令和の社会・ニュース通信所

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    カテゴリ:国内 > 評論家



    モスクワから見たウクライナ軍の動きって、どういう視点で解説されているんでしょうか?興味が湧きますね。

    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)
    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)

    ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

    *  *  *

    ――先日、佐藤さんはモスクワを訪れていたそうですが、あのレーニンが住んでいた「ナショナルホテル」に滞在していたのですか?

    佐藤 はい。8月13日に羽田発、北京経由でモスクワに行きました。

    ――お聞きしたいのは、ロシアの首都・モスクワから見たシン世界地図であります。

    佐藤 ではまず、クルスク州の州都・クルスクの現状についてどう思いますか?

    ――ウクライナ軍(以下、ウ軍)が西側から武器供与を受け、最強のウクライナ兵による六個旅団で奇襲して、東京都を越える面積を占領しました。

    佐藤 西側からは装備だけでなく、傭兵集団も提供されています。

    ――傭兵集団?!

    佐藤 はい。クルスクに進軍したウ軍にウクライナ兵は従属的機能しか果たしていません。主体はポーランド、ジョージア、イギリスからの傭兵集団です。

    ――だからこんなに強いのですか?

    佐藤 そうです。ウクライナは現在の戦いを「戦争」としていますが、ロシアは「テロ」として位置付けています。それは交戦時の傭兵に対する対応でも明らかです。

    2022年、イギリス人傭兵2名とモロッコ人傭兵1名が、 ロシアが実効支配するドネツク人民共和国で捕虜になり、裁判で死刑判決が言い渡されました。その後、捕虜交換でイギリス人傭兵は、ウクライナ側に引き渡されました。本来、正規の戦闘員を捕虜にした場合、人道的な待遇を与えなければなりません。

    しかし、傭兵は捕虜の地位を得ることはできません。殺人、傷害などの実行犯として刑事責任を追及することが可能です。要するに傭兵は、国際法上、保護の必要はないということです。だから、ロシア側は現場で全部、適切に処理をしているというわけです。

    ――それって、捕虜にせず、見つけ次第射殺ですか?

    佐藤 そういうことです。

    ――さ、さすが対テロ作戦。

    佐藤 そして、主導するのは軍ではなく、デュミン大統領補佐官です。国家反テロ委員会が前面に出ています。その指揮下に軍、内務省、連邦保安庁が入っています。

    ――それは一番怖い対テロ部隊の布陣であります。

    佐藤 要するに、皆殺しにするつもりです。本件に関してモスクワは全く動揺していません。

    占領された地域についての状況は、ロシアにとって不利な情報を含め、正確に政府系テレビが報道しています。モスクワ市民たちは「なるほど。防衛というのは大嘘で、ウクライナの侵略的本質がよく分かった」と言っています。

    さらに、「これはウクライナとの戦争ではなく、西側連合との戦争だ」「外国勢力と結託した白軍と同じだ。西側と結託したロシア人がウクライナ軍を自称しているにすぎない。それに対して、我々はロシア人を主体として、国家の独立を守る赤軍だ」と理解しています。

    ――これはロシア革命の真っ只中で燃え盛っている時のロシアではないですか。

    佐藤 そういう状況になっています。いまはウクライナとの戦いという意識ではなく、西側干渉軍との戦争であるという事柄の本質が分かったというわけです。

    ――それはなぜですか?

    佐藤 今回の件に関しては、追加的に供給した米国の兵器を使って、米国の了承を得た下で行われているというのがロシアの認識だからです。また米国大統領選と絡んで、ウクライナに成果を出させたいというバイデン大統領の意向も働いているというのがロシアの受け止め方です。

    このクルスク侵攻が始まったタイミングで、ドイツはウクライナ人ダイバーに逮捕状を請求しました。22年に、ロシアとドイツをつなぐ海底天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム」が破壊された事件に関してです。そして、それをウォールストリートジャーナルも報道しています。

    つまり、ヨーロッパがウクライナ戦争から逃げ出し始めているわけです。

    ――ドイツは保険をかけるために、ウクライナ人を指名手配したと?

    佐藤 そうです。我々はこの連中と一緒ではない、というアピールですね。

    ――傭兵を出しているポーランドは、どうやって逃げるつもりなんですか?

