴覚についての最新データを調査したところ、騒音規制を変更する必要性があることが明らかになったそうだ。
デンマークのエネルギー庁や米海洋大気庁海洋漁業局などによる海の騒音規制は、海軍ソナー・杭打ち・地震調査などで発生させてもいい騒音に上限を定めることで、海洋哺乳類の耳を守ることを目的としている。
騒音規制は、飼育された動物の実験に基づいたものだ。動物を騒音にさらして、聴覚が一時的に低下(聴覚疲労)する最小の音量(騒音暴露に起因する一時的なしきい値の移動:TTS値)を求めるのだ。
TTS値は一時的な難聴を引き起こす最低限の騒音レベルだが、ここから永続的な障害につながる騒音レベルを推測することもできる。
また動物によって聴覚が違うため、それぞれの動物グループに合わせたガイドラインも作成されている。デンマーク・エネルギー庁の海の騒音規制の最新アップデートにはこうしたデータが反映される。
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皮膚に吸盤で電極を取り付け、聴覚の感度を測定する実験中のネズミイルカ / image credit:Solvin Zankel, Fjord&Belt, Kerteminde, Denmark
動物を守りつつ、経済活動も過剰に規制しない値を設定
オーフス大学のヤコブ・トゥガード氏は、風力発電の杭打ちに特に関係しているのが、ネズミイルカとゼニガタアザラシであると説明する。
彼らは音に非常に敏感で、生息域である西ヨーロッパの浅瀬は、風力発電の建設が急速に拡大しているのだそうだ。

これまでのガイドラインは、限られた周波数によるごく限られた計測データに基づいたものだ。
[もっと知りたい!→]背徳の愛?イルカとクジラの交雑種が発見される(アメリカ・ハワイ)
今回の研究では、今のところその周波数内では妥当であるものの、高周波数のデータはネズミイルカに、低周波のデータはアザラシにとって適切でない可能性があることが明らかになっている。
デンマークの新たなガイドラインの変更は、これらの新しい結果を考慮したものとなっている。
トゥガード氏は、「現在のガイドラインを変えることは、動物を守るだけでなく、将来の経済活動を過剰に規制しないためのものでもあります」と述べている。
この研究は『The Journal of the Acoustical Society of America』(2022年6月28日付)に掲載された。
References:Update noise regulations to protect seals, porpoises: study / written by hiroching / edited by / parumo

(出典 news.nicovideo.jp)
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