令和の社会・ニュース通信所

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    カテゴリ:国内 > 国防



    日本の領海での中国船の横暴は許されるべきではない。

    2024年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治・経済部門の第1位は――。(初公開日:2024年2月15日)
    尖閣諸島周辺では毎日のように中国海警船が確認されている。元海保長官の奥島高弘さんは「彼らは領海内で操業している日本漁船を排除しようと侵入してくるが、海保の巡視船がしっかりとガードしているため、接近もできないけれど出ていくわけにもいかない状態になっている」という――。

    ※本稿は、奥島高弘『知られざる海上保安庁 安全保障最前線』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

    ■ほぼ毎日、接続水域内にいる海警船

    近年、中国の海警局(沿岸警備隊)の活動はますます活発化してきています。その大きなきっかけとなったのが、2012年9月11日の尖閣3島(魚釣島、南小島、北小島)の国有化です。

    図表1のグラフで確認すると、2012年9月以降、海警船が尖閣領海周辺の接続水域に入ってきた日数が一気に増えているのがわかります。その後、2019年以降はこれまでにないほど活発化し、ほぼ毎日、接続水域で海警船が確認されるという状況が続いています。

    図表2のグラフでもう少し詳しく見ていくと、2018年の年間の接続水域内確認日数が159日で1年の約4割強だったのに対し、翌2019年には282日、すなわち1年の約8割にまで跳ね上がりました。

    さらに2020年以降は330日以上で、実に1年の9割を超える日数で海警船が接続水域内を徘徊(はいかい)している状況です。

    連続確認日数(海警船が連続して接続水域内に留まり続ける日数)も近年増加傾向にあります。

    2021年には過去最長の157日、つまり5カ月以上も海警船が連続して接続水域内に留まっていました。翌2022年は、過去2番目に長い138日連続です。

    ■日本漁船の排除を企むも、海保がしっかりガード

    一方、領海侵入の件数は年別で見るとそれほど大きな変化はありません。

    ただ、近年の特徴として、侵入時間が長期間に及ぶようになってきています。

    こうした長期間に及ぶケースは、尖閣周辺の領海内で操業している日本漁船を排除しようとして海警船が侵入してくるケースです。

    当然それに対して海上保安庁の巡視船は日本漁船をしっかりとガードし、日本漁船に操業してもらうという対応をとっています。その結果、海警船は日本漁船に接近もできないけれど出ていくわけにもいかず、領海侵入が長期間に及ぶという皮肉な結果となっているのです。

    2023年3~4月の事案では領海侵入時間が80時間36分にも及び、過去最長を更新しています。この「海警船が尖閣から帰らなくなった」というのが大きなポイントです。

    図表1のグラフを見ると、海警船が近年、尖閣に頻繁に来るようになった印象を受けますが、実はそうではなくて、海警船が「尖閣から帰らなくなった」のです。

    ■大型化・武装化している海警船の脅威

    近年、海警が急速に勢力を拡大しているのは日本にとって間違いなく脅威です。

    日本のメディア等でも「すでに海警は性能的にも数量的にも海上保安庁を圧倒的に上回る船舶・武器を保有している。しかも海軍と連携して軍事訓練までしているから事実上の軍隊だ」という論調でやや煽り気味に報じられることもありますので、もはや海上保安庁では海警に太刀打ちできないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

    しかし、あくまで本書執筆時点(2023年12月)での話ですが、海上保安庁の巡視船が海警に比べて見劣りするかというと、正直なところまったくそうは思いません。

    確かに海警の船舶は大型化・武装化し、隻数も増やしていますが、実際に武器を搭載している船はそのうちの何割かです。全ての船に武器が搭載されているわけではありません。一方、海上保安庁の巡視船は全ての船に武器が搭載されています。

    武器の大きさを比較すると、海警の最大の武器は76ミリ機関砲、海上保安庁の最大の武器は40ミリ機関砲なので、海警のほうが威力の大きい武器を搭載しているのは確かです。そのため、「40ミリでは76ミリには到底敵わない」という論調で語られることも多いのですが、実はそうとは言い切れません。