    佐藤 逃げられないでしょう。最も多くの傭兵を出していますからね。

    ――逃げられないポーランド。逃げ始めたドイツ。

    佐藤 そして、ウクライナはクルスク攻勢によって、ウクライナにとって有利な条件で講和できるのではないかという夢を見ていますが、それは難しいでしょう。ウクライナがロシアよりも予備兵力が少ないことも考慮する必要があります。

    一方のロシアは、徹底した形で反テロ作戦を実行すると宣言しています。そういうことなので、ある程度、おそらく3ヵ月ぐらいの時間はかかると思います。

    ロシアは「ウクライナから侵入してきたテロリストを完全に中立化(≒皆殺し)にする」と言っていました。その代わり、ロシアの国民に対しては「こちらが皆殺しにすることをウクライナの傭兵部隊も分かっているから本気で抵抗する。だから、かつてない凄惨な戦場になる」と伝えています。

    ――先にひと言、断りを入れているわけですね。

    佐藤 そうです。なので、ロシア兵たちには「傭兵やテロリストの捕虜は獲らない。連中とは生きるか死ぬかの戦いだ。一歩も下がるな、死ぬまで戦え」という話になると思います。

    ――ウクライナの傭兵に対して「ノープリズナー・ノーマーシー(無捕虜・無慈悲)で行け」と。そして、自軍兵士には大日本帝国陸軍の戦陣訓。「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪渦の汚名を残すことなかれ」と!

    佐藤 だから、硫黄島みたいな感じになってきたということです。いずれにせよ重要なのは、ロシア国内にまったく動揺がないことです。

    ――これは、ウクライナは困りましたね。

    佐藤 ゼレンスキーは情勢を深く分析せず、希望的観測に基づいて、一定の領域を取っておけば和平交渉になり、土地の相殺でもできると思っているのではないでしょうか。

    ――そう思っていると思いますよ。

    佐藤 成立しないシナリオです。

    ――しかし、すでに奇襲は始まっちゃいましたし、ロシアの対テロ作戦も開始であります。

    佐藤 結局は総力戦です。なのでそう考えた場合、一喜一憂する必要はありません。重要なのは、ロシア国民が事態を理解し、プーチン政権を心の底から支持しているという現実です。

    ――ロシアは、現状をウクライナとの戦争ではなく西側連合との戦いだと理解し、一切の動揺がない。

    佐藤 その通りです。そして、とにかくテロリストを皆殺しにしろ、外国勢力と繋がった干渉軍を打倒せよ、ということです。どんな政治意図があるか不明だが、外国勢力と繋がりのある組織は論外だ、という感じになっています。

    だから、ウクライナはクルスクの局地戦では、一時的に優勢になる可能性があります。しかし、この戦争でウクライナが勝利することはありません。

    ウクライナも西側連合も、これまではあくまでも防衛戦争だから、国境を越えることはないという前提でした。にもかかわらず、ゼレンスキーは今回、レッドラインを越えたことで「レッドラインとなるモノが存在しないとわかった」と公言しています。要するに「何でもあり」ということです。

    それは全面戦争を望んでいるというシグナルです。つまり、核戦争を含め第三次世界大戦が起きても構わないということです。

    ――そこにはNATOももう、付き合う気はない。

    佐藤 付き合いきれません。米国も及び腰です。

    ――これから、どうなりますか?

    佐藤 クルスクにいる傭兵部隊は皆殺しになるので、殺された傭兵と同数の予備兵力を持って来ないとなりません。クルスク州一部地域の占領にウクライナが固執すると、ウクライナ国内で「人間狩り」と形容できるような徴兵が始まります。

    ――そしてクルスク戦域に投入されれば、ウクライナ兵ではなくテロリストである傭兵と認定されているから、捕虜にならず皆殺しにされてしまう。

    佐藤 さらに、ドネツクが獲られる可能性も出て来ました。

    ――ウクライナの思うようにはいかないと。

    佐藤 いきません。

    次回へ続く。次回の配信は2024年9月6日(金)予定です。

    取材・文/小峯隆生

    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    トランプ氏の外交政策は常に予測不可能であり、台湾有事が起きた場合、果たしてどのような判断を下すのか心配ですね。

    もしドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選したら、台湾への戦略は変わるのか。元外交官の宮家邦彦さんは「米国政府はこれまで、中国が台湾に侵攻した場合、米国がいかに対応するかを明確にしない「曖昧戦略」を採ってきた。トランプ氏がこの戦略をどの程度理解しているかに懸念がある」という――。

    ※本稿は、宮家邦彦『気をつけろ、トランプの復讐が始まる』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

    ■中国の台湾政策は強硬化している

    気になるのが、第二期トランプ政権の台湾有事に関する対応だ。2024年3月の中国全国人民代表大会で中国は台湾に関する「文言を強化」した。国務院総理の政府活動報告では「統一の理念を断固として推し進める」とされ、「平和的統一」としていた従来の表現を修正したとも報じられた。

    「平和的」という表現を削除するのは昔もあったことで過大評価すべきではないかもしれない。他方、別の報告では「『台湾独立』を目指す分離主義的な活動や外部からの干渉に断固として反対する」との表現も使われたとも報じられた。総じて、中国の台湾政策は、8年前と比べ、より強硬なものになりつつあると見てよいだろう。

