令和の社会・ニュース通信所

社会の出来事やニュースなどをブログに書いて発信していきます。あと、海外のニュースなども書いていきます。

    カテゴリ:国内 > 評論家


    スウェーデンの現状は私たちに警鐘を鳴らしています。高福祉国が直面する課題を理解することは、国際社会の一員としての責任です。

    ■「北欧の理想郷」が一番危険な国に

    スウェーデンと聞くと、理想の国のように思っているのは日本人だけでなく、ドイツ人も同じだ。究極の高福祉・高学歴で、あくせく働かなくても豊かな生活が送れ、自然や景観は美しく、子供は天使のように愛らしく、すらっとした金髪の見目麗しい男女が歩いている国……といったイメージだ。

    ところが、天国に一番近かったはずのそのスウェーデンが、いつの間にか、ヨーロッパで一番危険な国になってしまった。性犯罪暴力団抗争、銃撃戦、射殺事件の件数が、どれも飛び抜けて多い。スウェーデンの統計によると、2023年は銃撃事件で53人が死亡。なお、英国国会統計局のデータを見比べると、スウェーデンでの射殺事件は、イングランドウェールズにおける総数を上回っている。

    スウェーデンの人口は1054万人だから、日本に置き換えると、1年で620人余りが、犯罪者の手によって射殺された計算になる。スウェーデン警察によれば、現在、殺人容疑のかかっている15歳以下の子供が、少なくとも93人もいるのだそうだ。これらの報告には、皆が言葉を無くす。

    また、同じく23年、車や建物に爆弾を仕掛け、破壊した事件も149件起こった。やはりヨーロッパ最大規模だ。しかも、大きな問題は、これらの犯罪のほとんどが、外国生まれか、あるいは外国人移民の2世の手によるものだということだ。

    ■国民の2割が移民になった国で起きている現実

    スウェーデンはこれまで、世界一と言ってもいいほど寛大な移民政策を敷いてきた。来る者は拒まず、しかも、条件を満たせばほぼ全員に永住権、さらには国籍を与えた。特に、2015年、メルケル独首相がドイツ国境を開いた時、そこからさらにスウェーデンに移動した難民が16万人に上ったという。多かったのが、シリア人、アフガニスタン人、ソマリア人だ。

    結局、過去25年間にスウェーデンが受け入れた外国人は227万人で、今では国民の2割はスウェーデン生まれではない人たち。そして、気がつくと、かつての北欧の模範国は、犯罪王国になっていたわけだ。

    スウェーデンの一定の都市の一角には、警察も足を踏み入れたがらない危険地区ができ、凶悪な犯罪組織がそこを根城にしている。移民系の犯罪者のほとんどはそれら犯罪組織のメンバーで、暴行、窃盗だけでなく、麻薬や武器の販売、人身売買などに携わっている(蛇足ながら、ドイツでもまさにこれと同じ現象が起こっている)。

    それどころか、彼らの“業務内容”は、最近では殺人の請け負いにまで発展しているとされ、2024年8月23日付の英紙「ザ・タイムズ」がそれについて、「スウェーデンの犯罪組織が、若い殺し屋たちをスカンジナビアの隣国に輸出している様子」というショッキングなタイトルで報告している。つまり、今やスウェーデンの犯罪は隣国にまで浸み出しているらしい。

    ■「病的で腐った暴力の文化が広まる」と批判

    例えば、お隣のデンマークでは、24年の4月から8月までだけで、スウェーデン人の手による凶悪犯罪が25件も起こったという。犯人のほとんどが18歳未満の未成年なのは、おそらく捕まった後、刑が軽くて済むからだろう。ちなみに、殺人の報酬は8000ドルから上限なしだそうだ。

    この状況に激怒したデンマークの法相は、「スウェーデンで繰り広げられているような、完全に病的で腐った暴力の文化が広まることを、われわれデンマークは断固拒絶する」と、辛辣に批判。実は、過去のデンマークでもやはり外国人が増えすぎ、さまざまな弊害に悩まされたが、政府は方針を180度転換。デンマークは、スウェーデンともドイツとも橋でつながっており、電車でも、車でも、また歩いてでも入れるが、ここ数年、超党派で不法難民の撲滅に全力を注ぎ、国境も徹底的に監視している。