    ■40ミリ機関砲を使っているのには理由がある

    これは専門家でも意見が分かれるようですが、私は経験上、40ミリ機関砲のほうが“強い”と思っています。その理由については機密に関わることなので詳しくは語れません。

    ただ、事実だけ述べておくと、実は海上保安庁も以前は76ミリ機関砲を搭載した巡視船を持っていましたが、ある時期から76ミリをやめて現在では40ミリを使っています。これを庁法25条と関連付けて「庁法25条があるから“非軍事”の海上保安庁は強力な76ミリ機関砲を持てなくなった」と誤解している方もいますが、そういうわけではありません。40ミリが海上保安庁にとってベストだという結論にいたったので、40ミリ機関砲を使っているのです。

    武器にしろ、船舶にしろ、一部の性能だけを比較して議論してもあまり意味はない(地に足のついた議論にはならない)と思います。

    ■「軍隊」だから急に強くなるわけではない

    「海警は法執行機関だが軍事訓練を受けているから事実上の軍隊だ。有事の際には軍事活動を行う軍隊にもなれる。非軍事機関の海上保安庁では到底敵わないのではないか」という意見もありますが、それにも根拠はありません。「何となくの印象やイメージ」です。

    これまで海上保安庁は実際に尖閣で海警と対峙(たいじ)し、互角以上に渡り合ってきました。それなのに、なぜ海警が軍隊の看板を掲げたとたんに、海上保安庁が負けることになるのでしょうか。

    問題は、海警が軍隊か否かではなく、実際に“強い”かどうかです。

    たとえ海警が「事実上の軍隊」だとしても、特別強力な武器を保有しているわけではありません。法執行機関が保有する武器は「犯人の抵抗を抑止するための武器」もしくは「逃げていく船を止めるための武器」です。海警船が「元軍艦」だからといって、対艦ミサイルのような強力な武器を搭載しているわけではありません。せいぜい76ミリ機関砲です。

    少なくとも現在の海警の装備を見る限り、海上保安庁で十分に対応できると思います。

    有事下で海警が現状の装備のまま軍隊の看板を掲げ、「俺たちは今から軍艦だ!」と宣言したところで、法執行機関にはできないような特別強力な戦い方が突然できるわけでもありません。海上保安庁としては、海警が軍隊の看板を掲げていようと、法執行機関であろうと、やるべきことは同じです。

    ■海保が海警に惨敗するとは思えないが…

    このように書くと、有事の際に海上保安庁は海警と一戦交えるつもりなのかと誤解されるかもしれませんが、「戦闘」は有事下においても海上保安庁の任務ではありません。海上保安庁がやるべきことは、自衛隊をはじめとする関係機関と連携・協力しながら国民の命を守ること(国民保護措置)です。海警と戦って勝つことではありません。

    当然、有事下でも海上保安庁のほうから海警に攻撃を仕掛けるようなことはありませんが、仮に海警から攻撃を受ければそれを防ぐための必要な対応はとることになります。

    たとえそのような事態になったとしても、現状の両者の勢力・実力を比較する限り、海上保安庁がなすすべもなく海警に負けてしまうとは到底思えない、というのが私の意見です。

    もうひとつ誤解のないようにお断りしておくと、私はけっして「海警など恐るるに足らず」と言っているわけではありません。

    繰り返しますが、近年の海警の急速な勢力拡大は間違いなく脅威です。

    ■海警は12年前から着実に実力を伸ばしている

    船舶の数を増やし、武装化・大型化するなどのハード面の実力のみならず、実は、操船技術などソフト面の実力も以前と比べて着実に伸ばしてきているのです。

    尖閣諸島国有化で海警の活動が活発化し始めた2012年、私は領海警備対策官というポストに就いていましたので、まさに尖閣の最前線で海警と丁々発止のやり合いもしました。当時、現場で海警と対峙して私が抱いた率直な感想は「この程度なら勝てる」でした。

    詳細は語れませんが、たとえば操船技術ひとつとっても、海上保安庁のほうが圧倒的に海警を上回っていたからです。当時の海警の操船技術は海上保安庁の足元にも及びませんでした。

    加えて、あの頃は船舶の性能でも海上保安庁の巡視船のほうが上回っていたと思います。海上保安庁側に十分余裕のある状況だったというのが私の感覚でした。

    しかし、現在の海警はもはや当時とは違い、ハード面の強化とともに、操船技術が格段に向上しています。

    勢力のみならず能力の面でも、今となってはけっしてあなどれない相手になってしまいました。

    ■海保が操船技術の稽古をつけたようなもの

    実に皮肉な話なのですが、海警側も海上保安庁と長年やり合っていく中で、どんどん操船がうまくなっていったのです。結果的に海上保安庁が海警に操船技術の稽古をつけたような形になってしまいました。冗談ではなく、海警をいちばん育てたのは海上保安庁じゃないかというジレンマすら感じます。