    中国の言う「平和的統一」とは台湾が中国のシステムを受け入れる、ということ。だが、いまや台湾は人びとが自由を謳歌し、日本よりも政権交代の多い民主主義システムだ。民主主義を具現する人たちが中国大陸のやり方を受け入れるとは思えない。しかも、彼らは香港やウイグル、チベットで起きていることを知っている。

    ■米国のいわゆる「曖昧戦略」の有効性

    されば、中国の言う「統一」はどうしても武力に頼らざるをえない。だが、そんなことをすれば、中国経済は終わる。経済制裁が発動され、石油も止められるだろう。苦しい中国経済の立て直しに注力すべきときに、台湾に侵攻する余裕などあるのか。しかも、軍内部では不正汚職の噂が絶えないという。合理的判断を優先すれば、台湾侵攻の抑止は可能だ。

    それよりも筆者が懸念するのは、台湾に対する米国のいわゆる「曖昧戦略」の有効性であり、とくに気になるのは、東アジアではなく、ワシントンでの議論だ。日本ではあまり注目されていないが、過去数年間、地域の安全保障を左右しかねない超党派の議論が米国の首都で起きている。論点はズバリ、対台湾「曖昧戦略」を「見直すべし」という議論だ。

    議論の口火を切ったのは、2020年9月2日に『フォーリン・アフェアーズ』誌で「米国は台湾を防衛する意図を明確にせよ」と題する小論を書いたリチャード・ハース米外交問題評議会名誉会長だ。かつて国務省政策企画局長を務めた政策のプロでもある。このハース論文が現行の「曖昧戦略」を180度転換するよう求めている。同論文の要旨は次のとおりだ。

    ■曖昧戦略では中国を抑止できないのか

    ・曖昧戦略では、軍事的に強大化した中国を抑止できない。
    ・台湾を防衛する「意図を明確にする」方針変更は「一つの中国」政策の枠内で可能であり、むしろ米中関係を強化する。
    ・中国の軍事的優位は明らかで、中国の行動を待って米国が態度を決めるのでは遅すぎる。
    ・中国が台湾統一に動いた場合、万一、米国が台湾を守らなければ、日韓は「米国に頼れない」と判断する。そうなれば、両国は対中接近か核武装を選択しかねず、いずれも次の戦争の原因になる。よって、曖昧戦略は地域の現状維持に資さない。

    同論文発表から1年後の2021年10月11日、今度はバージニア州選出のエレイン・ルーリア民主党下院議員が米『ワシントン・ポスト』紙に「米議会は台湾に関しバイデンの制約を解くべし」と題する小論を掲載した。元米海軍中佐でもある同議員の台湾防衛に関する主張は次のとおり、じつに率直、大胆かつ明解である。

    ・米国には現在、中国を抑止する戦力も、それを使用する大統領の法的権限も存在しない。
    ・現行の戦争権限法と台湾関係法は大統領に台湾を防衛する権限を与えていない。
    ・大統領は中国の台湾侵攻を撃退し、全面戦争を抑止すべく迅速に対応する権限を持たない。
    ・「台湾侵攻回避法案」により、大統領に台湾を防衛する権限を与えるべきである。
    ・同法案は、大統領に台湾介入を義務付けず、「一つの中国」政策を変えるものでもない。

    ■見直しを求める声は続いている

    米大統領は現行法上、中国のグレーゾーン戦術、ハイブリッド戦などによる台湾侵攻戦略に適切に対応する権限がない。ルーリア議員は「曖昧戦略を変更せよ」とまでは言っていないが、少なくとも「台湾を防衛する」意図を米国政府がこれまで以上に「明確」にすることは求めているのだ。

    米海軍の元軍人で下院軍事委員会の副委員長であったルーリア議員が寄稿した意味は決して小さくない。その後もこの種の「曖昧戦略」見直しを求める声は続いており、同様の主張はいま米議会内でも静かに、かつ超党派で増殖しつつあるように思える。しかし、だからといって、近い将来こうした主張が米国の台湾政策の主流になるとは思わない。

    ■トランプは「曖昧戦略」を理解しているか

    米国政府はこれまで、中国が台湾に侵攻した場合、米国がいかに対応するかを明確にしない「曖昧戦略」を採ってきた。1972年のニクソン訪中以来、歴代米国政権がこの「曖昧戦略」によって、①中国の台湾侵攻、②台湾の独立宣言、を同時に抑止し、東アジアの現状を維持してきたことも否定できない。トランプ氏はこのことをどの程度理解しているだろうか。

    米国のアジア専門家、とくに中国専門家の主流はこれまで台湾に関する「曖昧戦略」を強く支持してきたが、彼らの議論には一理も二理もある。1972年にヘンリー・キッシンジャー氏が考案して以来、米国政府が採ってきたこの伝統的政策はそれなりに機能してきたからだ。続いて、「曖昧戦略」のどこが悪いのかと反論する彼らの議論を紹介しよう。

