令和の社会・ニュース通信所

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    カテゴリ:国内 > 評論家


    首相になることが日本にとって良いのか、悪いのか。高市氏の政策が将来の日本にどのような影響を与えるのかを、国民一人ひとりが真剣に論じるべきです。

    1 昆虫図鑑 ★ :2024/09/21(土) 19:04:37.33 ID:lc5MnKup
     自民党総裁選挙が終盤に入った。全国紙などが行う世論調査では、石破茂、小泉進次郎、高市早苗の3氏が他の候補を引き離していて、
    そのうちの2人が 決選投票に残ることがほぼ確実な情勢だ。
    ー中略ー

     本コラムでは、1月下旬に行われた党員調査を紹介したことがあるが、その時も例えば上川陽子外相の支持率が意外と高かったのに
    驚いたのを覚えている。
    麻生太郎元首相が上川氏を持ち上げる発言をして注目され、一般の人はほとんど知らなかった時点の調査だったので、
    自民党員がいかに一般人よりも自民党内のことをよく知っているかが分かった。
    ー中略ー

    ■高市総裁誕生で訪れる「日本が終わる」シナリオ

     高市氏が首相になったら、「日本が終わる」と私が言うと、「日本が壊されるんですよ」とか、「確実に緩やかな破綻になりますね」
    という意見が出た。

     中国を極端に敵視し、そこと戦う準備を始めるのだから、防衛費はGDP比2%どころかその数倍でも足りないという議論がすぐに始まる。
    徴兵制は最後のテーマかもしれないが、日本の社会全体があらゆる意味で戦争に備える体制へと変わっていくはずだ。

     もちろん、最初は全て国債発行で賄うが、早晩これは行き詰まる。すでに金利が上がり始めているのは、それに対する警鐘なのだが、
    そんなことにはお構いなしという政策が続くだろう。行き着くとこまで行くしかないのだ。戦争が始まらなくても、
    その準備は止まらないので、どこかで、社会保障や教育など国民生活のための予算は大きくカットせざるを得なくなる。

     さらに心配なのは、幻の台湾有事を喧伝して台湾に独立を唆し、自ら戦争を誘発してそこに参戦するというストーリーだ。

     その頃には、格差はさらに拡大し、戦争準備優先か戦争反対かで国民は分断されることになるだろう。

     高市氏の怖いところは、その「居直り体質」だ。推薦人20人のうち、13人を裏金議員で固めて世間をあっと驚かせたが、
    これは、裏金問題を追及する国民に対する挑戦状である。さらに、高市氏は、総裁選で禁止された政策リーフレットの党員などへの郵送を
    ルール実施直前だからと言って公然と配布した。ルール違反かどうかの問題もあるが、そもそも、党が金のかからない政治を目指すと
    国民にアピールしているのに、自分だけは、数千万円とも億円単位とも言われるリーフレット印刷・郵送を行ったのは、
    まさに背信行為だ。ルール施行前だったというがその証拠はどこにあるのか、巨額の資金はどこから来たのかという疑問も出てくるが、
    それらについて説明責任を果たしていない。

     数々の自身のスキャンダルに対して公然と「何が問題なのか」というような態度を取り続け、本来リーダーにあるべき高い倫理観
    「李下に冠を正さず」とは正反対の「捕まらなければ何をしても良い」という「地に堕ちた倫理観」を体現した安倍元首相の亡霊が
    取り憑いたかのようだ。まさに「安倍晋三の真の後継者」である。

     高市氏が首相になれば、こんな国に住みたくないという人が増えそうだ。

     アメリカではトランプ氏が再び大統領になったらカナダやイギリスやオーストラリアなどに移住するという人がかなりいるそうだが、
    日本人は貧しいから逃げることもできない。

     そんな恐ろしいシナリオを止めるのは、国民ではなく、自民党員・党友と自民党の国会議員である。
    しかし、自民党議員ははっきり言って国民のことなど考えていない。

     前出の国会議員は、「自民党の議員は本当に質が下がっちゃったんだよ。
    こんな連中に日本のトップを選ばせていいのか 私は本当に不安だよ」と嘆いた。

     最後の砦は、自民党の党員・党友だ。石破氏が高市氏に党員・党友票で大差をつければ、
    さすがの自民党議員もそれを覆すことはできないのではないか。

     そうなることを切に期待したい。

    古賀茂明

    全文はソースから
    9/21(土) 10:32配信
    https://news.yahoo.co.jp/articles/b70a6628904e9193ff3a4deefc2db950ca173512
    前スレ
    https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1726904193/

    【【AERA】 高市早苗氏の恐るべき“居直り体質”と“軍拡主義” もし首相になったら「日本は終わる」 古賀茂明】の続きを読む



    大地震が起きても政治家が何もできないのは本当に問題ですね。国民の安全を守るためには真剣に取り組んでほしいと思います。

    いまの日本の政治家の問題点は何か。法政大学法学部の山口二郎教授は「国民の緊急事態にこそ政治家は精力的に動き回るべきなのに、今年1月の能登半島地震の災害対応を見ていると、動きが鈍い印象を受ける」という。作家・佐藤優さんとの対談をお届けする――。(第1回/全2回)