    以前の海警は時化(しけ)をしのぐための荒天航法という操船技術を身に付けていなかったようで、時化の予兆があるとすぐに帰っていきました。そのため、年間の接続水域内確認日数も前述の通り4~5割程度でした。

    しかし、今では時化でもちゃんと尖閣周辺の海域に留まれる操船技術を身に付けたことに加えて、船舶の大型化や組織体制の強化もあって、海警が帰ることはなく、ほぼ毎日接続水域内を徘徊している状況になったというわけです。

    ちなみに、以前は海警船が帰ってからも海上保安庁の巡視船は尖閣周辺の海域に留まり、さまざまな訓練を行っていました。しかし、海警が帰らなくなったことから、その訓練の時間を確保することが難しくなってしまったのです。

    ■海保の実力と実績は世界トップクラス

    これは実はなかなか困りものです。現場配備とは別枠で新たに訓練時間を設けなければならない上に、その訓練によって現場に空白が生じないよう、応援の船艇も必要になるからです。

    海警が尖閣周辺から帰らなくなったことで、海上保安庁側は訓練時間の確保や船艇運用の面でも苦労する状況になっています。

    ところで、海上保安庁の実力、特に他国のコーストガードと比較した実力については国民の皆さんにあまり知られていないと思います。

    過大評価ではなく、いまや海上保安庁は世界トップクラスの実力と実績を築いています。総合能力的に海上保安庁を上回るコーストガードは世界にそうありません。

    操船技術はもとより、海上での犯人逮捕、海賊対応、海難救助、流出油の処理など海上保安に関する幅広い分野で世界トップレベルの能力を有しており、多くのコーストガードにキャパシティ・ビルディングを行う指導者、つまり教える立場となっています。

    ■アメリカ沿岸警備隊が「クレイジー」と賞賛

    もちろん、アメリカ沿岸警備隊は世界に冠たる実力を備えた組織ですが、その彼らからも海上保安庁の実力は極めて高く評価されています。

    現在、アメリカ沿岸警備隊とは「サファイア」という名称で合同訓練をやっています。その合同訓練において、海上保安庁がゴムボートで犯罪容疑船舶を挟撃して捕まえるという操船技術を披露した際、アメリカ沿岸警備隊の職員は「クレイジー」という最大級の褒め言葉を発しました。「海上保安庁はこんなことをやるのか⁉」と驚いたのです。

    もっとも、アメリカ沿岸警備隊の場合、こうした対応のリスク(接触による転覆等の事故など)を取るよりも、武器の使用が選択されるでしょう。海上保安庁は武器の使用を厳格な基準のもとで運用しているので、逆にそういう技術が自然と身に付き、洗練されていったのです。

    ■香港からの不法上陸者を捕まえた“神業”

    海上保安庁の高い能力は、訓練だけでなく現場でもしっかりと発揮されています。

    2012年8月に香港の活動家らが尖閣諸島・魚釣島への不法上陸を強行する事件があった際には、海上保安庁の巡視船2隻が逃げていく活動家船舶(啓豊二號)を両側から挟んで動きを止めたことがありました。

    操船に詳しい人が見れば、これはまさに“神業”というしかありません。

    海上保安庁のこうした技術・能力は各国のコーストガードからも極めて高い評価と称賛を得ています。

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    奥島 高弘(おくしま・たかひろ)
    第46代海上保安庁長官
    1959年7月7日生まれ。北海道出身。北海道小樽桜陽高等学校を経て、82年に海上保安大学校を卒業する(本科第28期)。海上保安官として警備救難、航行安全等の実務に携わり、政務課政策評価広報室海上保安報道官、根室海上保安部長、第三管区海上保安本部交通部長、警備救難部警備課領海警備対策官、警備救難部管理課長、総務部参事官、第八管区海上保安本部長、警備救難部長などを歴任する。2018年7月31日、海上保安監に就任。20年1月7日、海上保安庁長官に就任し、22年6月28日に退任。現在は、公益財団法人 海上保安協会 理事長を務める。趣味は絵画鑑賞、ワイン、旅行、読書。