    ■「曖昧戦略」と「明確戦略」の最大の違い

    ・(台湾に関し)中国にはさまざまな地政学的制約がある。よって、米国と台湾が大騒ぎせず賢い選択を続ける限り、中国は台湾侵攻を選択できない。
    ・「曖昧戦略」が中台双方に対する米国の影響力を最大化する。このことは、ブッシュ政権時代の陳水扁政権との関係から明らかである。陳水扁政権は台湾独立を志向したが、米国はこれを抑えた。
    ・「明確戦略」を採用し、米国の支持を得た台湾の民進党が「台湾独立」を決断すれば、いったいどうするのか。
    ・米国が「明確戦略」を採れば、中国は台湾に対する非軍事的圧力を強める。
    ・そうなれば、中国は米軍が介入する前に、台湾を屈服させようとするだけである。

    以上の主張には一貫性がある。しかし、中国の軍事能力の大幅な向上という新たな状況に対応できるのか、対中抑止にはいまやあまり効果がないのではないか、という問いには答えられない。「曖昧戦略」と「明確戦略」の最大の違いは、前者が「中国の目的は台湾独立阻止」だと考えるのに対し、後者は「中国は本気で台湾を併合する」という前提に立つことだ。

    ■「曖昧戦略」を簡単に転換してはいけない

    筆者の知る限り、トランプ氏が過去に「米国による台湾防衛」の可能性について言及したことは一度もない。あれだけ饒舌なトランプ氏が一言も喋らないのに対し、現職のバイデン大統領が、失言か、意図的か、認知症によるものかは別として、何度も「台湾を防衛する」と公言していることとはあまりに対照的である。

    筆者がこの点にこだわるのは、台湾有事の際の米国の行動の有無およびその態様は、日本の国家安全保障を左右する重要な要素だからだ。その意味でも、トランプ氏が、少なくともこの問題の微妙かつ流動的な本質を正確に理解するか否かは、将来のインド太平洋地域の同盟ネットワークの将来を左右しかねない大問題だと考える。

    最後に、筆者の見立てを書いておく。巷には「有事となれば、トランプ氏は台湾を見捨てる」といった悲観論もあるが、こればかりは起きてみないとわからない。いまはトランプ氏に以下の論点を正しく理解してもらい、台湾有事の際に間違った判断を下さないよう祈るしかない。それにしても、こんなややこしい説明をトランプ氏は理解できるだろうか。

    ■曖昧さによる抑止はこれまでそれなりに機能してきた

    ・米国が曖昧戦略を一方的に放棄すれば、1972年の米中国交正常化および日中国交正常化の前提、すなわち日米中は「台湾問題」の最終的解決を急がないという暗黙の了解そのものを否定する。これに対し中国は、台湾問題を平和的に解決するとの約束を公然と反故にする口実を得るため、台湾の安全はむしろ害されることになる。

    ・逆に、米国が台湾を防衛しなければ、東アジアの同盟国からの信頼は失われる。他方、同盟国側は米国に代わって台湾を防衛する義務まで負う気はない。米国の戦略的曖昧さが続く限り、同盟国が台湾問題に巻き込まれる可能性は低いので、米国の曖昧戦略は同盟国にとっても利益となっている。

    ・曖昧さによる抑止はこれまでそれなりに機能してきた。仮にこの戦略を転換するなら、曖昧戦略に代わる新たな台湾「抑止」メカニズムを、中国側の了解を得たうえで構築しなければならない。新たな抑止メカニズムを欠くいかなる政策変更も成功せず、逆に米国は台湾防衛という実行困難な「レッドライン」の罠にはまることになる。

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    宮家 邦彦(みやけ・くにひこ)
    キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
    1953年神奈川県生まれ。78年東京大学法学部卒業後、外務省に入省。外務大臣秘書官、在米国大使館一等書記官、中近東第一課長、日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、在イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任。2006年10月~07年9月、総理公邸連絡調整官。09年4月より現職。立命館大学客員教授、中東調査会顧問、外交政策研究所代表、内閣官房参与(外交)。

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    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Aoraee


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    本当に国民のことを考えているのでしょうか。

    2014年4月には8%に、2019年10月には10%に引き上げられた消費税率。社会保障制度を拡大するための税収確保が目的といいますが、経済アナリストの森永卓郎氏によると、どうもその限りではないようです……。森永氏がどのメディアでも話せなかった“日本経済のタブー”について、著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より詳しくみていきましょう。

    増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼ぶ財務省

    「税収弾性値」という言葉をご存じだろうか。

    名目GDPが1%増えたときに税収が何%増えるかという数字だ。税収弾性値は一般的に1を超える。たとえば、給料が増えたとき、給与の増加率を上回って所得税が増える。累進課税の下で、より高い税率が適用されるようになるからだ。

    財務省は、中長期の財政計画を立てるときに、この税収弾性値を1.1と設定してきた。しかし、最近この税収弾性値に異変が起きている。たとえば、2022年度は3.0、2021年度は4.1となっているのだ。