    ※本稿は、佐藤優・山口二郎『自民党の変質』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

    ■「殺人疑惑」にも耐えた岸田政権

    【佐藤】私は、岸田政権は深海魚に似ていると思っています。支持率が20%台というのは、潜水艦でも圧潰(あっかい)沈没するくらいの水圧がかかる、かなり危険な深海にいるようなものです。なのに、岸田さんは平気です。まるで独自の生態系で生きているように見えます。

    裏金問題のみならず、木原誠二元内閣官房副長官のスキャンダルもありました。木原さんの妻の元夫が不審な死を遂げ、その捜査に木原さんが圧力を加えたのではないかとする記事(『週刊文春』2023年7月13日号)が発端でした。

    この案件は、今までの政治家のスキャンダルとは位相が違います。カネや下半身の問題ではなく、殺人が疑われたのですから。木原さんの妻を取り調べた元刑事(警視庁警部補)は、佐藤誠という実名を明かして記者会見を開き、「事件性がある」と断言しています。

    官房副長官の周辺で殺人疑惑がスキャンダルのテーマになるのは日本の政治史上、きわめて稀です。しかし、岸田さんも木原さんも、そんな強い水圧に耐えました。やはり深海魚なのです。

    ■8年前、日本の有権者は「安定」を選んだ

    政治をめぐり世論が騒ぐと、持ち出されるキーワードがあります。公明党の山口那津男代表がよく使う「安定か混乱か」です。たとえば2016年の参院選(第24回参議院議員通常選挙。7月10日投開票)に際し、彼は次のように述べました。

    「今回の選挙は、自民・公明両党の安定政権か、民進(現・国民民主党)・共産などによる混乱か。日本の重要な進路を問う選挙です」

    この時は選挙権が18歳以上に引き下げられた最初の国政選挙で、定数の半分(121)が改選されました。自公はともに議席を伸ばし(自民6、公明5増)、民進党は減らしました(13減)。有権者は「安定」を選んだことになります。では、今の野党はどうか。

    たとえば立憲民主党が中核となって、かつての民主党のように政権交代ができるのかと言えば、とてもそんな状況ではありません。国民民主党も日本維新の会(以下、維新の会)も同様です。

    ■自公の対抗勢力は支持を得られるか

    あえて挙げるとすれば、作家の百田尚樹さんがLGBT法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律。2023年6月16日成立。同23日公布・施行)に反対して立ち上げた日本保守党ですね(2023年10月設立)。

    ここに杉田水脈さんや青山繁晴さんらがLGBT法反対の立場から同調し、自民党を離党して加われば、無視できない力になると思います。LGBT法には、参政党も反対の立場です。

    すると、日本保守党と参政党を中心に維新の会、立憲民主党、国民民主党の一部が合流して自公の対抗勢力となり、政権交代を目指すという仮説も成り立ちます。しかし、それこそ「安定か混乱か」で言う「混乱」、というか「大混乱」になるでしょう。そう考えると、やはり有権者は「安定」を選択すると思います。

    ■欧米でも右派の新勢力が誕生している

    【山口】安倍さんの存命中は、右派的なものを束(たば)ねる求心力が自民党にありました。安倍さんは、言わば右派・保守勢力のアイコンだったのです。おかげで自民党の衰弱を隠蔽できました。しかし安倍さんが亡くなり(2022年7月8日)、その求心力が消えたことで、日本保守党や参政党などの新しい右派勢力が、弾けるように誕生したということでしょう。

    これは注目すべき変化ですが、世界的な潮流でもあります。

    ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」、フランスなら「国民連合(RN。旧・国民戦線)」といった右派ポピュリズム・ナショナリズム政党が登場し、どちらも一定の支持を得て、6月の欧州議会選挙で躍進しています。アメリカでもトランプという特異なリーダーが共和党そのものを牛耳る──そんな構図になっています。

    安倍さんには、後述する民主党政権(2009~2012年)の失敗を最大の資産にして、その資産を繰り返し利用しながら権力を維持した面があります。国会や党大会など、さまざまな場で「悪夢のような民主党政権」と連呼しました。

    また2011年3月の東日本大震災を経て、日本経済がすこしずつ上向くと、円安誘導をして輸出企業を儲けさせ、株価も上昇しました。安倍さんの首相在任中(2012年12月~2020年9月)、日経平均株価は2.33倍にもなっています。経済界には好ましい政権だったと言えるでしょう。

    ■「モリカケサクラ」は風化していった

    安倍政権時代には、今の裏金問題に通じるようなスキャンダルもありました。森友学園問題(国有地の売却価格決定に安倍晋三・昭恵夫妻が関与した疑惑。2017年)や加計学園問題(獣医学部新設の認可にあたり、安倍内閣が便宜を図ったとする疑惑。2017年)、「桜を見る会」問題(招待者の人数・前夜祭の参加費などをめぐり、公職選挙法違反と政治資金規正法違反が疑われた。2019年)の3件、いわゆる「モリカケサクラ」です。

    メディアや野党は安倍さんを厳しく糾弾・追及しましたが、安倍さんは「いつまで拘っているのだ」と言わんばかりに、追及を無力化して逃げ切ります。「モリカケサクラ」は次第に風化し、人々の記憶から消えていきました。政治的スキャンダルをごまかすという点で、今までにない現象です。