    さらに通称「宝石法」という法律も作り、難民申請する者は、滞在費その他の経費を負担するため、手持ちのゴールドや宝石を全部、デンマーク当局に渡さなければならなくなった。手元に残せるのは結婚指輪など、ごく限られた特別な意味を持った物のみだという。

    それにより、難民のデンマークを目指すモチベーションが低下したことは言うまでもなく、難民申請数は激減。現在、デンマークが受け入れているのは、国連の斡旋による本当の難民と、ウクライナ難民のみで、国境侵犯の難民は昨年も一昨年も認可していない。将来は、実質増加ゼロを目指しているという。

    ■「帰れば500万円あげます」破格の追い返し策

    それに比べてスウェーデンは、犯罪がすでに制御不能のレベルに達してしまっているせいか、政府は弱気で、改革が徹底しない。それどころか昨年9月には、2026年からは合法移民として暮らしている人が自主的に帰国した場合、35万クローナ(約500万円)を支払うと決めた。同様の「祖国での新生活のための補助金」を出している国は他にもあるが、500万円は破格だ。現在、シリアの平均月収は81米ドル(約1万1000円)だそうだ。

    ただ、言い換えれば、これだけのお金を出しても帰ってほしいということは、滞在されるとずっと負担が大きいということだ。移民を労働力にしようと思って受け入れ続けたスウェーデンでの結果がこれだという事実を、日本政府はよく吟味したほうがいい。

    なお、現在、スウェーデンの犯罪輸出に戦々恐々としているのはデンマークだけでなく、ノルウェーフィンランドも同様。これらの国々も国境の監視を強化しているが、もし、うまくいかない場合は、シェンゲン協定の中止も考えているという(シェンゲン協定とは、アイルランドキプロスを除くEU25カ国に、アイスランドノルウェースイスリヒテンシュタインを足した29カ国が加盟している協定で、国境検査をせず、域内の自由な通行を保障している)。シェンゲン協定こそ、EUの崇高な理念の1つだったが、事態はそこまで差し迫っているのだ。

    ■日本とドイツだけが世界に逆行している

    EUの多くの国と、米国などが、現在、難民の受け入れを制限し、不法難民の取り締まりに本腰を入れ始めているが、その中で唯一、いまだに、来る難民はすべて受け入れようとしているのが、ドイツ緑の党社民党だ。だからドイツでは今も難民は入った者勝ちで、追い返される心配はほぼ無し。しかも、昨年夏、社民党は帰化の条件を大幅に緩和したので、就業移民は永住も夢ではない。

    しかし、そこまで行きつかない人たちは圧倒的に多く、2023年、移民・難民にかかったコストは、統計データ会社「Statista」の資料によれば297億ユーロ(約4.5兆円)。これらすべてが国民の肩にのしかかってくる。

    日本は幸いなことに島国なので、徒歩や自動車でやってくる難民はいないが、法務省の発表によれば、2024年末時点での在留外国人数は376万8977人で、極めて多い。しかも前年比10.5%増で、増加傾向は続く。さらに、日本国籍の取得も容易になっている。そして、外国人の4人に1人が中国人と、かなり偏っている。

    なお、難民に関しては、最近、埼玉県クルド人が問題となっているが、彼らが本当に難民と言えるのかということも含めて不明瞭なことが多すぎる。なぜ、日本とドイツだけが、他国とは逆行した移民・難民政策をとっているのだろう。

    ■40年住んで見たドイツの変わりよう

    先月、『移民難民ドイツからの警鐘たった10年で様変わりしたヨーロッパ』(グッドブックス)を上梓した。40年以上も暮らしているドイツだが、ここ10年で街の風景がすっかり様変わりしてしまった。どんどん送られてくる難民の世話に、自治体は悲鳴を上げ、医療保険は傾き、学校は崩壊していく。それどころか、今では彼らが頻繁に起こす無差別テロで、しばしば罪もない市民が殺されている。

    これまでスウェーデンドイツにとっても模範国だったが、最近は、「スウェーデンの真似をしてはいけない」という声まで聞かれるようになった。

    4月、ドイツの内務省が発表した犯罪統計は、戦慄を覚える内容だった。24年の暴行、殺人、性的犯罪など重犯罪が21万7277件で、前年比1.5%増。毎日ほぼ600件起きている計算。中でもナイフによる傷害、殺人事件が前年比10.8%増で1万5741件。こちらは毎日ほぼ43件。しかも、若年層の犯罪が急増しているという。