    つまり、名目GDPを1%伸ばすと、その3倍から4倍のペースで税収が増えていることになる。もちろん税収弾性値は、単年度で見ると不安定だ。たとえば、2020年度の弾性値は▲1.2とマイナスになっている。

    そこで、過去5年間平均の弾性値を計算すると、22年度は15.5という恐ろしい数字になっている。そして、2000年以降の数字を眺めていくと、1という数字はなくて、3前後の数字が並んでいる。

    このことは、増税ではなく、GDPを増やすことを考えていけば、高齢化に伴う社会保障負担増などの財源を確保できることを意味している。

    ところが、財務省は、消費税の引き上げなどの増税策ばかりを示して、経済規模拡大による税収増というビジョンはほとんど出てこない。いったいなぜなのか。

    財務省内では、増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼んで、増税を実現した官僚は栄転したり、よりよい天下り先をあてがわれる。

    さらに消費税率の引き上げに成功した官僚は「レジェンド」として崇め奉られる。一方、経済規模を拡大して税収を増やしても、財務官僚にとってはなんのポイントにもならない。

    財務省“改心”のヒントは「阪神タイガース」にあった!?

    18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースは、攻撃面で見ると、チーム打率が突出して高いわけではない。しかし、出塁率はダントツの1位だ。

    その理由は、選んだ四球の数が圧倒的に多いからだ。ヒットだろうが四球だろうが、塁に出るのは同じだ。そこで岡田監督は、フロントに掛け合って、選手の成績評価で、四球獲得に与えるポイントを高めてもらったという。これにより四球を選ぶ選手が劇的に増えた。

    そのことを考えると、財務省の増税路線を改める方法は簡単だ。

    増税を主導した官僚にマイナスポイントを与え、経済拡大に伴う税収増を実現した官僚にプラスポイントを与えるのだ。そのために官邸が財務省から人事権を取り上げ、個別に官僚の人事評価をすればよいのではないだろうか。

    自民若手議員や野党の提案に“見向きもしない”岸田政権

    2014年の消費税増税のような非科学的経済政策は、今もなお繰り返されている。その典型が2023年11月2日に政府が閣議決定した経済対策だ。

    経済対策の目玉は、所得税・住民税減税だ。物価高で苦しむ国民生活を救うため、岸田総理は「税収増を国民に還元する」と、住民税非課税世帯への7万円の定額給付に加えて、1人あたり住民税1万円、所得税3万円の定額減税を1年に限って実施することにした。

    立憲民主党を除く野党からは消費税減税を求める声が出ていたし、自民党の若手国会議員102人で構成する「責任ある積極財政を推進する議員連盟」からも、消費税率を5%に引き下げたうえで、食料品については消費税率を0%とする政策提言がなされていた。

    だが、そうした案は見向きもされなかった。

    岸田総理の打ち出した所得税減税は、消費税減税とくらべると、かなりの問題がある。

    第一の問題は、物価高対策にならないことだ。消費税減税であれば、税率引き下げと同時に物価が下がるから、完全な物価抑制効果がある。とくに食料品は物価が9%も上がっているから、軽減税率である8%の消費税をなくせば、物価高の大部分を相殺できる。

    国民が経済対策の効果を毎日の買い物のたびに感じることができるのだ。一方、所得税減税は、所得を増やすので、理論上は、需給がひっ迫して物価をむしろ押し上げる。

    第二の問題は、実施まで時間がかかることだ。来年度の税制改正を行なった後、給料の源泉徴収額が変わるのは翌年6月になってしまう。

    第三の問題は、一時的な減税は、貯蓄に回ることが多く、消費を拡大しないことだ。これまで行なわれた一時金給付の効果試算では、給付金のおよそ8割が貯蓄に回ってしまうことが明らかになっている。

    今回の対策では、減税の後に増税が待ち構えていることを誰もが知っているので、おそらくほとんどが貯蓄に回るだろう。つまり、景気対策の効果はほとんどない。

    いったいなぜ…?減税に“懐疑的”な日本経済新聞と朝日新聞

    そして第四の問題は、減税にエアポケットが発生することだ。年間の所得税が3万円を超えるのは、専業主婦の妻がいる世帯で年収320万円、独身者の場合で240万円だ。それ以下の年収の世帯は3万円の定額減税をフルには受けられないことになる。

    こうしたことを考えると物価高対策としては、所得税減税よりも消費税減税のほうがはるかに効果が高いのだが、消費税減税の話は、与党幹部から一切出てこない。消費税減税を嫌がる財務省への忖度だろう。

    そして、その態度は大手メディアも同じだ。それどころか、大手新聞は、減税そのものにも疑問を投げかける。

    2023年10月21日の日本経済新聞は一面トップで「所得減税遠のく財政再建」と掲げ、「ガソリンや電気への補助金などに加えてバラマキ政策が続けば財政再建は遠のく」と減税自体に反対する態度を鮮明にした。