    ところで、本書で裏金問題に関し、私は「政治とカネをめぐるルールの改革が定着した」と述べましたが、いっぽうで選挙制度の改革は、自民党の政治家たちの“足腰”を弱めたと思います。

    ■政治家の足腰を弱めた「自民党公認」

    1994年に公職選挙法が改正され、2年後(1996年)の衆議院議員総選挙から小選挙区比例代表並立制(以下、小選挙区制)が導入されました。

    小選挙区で自民党の公認を得れば、衆院選ではかなりの確率で当選できます。しかも2012年に自民党が政権を奪還して以降は、野党が自滅・分裂していますから、「自由民主党公認」の看板が重みを増しています。裏を返せば、選挙戦で個々の政治家の運動量・熱量に負うところが少なくなったわけで、それが彼らの“足腰”を弱めたのです。

    政治家の足腰が弱まり、劣化したことは能登半島地震(2024年1月1日発生)の災害対応からも見て取れます。政治家の動きが鈍い印象を受けるのです。

    東日本大震災の時、自民党は野党でしたが、それまで培ってきた地方の基盤があったので、さまざまな業界団体を動かして復興支援活動にあたったり、地元の声を吸い上げて政策提言したりするなど、民主党政権のできない部分を補完しました。

    当時の自民党総裁・谷垣禎一さんは菅直人首相に、震災特命大臣の設置をはじめとする167項目の「第一次緊急提言」をしています(2011年3月30日)。

    ■災害時こそ、政治家の腕の見せどころだが…

    しかし13年が経過した今、政治家と地元選挙区との繫がりは希薄になり、政治家自身も無関心になってきました。地震のような自然災害にかぎりませんが、国民の緊急事態にこそ、精力的に地元を回って要望を聞き、政府・役所に伝える──それが政治家の腕の見せどころであるはずなのに、実に嘆かわしい。

    余談ですが、岸田さんが夏休みに書店に行き、本を買ったというニュースがありました(2023年8月11日)。岸田さんが購入した書籍は『アマテラスの暗号』(伊勢谷武著)、『街とその不確かな壁』(村上春樹著)、『世界資源エネルギー入門主要国の基本戦略と未来地図』(平田竹男著)、『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』(村山秀太郎監修)、『まるわかりChatGPT&生成AI』(野村総合研究所編)などです。

    これらの本がどうだとは申しません。ただ岸田さんと同じ宏池会でも、昔の政治家は難解な人文書を読み、読書量も教養も豊かでした。非常に勉強していたのです。こうしたところにも、私は政治家の変質を見る思いがします。

    ■「暴力的なオーラを持つ政治家」が消えた

    【佐藤】同感です。政治家は変質しましたね。

    まず政治家が官僚的になり、逆に官僚が政治家的になりました。私は政治家に暴力性を感じなくなりました。たとえば、鈴木宗男さん(新党大地代表。元北海道開発庁長官)や野中広務さん(元内閣官房長官)、梶山静六さん(元内閣官房長官)には、下手なことを言うと「殴られるのではないか」と思わせる、暴力的なオーラがありました。

    その迫力で官僚を威圧していたのですが、今の政治家にはほとんど見当たりません。強いて言うなら、武田良太さん(菅内閣で総務大臣。第四次安倍第二次改造内閣で国家公安委員会委員長)と二階俊博さん(元経済産業大臣。安倍・菅内閣で自民党幹事長)くらいでしょうか。

    山口さんが言われるように、選挙戦の荒波に揉まれていないから、政治家から迫力が失われたのかもしれません。

    ■“話し逃げ”する品のない自民党議員

    それから、特に自民党の政治家に、品(ひん)のない人が増えました。公明党の選挙集会に、自民党の政治家が応援演説でやって来ます。ところが15分の演説を終えると、さっさと帰ってしまう。集会の最後までいない“話し逃げ”です。

    集会が終わるまで会場に残り、応援を受けた公明党の政治家や公明党支持者たちと「がんばろう」と握手するのが常識でしょう。途中退席するのは常識を欠いた、品のない行為です。

    公明党の集会場所に15分だけ顔を出し、あとは自分の選挙区を回るとしても、大した数の有権者と話し込めるわけではありません。それよりも、会場に来ている1500人の創価学会員を中心とする公明党支持者に丁寧に対応したほうが、はるかにメリットがある。そんな計算もできないのは、政治家が変質・劣化した証左です。

    ちなみに、創価学会員の感覚では、聖教新聞を「取っています」と「読んでいます」は違います。創価学会についてどこまで勉強しているのかを相手に求めるのです。

    創価学会の会合に他宗派の数珠を持って参列し、学会員の神経を逆なでした自民党の政治家がいました。その政治家は勉強不足で地雷を踏んだわけですが、他者の「内在的な論理」を理解しようとする姿勢に欠けています。

    これは政治家として、有権者の気持ちになって考えることができないことと同列ですし、そのような人が外国人と国益をかけた交渉ができるとは思えません。

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    佐藤 優(さとう・まさる)
    作家・元外務省主任分析官
    1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。

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    山口 二郎(やまぐち・じろう)
    法政大学法学部教授
    法政大学法学部教授。1958年生まれ、東京大学法学部卒業。同大学法学部助手、北海道大学法学部教授、オックスフォード大学セントアントニーズ・カレッジ客員研究員などを経て現職。専門は行政学、現代日本政治論。著書に『民主主義へのオデッセイ』、『日本はどこで道を誤ったのか』など。

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    自民党の役員会に臨む(左から)茂木幹事長、岸田首相、麻生副総裁=8月20日午前、東京・永田町の党本部 - 写真提供=共同通信社


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    モスクワから見たウクライナ軍の動きって、どういう視点で解説されているんでしょうか?興味が湧きますね。

    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)
    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)

    ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

    *  *  *

    ――先日、佐藤さんはモスクワを訪れていたそうですが、あのレーニンが住んでいた「ナショナルホテル」に滞在していたのですか?