    なお、容疑者のうち非ドイツ人の割合が7.5%増。婦女暴行、および性犯罪は9.3%増だ。

    ■これは「国の破産宣告」ではないのか

    2月は、ドイツにおける最大のお祭り、カーニバルの季節だが、今年はいくつもの都市で開催が中止された。理由は、1)テロの危険があること、2)それに対する十分な警備をするお金がないこと、そして、3)たとえ警備を厳しくしてもテロを防ぐことはできないかもしれないことだった。ドイツ国の破産宣告のようなものではないか。

    ドイツの場合、難民政策が、“ノー・ボーダー、ノー・ネイション”という左翼のイデオロギーに則っていることは確実だ。では、日本政府は? “ノーと言えないDNA”のせいだとしたら、あまりにも危うい。遠慮し、我慢しているうちに、治安も財政も急速に悪化する。そして、それらは簡単には元に戻せない。

    日本人は、EU、およびドイツの状況をしっかり見て、取り返しのつかない事態になる前に一度立ち止まるべきだ。そして、歩むべき最善の道を、まずは真剣に議論してほしい。

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    川口 マーン 惠美(かわぐち・マーン・えみ)
    作家
    日本大学芸術学部音楽学科卒業。1985年ドイツシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ライプツィヒ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)が同賞特別賞を受賞。その他、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『移民・難民』(グッドブックス)、『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)、『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』(ビジネス社)がある。

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    2025年3月26日、ストックホルムでの記者会見で国防費の増額を発表したスウェーデンのウルフ・クリスターソン首相 - 写真提供=TT News Agency/共同通信イメージズ


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    この記事を通じて、モーリー氏はトランプ政権の保護主義がなぜ出現したのか、その背後にあるアメリカ社会の問題を深堀りしています。

    モーリー・ロバートソン「挑発的ニッポン革命計画」『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、米トランプ政権の掲げる過激なアメリカ・ファースト政策がなぜ支持者に受け入れられるのか、その背景を考察する。

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    関税カードの乱発に代表される米トランプ政権の保護主義的な経済政策="アメリカファースト"は、従来の共和党政権が進めてきた新自由主義やネオコン(新保守主義)とはまったく違うものです。いうなれば「アメリカが儲かるなら、世界がどうなろうと知ったことではない」。

    しかしながら、その短絡的な政策が本当にアメリカの利益になるかといえば、はなはだ疑問です。

    トランプ政権のベッセント財務長官は「経済をデトックス(解毒)する」という言い回しを使います。アメリカ経済は「毒」に侵されており、それを抜くことで健全な状態を取り戻す――と言いたいようですが、肝心の「毒」がいったい何を指すのか、いまひとつ判然としません。

    例えば連邦職員の大幅削減。これによる財政支出の削減効果は極めて限定的であり、財政赤字の削減にはほとんど寄与しません。その一方で、社会保障・医療などセーフティネットの弱体化を伴う減税計画が進んでおり、その恩恵を受けるのは富裕層や大企業で、低所得層は直接的な打撃を受けることになります。

    トランプ政権の経済ブレーンの多くはアカデミアにおいて主流派から軽視されてきた"異端者"で、従来の経済理論から乖離した政策が進められているとの指摘もあります。主流派の専門家やアナリストからは、景気悪化と物価高が同時進行するスタグフレーションのリスクを指摘する声も聞こえてきます。

    ただ、こうなってしまった原因のひとつが「アメリカ人」自身にあるという側面も否めません。

    第2次世界大戦以降のアメリカ社会には、自分たちが世界のナンバーワンであるという集団的自意識が広がり、それを前提としたナショナリズムが展開されました。そのため、日本のように敗戦を経験した国や、外交面でしばしば譲歩を余儀なくされる国が自然に持ちえている"謙虚さ"に乏しいのです。

    こうした"傲慢さ"はイノベーションのエンジンになる一方、国内問題から目をそらすことへの誘惑にもなりえます。偉大なアメリカがうまくいかないのは誰かがアメリカをおとしめているせいであり、そこを叩けばすべてが解決する――外側に"敵"を作って熱狂を演出するトランプの手法はまるで新興宗教か、あるいは北朝鮮の主体思想のようですが、その"補助剤"となっているのはまさにアメリカ人の傲慢さでしょう。

    実際のところ、トランプ政権の経済ブレーンや支持者たちは「アメリカはババを引かされている」と本気で思っているフシもあります。しかし、誰かを責め立てることで問題を解決した気になっている限り、本質的なデトックスなどできるわけがありません。その姿勢こそがアメリカの「毒」にほかならないのですから。