    朝日新聞も同じだ。10月20日朝刊の社説は「過去3年、国の税収が物価上昇などの影響で過去最高を更新してきたのは事実だが、収支を見ると赤字がコロナ前より大幅に拡大し、借金頼みに拍車がかかっている。巨額の財政出動を繰り返した結果、歳入増を上回る規模で歳出が膨らんだためだ」と書いている。

    朝日新聞は統計を見ているのだろうか。

    コロナ前の2019年度の基礎的財政収支の赤字は13.9兆円だった。2023年度予算の基礎的財政収支の赤字は、予算ベースで10.8兆円だ。コロナ前より大幅に赤字は減っている。赤字がコロナ前より大幅に拡大したというのは完全な事実誤認だ。

    しかも2023年度は予算ベースなので、税収が見積もりより増えたり、予算に不用額(歳出予算のうち、実際に使用しなかった額)が出ると、財政収支はさらに改善する。さらに、政府の抱える借金は、資産をカウントしたネットベースで、前述したとおり通貨発行益を考慮すると、ほぼゼロになっている。

    借金もなくて、財政赤字もないのに、新聞はいつまで財政破綻を煽るのか。  

    森永 卓郎

    経済アナリスト

    獨協大学経済学部 教授

    (※写真はイメージです/PIXTA)


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【社会】消費税率を引き上げた官僚は“レジェンド”扱い…増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼ぶ財務省【森永卓郎が解説】】の続きを読む


    日経平均が1万円を割る可能性があるというのは、ちょっと驚きです。でも、株価も経済も常に変動するものなので、注意が必要ですね。

    1 お断り ★ :2024/08/15(木) 00:06:10.46 ID:r4cTRjrn9
    森永卓郎氏 年末株価の最新予測が衝撃過ぎた!「いまは人類史上最大のバブル」人工知能?「あんなのインチキ」
    経済アナリストで独協大教授の森永卓郎氏が13日配信のNewsPicks「TheUPDATE」に出演。今後の株価について大胆予測した。
    この日は経済の専門家が集結し、今後を予測。ほとんどの人が4万円台を回復するとした中で、森永氏だけは敢然と「12月に1万円を割る」と予言した。
    森永氏は「いま起きている現象は、人類史上最大のバブル。必ずコケます。過剰な期待にもとづく株価というのは、必ずコケるんです。ずーっとインチキを言い続けていた。ドットコムバブルから始まって、人工知能だとか半導体とか。ありもしない期待をずっと作り上げてきたんです。金融業界の人がバックアップしてきたんですけど
    詳細はソース 2024/8/14 20:46
    https://news.yahoo.co.jp/articles/a6714d9ea103f50cca78881a9a0c92a5b4066df4

    【【社会】森永卓郎氏 「12月に日経平均は1万円を割る」「いまは人類史上最大のバブル、人工知能はありもしない過剰な期待」】の続きを読む



    歴史上のイベントでも腐敗がついてまわるんですね。やはり人間の本質は変わらないものなのかもしれません。

    古代オリンピックと近代オリンピックの共通点はなにか。元時事通信記者の村上直久さんは「神に捧げる競技会として紀元前776年に第1回大会が開かれた。ローマ時代になっても大会は続いたが、次第に現在の近代オリンピックと似たような問題を抱えていった」という――。(第1回)

    ※本稿は、村上直久『国際情勢でたどるオリンピック史』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

    ■古代オリンピックと近代オリンピックの違い

    古代オリンピックは4年に一度、ペロポネソス半島北西部エリス地方のオリンピアで開かれた。当時では世界最大規模の競技会であり、祭典であり、途切れることなく約1200年間続いた。

    競技とそれに先立つオリンピアへの選手らの移動の間、最大3カ月間はギリシャ全土で休戦となった。100年余りの近代オリンピックで、両次の大戦中、中止されたこととは好対照である。

    古代オリンピックはオリンピア大祭とも呼ばれ、全能の神、ゼウスに捧げられていた。その起源には諸説あり、ギリシャ神話によると、約束を破ったアウゲイアース王を攻めたヘラクレスが勝利後、ゼウスに捧げる神殿を建て、競技会を開いたという説や、ホメロスによれば、トロイア戦争で亡くなったパトロクロスの死を悼むためアキレウスが競技会を行ったという説などがある。

    オリンピア大祭のほかに古代ギリシャでは3つほど同様の競技会があった。その中で最もよく知られているのが3年ごとに隣保同盟がデルファイで開催したピュティア祭で、これはアポロンに捧げられた。残る2つのイストミア祭とネメア祭はオリンピックとピュティア祭と重ならないように開かれた。