    佐藤 はい。8月13日に羽田発、北京経由でモスクワに行きました。

    ――お聞きしたいのは、ロシアの首都・モスクワから見たシン世界地図であります。

    佐藤 ではまず、クルスク州の州都・クルスクの現状についてどう思いますか?

    ――ウクライナ軍(以下、ウ軍)が西側から武器供与を受け、最強のウクライナ兵による六個旅団で奇襲して、東京都を越える面積を占領しました。

    佐藤 西側からは装備だけでなく、傭兵集団も提供されています。

    ――傭兵集団?!

    佐藤 はい。クルスクに進軍したウ軍にウクライナ兵は従属的機能しか果たしていません。主体はポーランド、ジョージア、イギリスからの傭兵集団です。

    ――だからこんなに強いのですか?

    佐藤 そうです。ウクライナは現在の戦いを「戦争」としていますが、ロシアは「テロ」として位置付けています。それは交戦時の傭兵に対する対応でも明らかです。

    2022年、イギリス人傭兵2名とモロッコ人傭兵1名が、 ロシアが実効支配するドネツク人民共和国で捕虜になり、裁判で死刑判決が言い渡されました。その後、捕虜交換でイギリス人傭兵は、ウクライナ側に引き渡されました。本来、正規の戦闘員を捕虜にした場合、人道的な待遇を与えなければなりません。

    しかし、傭兵は捕虜の地位を得ることはできません。殺人、傷害などの実行犯として刑事責任を追及することが可能です。要するに傭兵は、国際法上、保護の必要はないということです。だから、ロシア側は現場で全部、適切に処理をしているというわけです。

    ――それって、捕虜にせず、見つけ次第射殺ですか?

    佐藤 そういうことです。

    ――さ、さすが対テロ作戦。

    佐藤 そして、主導するのは軍ではなく、デュミン大統領補佐官です。国家反テロ委員会が前面に出ています。その指揮下に軍、内務省、連邦保安庁が入っています。

    ――それは一番怖い対テロ部隊の布陣であります。

    佐藤 要するに、皆殺しにするつもりです。本件に関してモスクワは全く動揺していません。

    占領された地域についての状況は、ロシアにとって不利な情報を含め、正確に政府系テレビが報道しています。モスクワ市民たちは「なるほど。防衛というのは大嘘で、ウクライナの侵略的本質がよく分かった」と言っています。

    さらに、「これはウクライナとの戦争ではなく、西側連合との戦争だ」「外国勢力と結託した白軍と同じだ。西側と結託したロシア人がウクライナ軍を自称しているにすぎない。それに対して、我々はロシア人を主体として、国家の独立を守る赤軍だ」と理解しています。

    ――これはロシア革命の真っ只中で燃え盛っている時のロシアではないですか。

    佐藤 そういう状況になっています。いまはウクライナとの戦いという意識ではなく、西側干渉軍との戦争であるという事柄の本質が分かったというわけです。

    ――それはなぜですか?

    佐藤 今回の件に関しては、追加的に供給した米国の兵器を使って、米国の了承を得た下で行われているというのがロシアの認識だからです。また米国大統領選と絡んで、ウクライナに成果を出させたいというバイデン大統領の意向も働いているというのがロシアの受け止め方です。

    このクルスク侵攻が始まったタイミングで、ドイツはウクライナ人ダイバーに逮捕状を請求しました。22年に、ロシアとドイツをつなぐ海底天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム」が破壊された事件に関してです。そして、それをウォールストリートジャーナルも報道しています。

    つまり、ヨーロッパがウクライナ戦争から逃げ出し始めているわけです。

    ――ドイツは保険をかけるために、ウクライナ人を指名手配したと?

    佐藤 そうです。我々はこの連中と一緒ではない、というアピールですね。

    ――傭兵を出しているポーランドは、どうやって逃げるつもりなんですか?

    佐藤 逃げられないでしょう。最も多くの傭兵を出していますからね。

    ――逃げられないポーランド。逃げ始めたドイツ。

    佐藤 そして、ウクライナはクルスク攻勢によって、ウクライナにとって有利な条件で講和できるのではないかという夢を見ていますが、それは難しいでしょう。ウクライナがロシアよりも予備兵力が少ないことも考慮する必要があります。

    一方のロシアは、徹底した形で反テロ作戦を実行すると宣言しています。そういうことなので、ある程度、おそらく3ヵ月ぐらいの時間はかかると思います。

    ロシアは「ウクライナから侵入してきたテロリストを完全に中立化(≒皆殺し)にする」と言っていました。その代わり、ロシアの国民に対しては「こちらが皆殺しにすることをウクライナの傭兵部隊も分かっているから本気で抵抗する。だから、かつてない凄惨な戦場になる」と伝えています。

    ――先にひと言、断りを入れているわけですね。

    佐藤 そうです。なので、ロシア兵たちには「傭兵やテロリストの捕虜は獲らない。連中とは生きるか死ぬかの戦いだ。一歩も下がるな、死ぬまで戦え」という話になると思います。

    ――ウクライナの傭兵に対して「ノープリズナー・ノーマーシー(無捕虜・無慈悲)で行け」と。そして、自軍兵士には大日本帝国陸軍の戦陣訓。「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪渦の汚名を残すことなかれ」と!