    日本に対しても「為替を操作している」「鉄鋼をダンピングしている」などと言いがかりをつけ、安全保障をテコに屈服させようとするトランプ政権の姿勢は、もはやヤクザの恫喝のようです。

    この経済政策が機能不全に陥るのは時間の問題であり、いずれ"魔法が解ける"ことにはなるだろうと私はみていますが、そのとき、ボロボロに傷ついたアメリカという国はどのように立ち直るのか、再び上昇できるのか。その過程に注目したいと思っています。

    週刊プレイボーイでコラム「挑発的ニッポン革命計画」を連載中のモーリー・ロバートソン氏


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    荻原博子さんが提起した懸念は、多くの人が感じていることではないでしょうか。無償化政策が実現すれば、すべての子どもたちに平等な教育の機会が与えられる可能性があります。しかし、それが政治的な争点として利用されることは避けなければなりません。教育は、未来の社会を担う子どもたちへの投資であり、感情的な議論から離れて冷静に取り組む必要があります。

    代替テキスト

    アメリカのハーバード大学は、2025年秋から、世帯年収が20万$(約3千万円)以下の学生の学費を全額免除にすると発表しました。

    現在は世帯年収8万5千$以下の学生の学費を免除していますが、その対象を大きく広げます。

    また、世帯年収10万$以下の学生には、食費や住宅費、健康保険料など授業料以外も全面的に支援するといいます。2024~2025年度の授業料や寮費などを含む年間負担は8万6千~9万1千$なので、大きな支援となるでしょう。

    ここで注意したいのは日本との給与水準の違いです。日本の平均年収は460万円(2023年分、国税庁)に対して、アメリカの平均年収は9万4千700$です(約1千320万円、2023年、Salary Explorer)。日本の約3倍と考えると、アメリカの世帯年収20万$は日本では年収約1千万円程度に当たります。学費免除の対象者はアメリカ家庭の86%というのも納得です。

    実は、同様の学費免除はすでに、マサチューセッツ工科大学やペンシルベニア大学が行っています。経済的に困難な家庭の出身者にも門戸を広げて優秀な学生をより多く集めたいと考えているのでしょう。アメリカでは優秀な学生の争奪戦が始まっているのです。

    ■経済的に困難な家庭の出身でもよりよい教育を

    いっぽう日本では「高校無償化」が論議されています。現在は年収910万円未満の世帯に、公立私立を問わず年11万8千800円が助成されていますが、2025年度からは所得制限を撤廃。2026年度からは私立高校生向けの上乗せにも所得制限が撤廃され、最大で45万7千円を助成する方針です。

    背景にあるのは、少数与党である石破政権が期限内に予算を成立させたいという思惑です。そのため日本維新の会が提唱する高校無償化を受け入れたといわれますが、教育問題を“政争の具”に使わないでいただきたいと強く思います。

    私は私立高校まで全員無償にする必要はあるのかと懐疑的です。それよりも、国立大学の学費免除を広げてほしいと思います。経済的に困難な家庭の出身でも、勉強をがんばれば国立大学へ無償で進学でき、よりよい教育を受けられる土台を作ってほしいのです。

    もちろん教育支援は勉強だけに限りません。スポーツでもゲームでも、好きで得意なことを伸ばす教育体制の構築のために、限られた国の予算をどう使えばいいのか、熟議が必要でしょう。

    日本の国立大学は小泉政権下の2004年から独立行政法化され、大学独自で“稼ぐ”ことを求められるようになりました。その結果、東京大学は2025年度から約11万円学費を値上げします。

    日本の国としての教育費支出は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国のうち、ワースト3位です(2024年)。恥ずかしいと思いませんか。

    政治家には子どもたちの教育に真摯に向き合い、抜本的な教育改革に取り組んでほしいものです。



    (出典 news.nicovideo.jp)

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    この記事は、日本の学校におけるいじめ問題の根本原因を鋭く指摘しています。人間関係の構築において、ただ「仲良くする」というアプローチが逆効果になることもあるという観点は特に共感を覚えました。いじめをなくすためには、表面的な道徳教育ではなく、個々の生徒が自分自身や他者を理解し、尊重し合うことが重要です。