    古代ギリシャは日本の神道と同様に多神教であり、神に捧げる競技会は、日本で言えば神社での奉納相撲と似た類のものだと考えられよう。

    ■「運動競技」以外の競技

    古代オリンピックは近代オリンピックとは異なり女人禁制であった。これはゼウスが男神であったことや、奉納競技において競技者が裸体であったことなどが関係しているとみられる。さらに、古代オリンピックは運動競技だけでなく、詩の朗読や弁論など文芸的な側面もあったことが知られている。

    古代オリンピックが約12世紀も続いた後、その歴史を閉じたのは、あとで詳述するが宗教が関係している。オリンピックの開催地であるオリンピアという地名の語源はこの聖地の主祭神ゼウス・オリュンポスに由来する。

    祭典の中心は当初、ゼウス神に捧げる宗教儀礼で運動競技は付随的なものだったが、時がたつにつれて運動競技が祭典の実質的な目玉となった。

    オリンピックは紀元前776年の第1回大会から紀元後393年の第293回大会まで連綿と続いた。

    4大競技祭の中でオリンピックが最も栄え、世界的な競技祭に成長していったのはなぜだろうか。

    ■なぜ世界的な祭りになったのか

    オリンピアのあるエリスは小国でギリシャに1000以上あったとされる都市国家(ポリス)のなかでは、アテネやスパルタに比べると弱小国家であることは否めなかった。しかし、大国に領有されない共有・中立の神域であり、しかも対等の立場で肉体の美や能力を競い合い、勝つことは参加者が属する国における地位を確保することにつながった。

    こうした事情から全ギリシャ世界の政治エリートたる貴族がこぞってオリンピックに参加するようになり、オリンピックのギリシャ世界における地位、ひいては近隣諸国をも含む形で国際的な地位が確立されるようになった。

    しかし、ペルシャ戦争やペロポネソス戦争、北方のマケドニアによる侵攻など大規模な戦争に加えて、エリスはスパルタ軍やアルカディア連邦軍に攻め込まれ、後者には一時的にオリンピアの聖域管理権と大会開催権を奪われたが、その後、奪還した。

    このように古代オリンピックはギリシャ情勢だけでなく、その時々の国際情勢にも翻弄されたが、紀元後4世紀まで生き延びた。なお、オリンピック期間中の休戦は全面的なものではなく、競技会の開催に支障が及ぶ戦闘行為に限って停止された。

    ■古代オリンピックにマラソンはなかった

    古代オリンピックの競技会は5日間にわたって開かれた。近代オリンピックの2週間超よりかなり短い。

    競技種目も陸上競技(トラック・アンド・フィールド)とレスリングやボクシングなどの格闘競技に限られていた。近代オリンピックの華であるマラソンは古代オリンピックにはなかった。

    競技会の前日には選手団がオリンピアへ向けて行進した。約200人の選手のほかに審判団、評議員、コーチ、親族・友人、従者の奴隷ら合計1000人以上が参加したという。見物人もぞろぞろついていった。途中宿泊し、大会初日の朝に会場に着いた。

    オリンピアの遺跡は1766年に英国の「古代愛好家」リチャード・チャンドラーによって発見された後、発掘作業(第一次)は1875年から1881年までドイツの考古学者クルティウスによって行われた。ゼウス神殿やヘラ神殿、ゼウスの大祭壇などを現在、見学することができる。

    競技場は前古典期からローマ時代まで5度改修され、現在、見ることができるのは前4世紀中頃までに完成された第三期のものだ。コースの長さは「1スタディオン」で192.27メートル。スタディオンはスタジアムの語源である。

    筆者はギリシャ旅行の際、このコースを走ってみたが、日本の学校の運動場を走るような感じで、紀元前からの競技場であるとの実感はなかなか持てなかった。

    ■大会3日目は「野外BBQ」

    競技場は4万人を超える観衆を収容できた。大会初日は、選手団到着の後、資格審査と選手宣誓が行われた。宣誓はゼウス神像の前で行われ、事前トレーニングをきちんとやって来たことも強調された。

    午後には少年の部の各種競技と触れ役及びラッパ手のコンテストがあった。スピーカーもマイクロフォンもない時代、競技者の出身国や氏名を大きな声で告げる触れ役は重要な存在だった。

    競馬競技は4頭立て・2頭立て。4頭立て競走は、古代オリンピックの華と呼ばれ、米映画「ベン・ハー」に再現されているように迫力とスリルに満ちたものだった。五種競技は、徒競走、円盤投げ、幅跳び、槍投げ、レスリング5種目だった。

    幅跳びの詳細については諸説あり、立ち幅跳びの5段跳びとの見方もある。勝敗は得点制ではなかったようで、どのように優勝者を決めていたのかは定かではない。

    大会3日目にはゼウス大犠牲式がとり行われた。ゼウス神官団や選手、コーチ、審判、各ポリスからの祭礼使節が行列を組み、ゼウスに捧げる100頭の雄牛を連れて、金銀の什器を持ち、ゼウス神殿の周りを練り歩き、祭壇に達すると、牛を犠牲に捧げる。