    佐藤 だから、硫黄島みたいな感じになってきたということです。いずれにせよ重要なのは、ロシア国内にまったく動揺がないことです。

    ――これは、ウクライナは困りましたね。

    佐藤 ゼレンスキーは情勢を深く分析せず、希望的観測に基づいて、一定の領域を取っておけば和平交渉になり、土地の相殺でもできると思っているのではないでしょうか。

    ――そう思っていると思いますよ。

    佐藤 成立しないシナリオです。

    ――しかし、すでに奇襲は始まっちゃいましたし、ロシアの対テロ作戦も開始であります。

    佐藤 結局は総力戦です。なのでそう考えた場合、一喜一憂する必要はありません。重要なのは、ロシア国民が事態を理解し、プーチン政権を心の底から支持しているという現実です。

    ――ロシアは、現状をウクライナとの戦争ではなく西側連合との戦いだと理解し、一切の動揺がない。

    佐藤 その通りです。そして、とにかくテロリストを皆殺しにしろ、外国勢力と繋がった干渉軍を打倒せよ、ということです。どんな政治意図があるか不明だが、外国勢力と繋がりのある組織は論外だ、という感じになっています。

    だから、ウクライナはクルスクの局地戦では、一時的に優勢になる可能性があります。しかし、この戦争でウクライナが勝利することはありません。

    ウクライナも西側連合も、これまではあくまでも防衛戦争だから、国境を越えることはないという前提でした。にもかかわらず、ゼレンスキーは今回、レッドラインを越えたことで「レッドラインとなるモノが存在しないとわかった」と公言しています。要するに「何でもあり」ということです。

    それは全面戦争を望んでいるというシグナルです。つまり、核戦争を含め第三次世界大戦が起きても構わないということです。

    ――そこにはNATOももう、付き合う気はない。

    佐藤 付き合いきれません。米国も及び腰です。

    ――これから、どうなりますか?

    佐藤 クルスクにいる傭兵部隊は皆殺しになるので、殺された傭兵と同数の予備兵力を持って来ないとなりません。クルスク州一部地域の占領にウクライナが固執すると、ウクライナ国内で「人間狩り」と形容できるような徴兵が始まります。

    ――そしてクルスク戦域に投入されれば、ウクライナ兵ではなくテロリストである傭兵と認定されているから、捕虜にならず皆殺しにされてしまう。

    佐藤 さらに、ドネツクが獲られる可能性も出て来ました。

    ――ウクライナの思うようにはいかないと。

    佐藤 いきません。

    次回へ続く。次回の配信は2024年9月6日(金)予定です。

    取材・文/小峯隆生

    ウクライナ軍の西側から供与された装備で強化された精鋭六個旅団が、対ロシア逆侵攻、奇襲を敢行した(写真:ロイター=共同)


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【#佐藤優のシン世界地図探索73】モスクワから見たウクライナ軍の「クルスク逆侵攻」】の続きを読む


    トランプ氏の外交政策は常に予測不可能であり、台湾有事が起きた場合、果たしてどのような判断を下すのか心配ですね。

    もしドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選したら、台湾への戦略は変わるのか。元外交官の宮家邦彦さんは「米国政府はこれまで、中国が台湾に侵攻した場合、米国がいかに対応するかを明確にしない「曖昧戦略」を採ってきた。トランプ氏がこの戦略をどの程度理解しているかに懸念がある」という――。

    ※本稿は、宮家邦彦『気をつけろ、トランプの復讐が始まる』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

    ■中国の台湾政策は強硬化している

    気になるのが、第二期トランプ政権の台湾有事に関する対応だ。2024年3月の中国全国人民代表大会で中国は台湾に関する「文言を強化」した。国務院総理の政府活動報告では「統一の理念を断固として推し進める」とされ、「平和的統一」としていた従来の表現を修正したとも報じられた。

    「平和的」という表現を削除するのは昔もあったことで過大評価すべきではないかもしれない。他方、別の報告では「『台湾独立』を目指す分離主義的な活動や外部からの干渉に断固として反対する」との表現も使われたとも報じられた。総じて、中国の台湾政策は、8年前と比べ、より強硬なものになりつつあると見てよいだろう。

    中国の言う「平和的統一」とは台湾が中国のシステムを受け入れる、ということ。だが、いまや台湾は人びとが自由を謳歌し、日本よりも政権交代の多い民主主義システムだ。民主主義を具現する人たちが中国大陸のやり方を受け入れるとは思えない。しかも、彼らは香港やウイグル、チベットで起きていることを知っている。