    学校のいじめ問題は、なぜ無くならないのか。東京都立大学大学院法学政治学研究科の木村草太教授は「いじめ防止対策推進法が成立してから10年以上が経過した。成果も出ているが、現在の対策には2つの要素が欠けている」という――。(第1回)

    ※本稿は、木村草太『憲法の学校 親権、校則、いじめ、PTA――「子どものため」を考える』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

    ■人が集まれば、いじめは起きる

    (前略)コミュニケーション操作系のいじめ――たとえば、シカトやクスクス笑いに対しては、警察は何もできません。そこで生活空間自体を変えて、コミュニケーション操作系のいじめを無意味化することを同時に行います。学級制度を廃止し、タコ足配線的にいろんなタイプの人と自由につきあえるようにする。自分をシカトしたりクスクス笑いをする人間とは距離を置くことができ、もっと楽しい人間関係を営める友だちと距離を縮められるようにする。

    ――神保哲生(じんぼうてつお)・宮台真司(みやだいしんじ)他『教育をめぐる虚構と真実』(内藤朝雄発言)

    いじめ防止対策推進法の成立から10年以上が経過した。いじめは、多数の人が集まる空間であれば、常に生じうる問題だ。それは、古典文学を読んでいても明らかだろう。

    もっとも、日本の学校現場でいじめ問題が真剣に意識されるようになったのは、1980年代とされる。1985年には、福島県いわき市で暴力・恐喝を伴う苛烈ないじめの被害者(中学3年生)が自死した。また、1986年には、東京都中野区のいわゆる葬式ごっこ事件が起きた。学校現場でも学術研究の世界でもいじめ問題への関心は高まっているものの、苛烈ないじめは後を絶たず、2011年には、大津市での中学生の自死と学校・教育委員会の不適切な対応が重大な問題となった。

    この事件をきっかけに、2012年、野田佳彦(のだよしひこ)内閣の下、国会でもいじめ対策立法の準備が進められ、第二次安倍晋三(あべしんぞう)内閣への政権交代を挟み、2013年6月21日に「いじめ防止対策推進法」として成立した。今回は、その内容を整理し、気になる点を指摘したい。

    ■「犯罪型」と「コミュニケーション操作型」がある

    いじめ防止対策推進法の目的は、第1条に掲げられている。具体的には、「いじめを受けた児童等の教育を受ける権利」を守り、「心身の健全な成長及び人格の形成」を支え、「生命又は身体に重大な危険」が生じることを防止することで、「児童等の尊厳を保持する」ことが目的だ。

    では、この法律が防止しようとする「いじめ」は、どう定義されるのだろうか。大きく分けると、いじめには①犯罪型と②コミュニケーション操作型とがある。

    ①犯罪型のいじめとは、暴行・傷害、恐喝・強盗、脅迫、名誉棄損といった刑法犯に該当する行為だ。刑法犯である以上、重大な法益侵害であるという社会的な合意があり、その解決には、警察や司法が力を発揮しうる。

    他方、②コミュニケーション操作型とは、からかい言葉や奇妙なあだ名呼び、些細(ささい)な悪口など、被害者を傷つけるコミュニケーションを指す。こちらは、犯罪や不法行為にはならないことも多いが、殴られるより辛(つら)い経験になることもあろう。

    概念の上では①と②は切断できるが、実際のいじめの現場では両者が融合する事例も多い。また、①犯罪には明確な定義があるが、②については、被害者がどんなことに傷つくかは文脈や状況によるので、明確な類型を作るのは困難だ。例えば、同じ「呼び捨て」でも、全く問題にならない場合と加害行為になる場合とがあり、呼び捨ては一律にいじめとする/しないなどというルールは作れない。

    ■法律上のいじめの定義は「非常に広い」

    そこで、いじめ防止対策推進法は、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」(対策法2条)と非常に広い定義をした。

    同じ学校に在籍すれば「一定の人的関係」が必然的に生じ、人が何かをすれば周囲に「心理的又は物理的な影響を与える」から、同じ学校に通う児童等の行為から「心身の苦痛を感じてい」れば、それだけでいじめと認定できる。

    この定義を前提にすると、例えば、生徒Aが登校するだけで生徒Bが不愉快に感じる状況では、Aが登校するだけでBにいじめをしたことになる。また、お互い嫌いあっていれば、双方にいじめが成立する。いささか極端な感じもするが、ここまで広く定義しなければ、対処が必要ないじめを取りこぼしてしまうという深慮に基づく。