    100頭の牛は大腿部が煙になるまで焼かれ、残った部分は参加者にふるまわれる。古代版の巨大な野外バーベキュー・パーティーとも言えよう。焼けた牛の匂いが辺りに充満したに違いない。

    ■3位も2位も敗者と同じ

    大会4日目は徒競走と格闘技が行われた。徒競走はコースの端から端まで駆け抜けるスタディオン走のほかに、コースを1往復する中距離走、12往復する長距離走が中心だった。

    格闘技はレスリングとボクシングのほかにパンクラティオンがあった。これはさしずめ現代のプロレスに相当するだろう。噛みついたり、目つぶしをすることは禁止されているが、キック、パンチ、投げ技、締め技などは許されていた。

    このほかに重装歩兵の兜と脛当てを身につけ、丸盾を持って1往復する武装競走もあった。これは競技の中で唯一同時代の軍事技術と密接に関連したものだった。兜は1.5キロ、脛当ては一組で1.2キロ、丸盾8キロの重さで、炎天下では相当な負担であったに違いない。

    最終日の5日目は表彰式が行われた後、祝宴が催された。表彰されたのは勝者のみであり、2等、3等は敗者と見なされた。勝者にはオリーブの冠が授与されただけであり、金メダルなどの金目のものは与えられなかった。

    表彰式の後、優勝者は迎賓館で公式の晩餐会に招かれた。そのあとは家族や友人と合流して祝宴が延々と続いた。5日間の祭典が終わった翌日、参加者はそれぞれ帰路に就いた。優勝者は帰国後、多額の報奨金がもらえることや、オリンピアに自分の像を建てるための援助が集まることを期待しながら。

    ■7種目で優勝したローマ皇帝

    オリンピアの神域と競技会は、マケドニアのアレクサンドロス大王のインドなどへの10年に及ぶ大遠征によって事実上始まったヘレニズム時代の諸王やローマ皇帝を引きつけた。全ギリシャを挙げた祭典としてのオリンピックは、広大なヘレニズム世界に拡散していった。

    古代オリンピックに、ローマは途中からギリシャの都市国家に混ざって参加を認められていた。その後、ギリシャ全土を征服しその属州としたが、征服後もオリンピア祭は続けられた。特に帝政時代にはローマ皇帝はこの栄光に満ちたギリシャ人の競技祭に敬意を表し、物質的援助を惜しまなかった。

    暴君として知られる皇帝ネロは自分の歌を披露するため音楽競技を追加。ネロは7種目で優勝したが、その歌は劣悪で聞くに堪えないものだったという。その後、ネロの優勝はエリスの公式記録から削除された。

    ■平和の祭典が終わったワケ

    ローマ時代のオリンピックでは選手のプロ化が進み、優勝選手が金銭的報酬を受け取ることも常態化した。優勝者の祖国が支払う報奨金は跳ね上がり、報奨欲しさに不正を働く者、審判を買収する者が現れ、オリンピア大祭は腐敗し始めた。

    不正を行った者には以後のオリンピア大祭から追放されるとともに罰金が科せられた。これを資金源としてオリンピアに「ザーネス」と呼ばれる、不正を象徴する見せしめのゼウス像が建てられたが、記録によれば最終的に11体までつくられたという。

    古代オリンピックが消滅した直接の原因はローマ帝国によるキリスト教の国教化である。ローマ帝国は313年にキリスト教を公認し、392年に国教とした。これを受けて、テオドシウス帝は392年に異教祭祀全面禁止令を発し、異教徒のゼウス神崇拝と結びついたオリンピア大祭は禁止され、393年に開催された第293回が最後の古代オリンピックとなった。

    古代オリンピック消滅の背景には、ゲルマン人やヴァンダル人など異民族の侵入により、「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」が崩れ、ローマ帝国はもはやオリンピア大祭の開催を支援しきれなくなったという事情もあった。すなわち、古代オリンピックの消滅は古代地中海世界の枠組みの終焉を意味する。

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    村上 直久(むらかみ・なおひさ)
    元時事通信記者
    1949年生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒業。75年時事通信社入社。編集局英文部、外国経済部で記者、デスク。米UPI通信本社(ニューヨーク)出向、ブリュッセル特派員を経て、2001年に退社後、長岡技術科学大学で14年間、常勤として教鞭を執る。専門は国際関係論。定年退職後、時事総合研究所客員研究員。学術博士。日本記者クラブ会員。 著書に『国際情勢テキストブック』(日本経済評論社)、『WTO』『世界は食の安全を守れるか』『EUはどうなるか』『NATO 冷戦からウクライナ戦争まで』(以上、平凡社新書)など。

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    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/duncan1890


    (出典 news.nicovideo.jp)

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