    ■米国のいわゆる「曖昧戦略」の有効性

    されば、中国の言う「統一」はどうしても武力に頼らざるをえない。だが、そんなことをすれば、中国経済は終わる。経済制裁が発動され、石油も止められるだろう。苦しい中国経済の立て直しに注力すべきときに、台湾に侵攻する余裕などあるのか。しかも、軍内部では不正汚職の噂が絶えないという。合理的判断を優先すれば、台湾侵攻の抑止は可能だ。

    それよりも筆者が懸念するのは、台湾に対する米国のいわゆる「曖昧戦略」の有効性であり、とくに気になるのは、東アジアではなく、ワシントンでの議論だ。日本ではあまり注目されていないが、過去数年間、地域の安全保障を左右しかねない超党派の議論が米国の首都で起きている。論点はズバリ、対台湾「曖昧戦略」を「見直すべし」という議論だ。

    議論の口火を切ったのは、2020年9月2日に『フォーリン・アフェアーズ』誌で「米国は台湾を防衛する意図を明確にせよ」と題する小論を書いたリチャード・ハース米外交問題評議会名誉会長だ。かつて国務省政策企画局長を務めた政策のプロでもある。このハース論文が現行の「曖昧戦略」を180度転換するよう求めている。同論文の要旨は次のとおりだ。

    ■曖昧戦略では中国を抑止できないのか

    ・曖昧戦略では、軍事的に強大化した中国を抑止できない。
    ・台湾を防衛する「意図を明確にする」方針変更は「一つの中国」政策の枠内で可能であり、むしろ米中関係を強化する。
    ・中国の軍事的優位は明らかで、中国の行動を待って米国が態度を決めるのでは遅すぎる。
    ・中国が台湾統一に動いた場合、万一、米国が台湾を守らなければ、日韓は「米国に頼れない」と判断する。そうなれば、両国は対中接近か核武装を選択しかねず、いずれも次の戦争の原因になる。よって、曖昧戦略は地域の現状維持に資さない。

    同論文発表から1年後の2021年10月11日、今度はバージニア州選出のエレイン・ルーリア民主党下院議員が米『ワシントン・ポスト』紙に「米議会は台湾に関しバイデンの制約を解くべし」と題する小論を掲載した。元米海軍中佐でもある同議員の台湾防衛に関する主張は次のとおり、じつに率直、大胆かつ明解である。

    ・米国には現在、中国を抑止する戦力も、それを使用する大統領の法的権限も存在しない。
    ・現行の戦争権限法と台湾関係法は大統領に台湾を防衛する権限を与えていない。
    ・大統領は中国の台湾侵攻を撃退し、全面戦争を抑止すべく迅速に対応する権限を持たない。
    ・「台湾侵攻回避法案」により、大統領に台湾を防衛する権限を与えるべきである。
    ・同法案は、大統領に台湾介入を義務付けず、「一つの中国」政策を変えるものでもない。

    ■見直しを求める声は続いている

    米大統領は現行法上、中国のグレーゾーン戦術、ハイブリッド戦などによる台湾侵攻戦略に適切に対応する権限がない。ルーリア議員は「曖昧戦略を変更せよ」とまでは言っていないが、少なくとも「台湾を防衛する」意図を米国政府がこれまで以上に「明確」にすることは求めているのだ。

    米海軍の元軍人で下院軍事委員会の副委員長であったルーリア議員が寄稿した意味は決して小さくない。その後もこの種の「曖昧戦略」見直しを求める声は続いており、同様の主張はいま米議会内でも静かに、かつ超党派で増殖しつつあるように思える。しかし、だからといって、近い将来こうした主張が米国の台湾政策の主流になるとは思わない。

    ■トランプは「曖昧戦略」を理解しているか

    米国政府はこれまで、中国が台湾に侵攻した場合、米国がいかに対応するかを明確にしない「曖昧戦略」を採ってきた。1972年のニクソン訪中以来、歴代米国政権がこの「曖昧戦略」によって、①中国の台湾侵攻、②台湾の独立宣言、を同時に抑止し、東アジアの現状を維持してきたことも否定できない。トランプ氏はこのことをどの程度理解しているだろうか。

    米国のアジア専門家、とくに中国専門家の主流はこれまで台湾に関する「曖昧戦略」を強く支持してきたが、彼らの議論には一理も二理もある。1972年にヘンリー・キッシンジャー氏が考案して以来、米国政府が採ってきたこの伝統的政策はそれなりに機能してきたからだ。続いて、「曖昧戦略」のどこが悪いのかと反論する彼らの議論を紹介しよう。

    ■「曖昧戦略」と「明確戦略」の最大の違い

    ・(台湾に関し)中国にはさまざまな地政学的制約がある。よって、米国と台湾が大騒ぎせず賢い選択を続ける限り、中国は台湾侵攻を選択できない。
    ・「曖昧戦略」が中台双方に対する米国の影響力を最大化する。このことは、ブッシュ政権時代の陳水扁政権との関係から明らかである。陳水扁政権は台湾独立を志向したが、米国はこれを抑えた。
    ・「明確戦略」を採用し、米国の支持を得た台湾の民進党が「台湾独立」を決断すれば、いったいどうするのか。
    ・米国が「明確戦略」を採れば、中国は台湾に対する非軍事的圧力を強める。
    ・そうなれば、中国は米軍が介入する前に、台湾を屈服させようとするだけである。