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    ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/IgorSPb


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    自衛隊の技術力や戦術がさらに向上し、国土や国民を守る能力が強化されることを期待する。ウクライナ戦争から学び、備える姿勢は重要だ。

    カミカゼUAV、うろつき型兵器なんて言われ方も。

    偵察用だけでなく攻撃用のUAVも調達へ

    防衛省は2024年8月30日(金)、2025(令和7)年度予算の概算要求を発表しました。そのなかで「無人アセット防衛能力」として盛り込まれていたのが、各種UAVの本格取得です。

    すでに防衛省・自衛隊ではUAV(無人航空機)の積極的な導入を進めており、偵察用は大小さまざまなモデルが全国各地で運用されています。しかし、このたびの概算要求では、新たに「小型攻撃用UAVの取得」が明記されていました。

    防衛省によると「小型攻撃用UAV」とは、空中を遊弋(ゆうよく)して車両などを迅速に撃破可能なものとのこと。これは、すなわち「自爆ドローン」や「徘徊型ドローン」と呼ばれる徘徊型兵器のことだと考えられます。

    徘徊型兵器とは、文字どおり一定時間、特定エリアの上空を飛行(徘徊)し、目標を発見すると操縦者からの指令で体当たりして撃破する無人兵器です。従来のミサイルのように発射時に目標を見つけておく必要がなく、なかには目標がなかった場合には帰投するタイプまであります。

    しかも、ほぼドローンと同じ誘導システムや操作方法のためコストは安く、操縦する隊員にも特別な技量が必要とされないため、短期間で運用できるようになります。また、制御システムも大掛かりなものは必要ありません。

    このような兵器は、ロシア軍によって侵攻されたウクライナ側が対抗手段として大量に使用し、短期間で大量の戦果を挙げたことなどで、にわかに注目されるようになりました。

    そういった状況を鑑み、防衛省・自衛隊も導入に踏み切ったものと考えられます。ちなみに調達機数は明らかにされていませんが、金額は30億円と記されています。

    なお、防衛省が発表した概算要求では、無人アセットは「革新的なゲームチェンジャーである」と明記されていました。



    (出典 news.nicovideo.jp)

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    これはちょっと面白いニュースですね。幽霊戦車隊という言葉がなんとも味があります。

    今年3月に退役したあの戦車も!

    戦車などの旧式兵器を長期保管へ

    防衛省は2024年8月30日、陸上自衛隊で使用しなくなった戦車などの予備装備品について、継戦能力を確保することを目的に長期保管を開始する方針を明らかにしました。

    使用されなくなった旧式兵器を長期保管することは「モスボール」と呼ばれ、必要に応じて現役復帰させ、部隊に補充する措置が取られることになります。

    現在、ウクライナに全面侵攻しているロシア軍は、装甲車両に大きな被害を受けたため、保管していた大量の旧式戦車を現役復帰させているほか、ウクライナ軍もドイツなど他国が保管していた兵器の供与を受けています。また、アメリカ海軍にも「幽霊艦隊」という長期保管されている艦艇群が存在します。

    防衛省は、2025年度予算の概算要求に「予備装備品の維持」として7億円を計上。「部隊改編等で使用しなくなった装備品のうち、まだ能力を発揮し得る装備品について、管理コストを抑制しつつ長期保管を行い、必要に応じて部隊に補充する」としています。

    対象は、74式戦車、90式戦車、多連装ロケットシステム(MLRS)とのこと。概算要求に計上された7億円は、保管設備の設置費用を含むとしています。何両を長期保管するのか、どこに保管設備を設置するのかは明らかになっていません。

    現在、自衛隊で退役した戦車などの装備は解体されていますが、仮に有事で増産が必要になったとしても、すぐに必要な数を確保できるわけではありません。ようやく日本でも継戦能力が意識され始めたといえそうです。



    (出典 news.nicovideo.jp)

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    日本とアメリカの連携がとても重要だと感じます。中国との緊張が高まっている中、今後もしっかり連携していく必要があると思います。

    米空軍のステルス戦略爆撃機B-2は今回がリムパック初参加。艦艇を一撃で沈める新型爆弾「クイックシンク」を投下する
    米空軍のステルス戦略爆撃機B-2は今回がリムパック初参加。艦艇を一撃で沈める新型爆弾「クイックシンク」を投下する

    アメリカとその同盟国・友好国を中心に29ヵ国が参加し、6月末から8月初旬まで開催された多国間軍事演習「リムパック2024」。中国の台湾侵攻への対処をイメージさせる訓練の全貌を、現地ハワイで取材したフォトジャーナリストの柿谷哲也氏がリポート!