    いじめの定義が非常に広いため、当然のことながら、第2条の「いじめ」に該当するというだけでは、損害賠償や差止の対象にはならない。第4条が「児童等は、いじめを行ってはならない」と規定するのは、あくまで罰則のない訓示規定だ。

    ■「警察に通報か」「学校で対処か」という根拠

    この法律の主な関心は、文部科学大臣・自治体・学校らに「いじめ防止基本方針」の策定を義務付け(対策法11、12、13条)、学校におけるいじめの防止・早期発見のための対策を行うよう求めるところにある(対策法15、16条)。学校は、いじめが起きてしまった段階では、次のような措置をとる。

    第一に、①犯罪型のいじめについては、学校だけで対処せずに、適切に警察と連携すべきことが指摘されてきた。第23条6項は、犯罪行為に対しては所轄警察署に適切に通報し、連携して対応すべきことを定めている。

    第二に、犯罪に至らない②コミュニケーション操作型のいじめの場合も、いじめの相談や通報を受けた場合には、学校は「速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置」をとることを求められる(対策法23条2項)。

    いじめの事実が認定された場合は「いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行う」とされる(対策法23条3項)。

    ここで重要なのは、担任だけに抱え込ませず、「複数の」教職員が関与すること、専門家の協力を得ること、指導は「継続的」に行うことだ。特にコミュニケーション操作型のいじめは、長期にわたる人間関係の調整が必要なため、対応の「継続」性は極めて重要だろう。

    ■いじめアンケートは“対策法”の成果

    いじめが生じた場合には、学校には必要な支援や措置をとることが求められ(対策法24条)、懲戒(学校教育法11条)や出席停止(学校教育法35条)の制度を適切に運用すべきとされる(対策法25、26条)。

    さらに、いじめが自死など極めて深刻な結果をもたらすことから、「児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑い」または「児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑い」がある場合には、いじめの「重大事態」と認定し、調査委員会を設置し、詳しい調査を行うことが求められる(対策法28条)。

    近年、いじめ事件をめぐる報道で「調査委員会」の報告書や定期的に行われるいじめアンケートが紹介されたりしているが、これらはいずれも対策法の成果だ。

    関連して、統計を見てみよう。対策法制定後、文部科学省は毎年、いじめの状況の統計を出している。それによれば、いじめの認知件数は2013年度の合計約20万件から右肩上がりに増え続け、2020年度に減少に転じるも、2021年度は再び増え、年間約61万件となっている。認知件数の増加は、必ずしもいじめの増加ではなく、学校がいじめの認知に努力した結果の可能性もある。また、2021年度に認知された約61万件のいじめのうち約49万件(80.1%)は、対策などにより解消している。

    ■現在の対策には“2つの要素”が欠けている

    以上を踏まえて、いくつか指摘しておきたい。

    第一に、対策法第15条が、いじめ防止対策の中心を「道徳教育」・「体験活動」としている点には疑問がある。そこには、「相手が嫌がっているからこそ、いじめをする」「相手をいかようにでも扱えるという支配関係こそが本質だ」という視点が欠けている。

    まず、①犯罪型のいじめ対策に重要なのは、何が犯罪なのかという刑事法に関する知識、刑事法がどのような法益を守ろうとしているのかという法の理念の教育、犯罪から身を守る技術や、犯罪を告発する場合に必要な方法――警察への相談の仕方、金銭被害の記録、傷害時の診断書の確保法――だろう。これらの教育は、「道徳教育」ではなく、「法教育」だ。

    次に、②コミュニケーション操作型のいじめは、本来は、人間関係の構築の自由によって解消すべきだ。一般に、自分の意思で離れられる相手であれば、クスクス笑いや悪口を言われても、深刻な事態にはならない。単に相手にしなければいいからだ。学校でコミュニケーション操作によるいじめが成立するのは、児童等がそこでの人間関係から逃れられず、支配が続くことによる。支配関係を終わらせるには、離脱の自由を確保することが不可欠だ。

    ■「道徳」ではなく「法的権利」の教育を

    学校現場では、しばしば「クラスみんなで仲良くすること」を善とする価値観が提示され、「道徳教育」でも重視される。しかし、「クラスメイトを無視したり、関係を断ったりすることは良くないこと」と教えれば、クラスメイトから逃れたいと思う児童等を追い詰めることになる。