    以上の主張には一貫性がある。しかし、中国の軍事能力の大幅な向上という新たな状況に対応できるのか、対中抑止にはいまやあまり効果がないのではないか、という問いには答えられない。「曖昧戦略」と「明確戦略」の最大の違いは、前者が「中国の目的は台湾独立阻止」だと考えるのに対し、後者は「中国は本気で台湾を併合する」という前提に立つことだ。

    ■「曖昧戦略」を簡単に転換してはいけない

    筆者の知る限り、トランプ氏が過去に「米国による台湾防衛」の可能性について言及したことは一度もない。あれだけ饒舌なトランプ氏が一言も喋らないのに対し、現職のバイデン大統領が、失言か、意図的か、認知症によるものかは別として、何度も「台湾を防衛する」と公言していることとはあまりに対照的である。

    筆者がこの点にこだわるのは、台湾有事の際の米国の行動の有無およびその態様は、日本の国家安全保障を左右する重要な要素だからだ。その意味でも、トランプ氏が、少なくともこの問題の微妙かつ流動的な本質を正確に理解するか否かは、将来のインド太平洋地域の同盟ネットワークの将来を左右しかねない大問題だと考える。

    最後に、筆者の見立てを書いておく。巷には「有事となれば、トランプ氏は台湾を見捨てる」といった悲観論もあるが、こればかりは起きてみないとわからない。いまはトランプ氏に以下の論点を正しく理解してもらい、台湾有事の際に間違った判断を下さないよう祈るしかない。それにしても、こんなややこしい説明をトランプ氏は理解できるだろうか。

    ■曖昧さによる抑止はこれまでそれなりに機能してきた

    ・米国が曖昧戦略を一方的に放棄すれば、1972年の米中国交正常化および日中国交正常化の前提、すなわち日米中は「台湾問題」の最終的解決を急がないという暗黙の了解そのものを否定する。これに対し中国は、台湾問題を平和的に解決するとの約束を公然と反故にする口実を得るため、台湾の安全はむしろ害されることになる。

    ・逆に、米国が台湾を防衛しなければ、東アジアの同盟国からの信頼は失われる。他方、同盟国側は米国に代わって台湾を防衛する義務まで負う気はない。米国の戦略的曖昧さが続く限り、同盟国が台湾問題に巻き込まれる可能性は低いので、米国の曖昧戦略は同盟国にとっても利益となっている。

    ・曖昧さによる抑止はこれまでそれなりに機能してきた。仮にこの戦略を転換するなら、曖昧戦略に代わる新たな台湾「抑止」メカニズムを、中国側の了解を得たうえで構築しなければならない。新たな抑止メカニズムを欠くいかなる政策変更も成功せず、逆に米国は台湾防衛という実行困難な「レッドライン」の罠にはまることになる。

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    宮家 邦彦(みやけ・くにひこ)
    キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
    1953年神奈川県生まれ。78年東京大学法学部卒業後、外務省に入省。外務大臣秘書官、在米国大使館一等書記官、中近東第一課長、日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、在イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任。2006年10月~07年9月、総理公邸連絡調整官。09年4月より現職。立命館大学客員教授、中東調査会顧問、外交政策研究所代表、内閣官房参与(外交)。

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    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Aoraee


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    本当に国民のことを考えているのでしょうか。

    2014年4月には8%に、2019年10月には10%に引き上げられた消費税率。社会保障制度を拡大するための税収確保が目的といいますが、経済アナリストの森永卓郎氏によると、どうもその限りではないようです……。森永氏がどのメディアでも話せなかった“日本経済のタブー”について、著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より詳しくみていきましょう。

    増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼ぶ財務省

    「税収弾性値」という言葉をご存じだろうか。

    名目GDPが1%増えたときに税収が何%増えるかという数字だ。税収弾性値は一般的に1を超える。たとえば、給料が増えたとき、給与の増加率を上回って所得税が増える。累進課税の下で、より高い税率が適用されるようになるからだ。

    財務省は、中長期の財政計画を立てるときに、この税収弾性値を1.1と設定してきた。しかし、最近この税収弾性値に異変が起きている。たとえば、2022年度は3.0、2021年度は4.1となっているのだ。

    つまり、名目GDPを1%伸ばすと、その3倍から4倍のペースで税収が増えていることになる。もちろん税収弾性値は、単年度で見ると不安定だ。たとえば、2020年度の弾性値は▲1.2とマイナスになっている。

    そこで、過去5年間平均の弾性値を計算すると、22年度は15.5という恐ろしい数字になっている。そして、2000年以降の数字を眺めていくと、1という数字はなくて、3前後の数字が並んでいる。

    このことは、増税ではなく、GDPを増やすことを考えていけば、高齢化に伴う社会保障負担増などの財源を確保できることを意味している。

    ところが、財務省は、消費税の引き上げなどの増税策ばかりを示して、経済規模拡大による税収増というビジョンはほとんど出てこない。いったいなぜなのか。

    財務省内では、増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼んで、増税を実現した官僚は栄転したり、よりよい天下り先をあてがわれる。

    さらに消費税率の引き上げに成功した官僚は「レジェンド」として崇め奉られる。一方、経済規模を拡大して税収を増やしても、財務官僚にとってはなんのポイントにもならない。

    財務省“改心”のヒントは「阪神タイガース」にあった!?

    18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースは、攻撃面で見ると、チーム打率が突出して高いわけではない。しかし、出塁率はダントツの1位だ。

    その理由は、選んだ四球の数が圧倒的に多いからだ。ヒットだろうが四球だろうが、塁に出るのは同じだ。そこで岡田監督は、フロントに掛け合って、選手の成績評価で、四球獲得に与えるポイントを高めてもらったという。これにより四球を選ぶ選手が劇的に増えた。

    そのことを考えると、財務省の増税路線を改める方法は簡単だ。

    増税を主導した官僚にマイナスポイントを与え、経済拡大に伴う税収増を実現した官僚にプラスポイントを与えるのだ。そのために官邸が財務省から人事権を取り上げ、個別に官僚の人事評価をすればよいのではないだろうか。

    自民若手議員や野党の提案に“見向きもしない”岸田政権

    2014年の消費税増税のような非科学的経済政策は、今もなお繰り返されている。その典型が2023年11月2日に政府が閣議決定した経済対策だ。

    経済対策の目玉は、所得税・住民税減税だ。物価高で苦しむ国民生活を救うため、岸田総理は「税収増を国民に還元する」と、住民税非課税世帯への7万円の定額給付に加えて、1人あたり住民税1万円、所得税3万円の定額減税を1年に限って実施することにした。

    立憲民主党を除く野党からは消費税減税を求める声が出ていたし、自民党の若手国会議員102人で構成する「責任ある積極財政を推進する議員連盟」からも、消費税率を5%に引き下げたうえで、食料品については消費税率を0%とする政策提言がなされていた。

    だが、そうした案は見向きもされなかった。

    岸田総理の打ち出した所得税減税は、消費税減税とくらべると、かなりの問題がある。

    第一の問題は、物価高対策にならないことだ。消費税減税であれば、税率引き下げと同時に物価が下がるから、完全な物価抑制効果がある。とくに食料品は物価が9%も上がっているから、軽減税率である8%の消費税をなくせば、物価高の大部分を相殺できる。

    国民が経済対策の効果を毎日の買い物のたびに感じることができるのだ。一方、所得税減税は、所得を増やすので、理論上は、需給がひっ迫して物価をむしろ押し上げる。

    第二の問題は、実施まで時間がかかることだ。来年度の税制改正を行なった後、給料の源泉徴収額が変わるのは翌年6月になってしまう。

    第三の問題は、一時的な減税は、貯蓄に回ることが多く、消費を拡大しないことだ。これまで行なわれた一時金給付の効果試算では、給付金のおよそ8割が貯蓄に回ってしまうことが明らかになっている。

    今回の対策では、減税の後に増税が待ち構えていることを誰もが知っているので、おそらくほとんどが貯蓄に回るだろう。つまり、景気対策の効果はほとんどない。

    いったいなぜ…?減税に“懐疑的”な日本経済新聞と朝日新聞

    そして第四の問題は、減税にエアポケットが発生することだ。年間の所得税が3万円を超えるのは、専業主婦の妻がいる世帯で年収320万円、独身者の場合で240万円だ。それ以下の年収の世帯は3万円の定額減税をフルには受けられないことになる。

    こうしたことを考えると物価高対策としては、所得税減税よりも消費税減税のほうがはるかに効果が高いのだが、消費税減税の話は、与党幹部から一切出てこない。消費税減税を嫌がる財務省への忖度だろう。

    そして、その態度は大手メディアも同じだ。それどころか、大手新聞は、減税そのものにも疑問を投げかける。

    2023年10月21日の日本経済新聞は一面トップで「所得減税遠のく財政再建」と掲げ、「ガソリンや電気への補助金などに加えてバラマキ政策が続けば財政再建は遠のく」と減税自体に反対する態度を鮮明にした。

    朝日新聞も同じだ。10月20日朝刊の社説は「過去3年、国の税収が物価上昇などの影響で過去最高を更新してきたのは事実だが、収支を見ると赤字がコロナ前より大幅に拡大し、借金頼みに拍車がかかっている。巨額の財政出動を繰り返した結果、歳入増を上回る規模で歳出が膨らんだためだ」と書いている。

    朝日新聞は統計を見ているのだろうか。

    コロナ前の2019年度の基礎的財政収支の赤字は13.9兆円だった。2023年度予算の基礎的財政収支の赤字は、予算ベースで10.8兆円だ。コロナ前より大幅に赤字は減っている。赤字がコロナ前より大幅に拡大したというのは完全な事実誤認だ。

    しかも2023年度は予算ベースなので、税収が見積もりより増えたり、予算に不用額(歳出予算のうち、実際に使用しなかった額)が出ると、財政収支はさらに改善する。さらに、政府の抱える借金は、資産をカウントしたネットベースで、前述したとおり通貨発行益を考慮すると、ほぼゼロになっている。

    借金もなくて、財政赤字もないのに、新聞はいつまで財政破綻を煽るのか。  

    森永 卓郎

    経済アナリスト

    獨協大学経済学部 教授

    (※写真はイメージです/PIXTA)


    (出典 news.nicovideo.jp)

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