    私たち一人ひとり、気の合わない人、話したくない人とは無理に関係を続けなくてよく、そのような人間関係構築の自由がある、ということをいじめ対策の中心に置くべきだろう。これも「道徳教育」ではなく、法的権利の教育だ。

    また、人間関係構築の自由を中心に据えるなら、被害者が加害者から離れたいと申し出た場合、それを支援するメニューを強力にすべきだ。加害者との別室授業の措置(対策法23条4項)だけでなく、加害者の被害者への接近禁止命令のような措置を設けることも考えられる。

    いじめをしてはいけない理由は、内容の曖昧(あいまい)な道徳ではなく、法的権利に根拠づけられるべきだ。その上で、仲良くしたい相手と仲良くするには、相手の尊厳や気持ちに配慮することが大切だと道徳を説けばよい。

    ■閉鎖空間でいじめを減らすには限界がある

    第二に、いじめの定義が広いといっても、対策法の定義は「児童等」が行う行為に限定されている。苛烈ないじめでは、教員や保護者が加害者に加担することがある。例えば、保護者が自分の子を守るために、被害者について悪い評判を流したりする事例もある。

    さらに、保護者の有志組織たるPTAも、非会員・未加入者の子どもをPTAが主催する学校施設を利用したイベントから排除したり、プレゼントの対象から外して、子どもを傷つけたりすることがある。

    もちろん、対策法は、教員や保護者が児童等にいじめをさせない責務を負うと規定しているが、自らいじめに加担したり、PTAがいじめを行ったりする事例は強く意識されていない。学校内で活動する大人が、児童等に加害をした場合に対処する枠組みも作るべきだろう。

    いじめ防止対策推進法は、10年の運用の中で、着実に成果を上げたといってよい。しかし、いじめの認知件数はいまだ膨大な数に上り、年間700件以上の重大事態も発生している。(編集部注:文部科学省の最新のまとめでは、2023年度は「重大事態」が1306件と過去最多となった。)

    いじめ研究者として名高い内藤朝雄は、離脱が難しい閉鎖空間の設定は、苛烈ないじめを生じる危険を内包するという。閉鎖空間を維持したままでいじめを減らすには限界がある。だとすれば、いじめ対策は、「人間関係構築の自由をどうやって実現すべきか」という観点から考えていくべきだ。本書で指摘した問題以外にも、専門家は様々な課題を指摘している。まだまだやるべきことは多い。

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    木村 草太(きむら・そうた)
    東京都立大学大学院法学政治学研究科教授
    1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業、同大学法学政治学研究科助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科教授。将棋ファンとしても知られ、2014年から東京都立大(当時は首都大学東京)にて法学系(法学部)特別講義「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」を開講。将棋初心者の学生にも好評を博している。日本将棋連盟より三段免状を取得。著書に、『憲法』(東京大学出版会、2024年)、『憲法という希望』(講談社現代新書、2016年)、『自衛隊と憲法』(晶文社、2018年、増補版2022年)、『木村草太の憲法の新手4』(沖縄タイムス社、2023年)、『「差別」のしくみ』(朝日出版社、2023年)ほか多数。

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    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/paylessimages


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    [深層NEWS]トランプ氏は「停戦でどちらが得しようが二の次」…中林美恵子教授が指摘
     倉井高志・元ウクライナ大使と早稲田大の中林美恵子教授が17日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ロシアによるウクライナ侵略の停戦交渉に向けた米…
    (出典:)


    停戦の意味とその影響に関する重要な議論が展開されました。中林美恵子教授のコメントからは、真の和平とは何か、そしてそれを達成するためにはどのようなアプローチが必要かを深く考えさせられました。今後の行動が求められます。

    1 蚤の市 ★ :2025/02/17(月) 22:48:03.49 ID:OXDUgfhu9
     倉井高志・元ウクライナ大使と早稲田大の中林美恵子教授が17日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ロシアによるウクライナ侵略の停戦交渉に向けた米国の動きについて議論した。

     米国防長官が米軍の派兵を否定したことについて、倉井氏は「米軍が衛星の情報や戦闘機を提供するということがないと、持続性のある合意は期待しがたい」との見方を示した。中林氏は「トランプ大統領は、プロセスや大義以上に『とにかく停戦ができればいい、どちらが得をしようが損をしようが二の次』という立場が強い」と指摘した。

    読売新聞2025/02/17 20:08
    https://www.yomiuri.co.jp/world/20250217-OYT1T50136/

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