    【写真】リムパックに参加した日本の艦船や他国軍

    *  *  *

    ■台湾侵攻に対し、24時間でケリをつける?

    米海軍を中心に、ハワイで隔年開催される多国間軍事演習リムパック(RIMPAC:環太平洋合同演習)。筆者は1994年から今回まで計14回取材しているが、米軍と自衛隊が中国の台湾侵攻にどう対処しようとしているか、いよいよ見えてきた印象だ。

    キーワードはMDTF(マルチ・ドメイン・タスク・フォース)。陸海空に加え宇宙、サイバーの領域も含め、米軍とその同盟国軍が各種戦力を動員、標的を捜して位置を精密に特定し、各軍の長距離打撃力を同期させて攻撃するという構想だ。

    2018年のリムパックでMDTFの指揮官を務めた米陸軍のウェンドランド大佐は、

    「24時間で攻撃、評価、再攻撃を行なうことができる」

    と発言。また、22年のMDTF訓練では、米海兵沿岸連隊の訓練会場に展示されたパネルに、攻撃対象として中国、北朝鮮、イランと明記されていた。

    このコンセプトは今も変わっていないと考えると、リムパック2024で行なわれたMDTF訓練は、中国の台湾侵攻を想定し、24時間以内に「ケリをつける」ことができることを示す狙いがあったのだと思う。

    先陣を切るのは、敵艦の真横に投下しバブルジェット効果で破壊する誘導爆弾「クイックシンク」を搭載した米空軍のステルス爆撃機B-2。今回の訓練では、標的役を務めた退役艦、米海軍タラワ級強襲揚陸艦に見事命中、撃沈させた。

    新型爆弾「クイックシンク」によって、退役済みの米海軍タラワ級強襲揚陸艦が実際に撃沈された
    新型爆弾「クイックシンク」によって、退役済みの米海軍タラワ級強襲揚陸艦が実際に撃沈された

    普段はグアムに配備されているB-2による"隠密爆撃"のデモンストレーションは、台湾に接近する中国海軍の強襲揚陸艦、台湾を海上封鎖するために西太平洋や東シナ海へ展開する中国海軍の空母に対する米軍の攻撃能力を示す強力なメッセージになったはずだ。

    ■日本の南西諸島はミサイルの前線基地に

    続いて大きな役割を担うのが、台湾有事の際、南西諸島はじめ日本各地に配置される各種対艦・対地ミサイル群。

    中核となる戦力は、高い目標判別能力と命中精度を誇る陸上自衛隊の射程200㎞の「12式地対艦ミサイル」で、その脇を固めるのが、機動性の高い米海兵沿岸連隊の新型対艦ミサイル「NMESIS」(以下、ネメシス)だ。両者は複数目標への攻撃の分担、重要な同目標への同時攻撃など、互いのバックアップも期待できる。

    米海兵隊の最新鋭の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」。輸送機やヘリ、船艇などで運搬できる機動性がウリで、台湾有事の際は日本の南西諸島各島に配備される可能性大
    米海兵隊の最新鋭の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」。輸送機やヘリ、船艇などで運搬できる機動性がウリで、台湾有事の際は日本の南西諸島各島に配備される可能性大

    目標判別能力と命中精度に優れた射程200㎞の「12式地対艦ミサイル」を擁する陸上自衛隊・対艦ミサイル連隊は、MDTFの中核戦力となる。リムパックでは実弾発射訓練が実施された
    目標判別能力と命中精度に優れた射程200㎞の「12式地対艦ミサイル」を擁する陸上自衛隊・対艦ミサイル連隊は、MDTFの中核戦力となる。リムパックでは実弾発射訓練が実施された

    ネメシスは射程250㎞の対艦ミサイル2発を無人車両に搭載したシステムで、輸送機C-130や輸送ヘリコプターCH- 53、エアクッション型揚陸艇「LCAC」で離島に展開でき、丘陵地などの高台にも配備しやすい。また、射程2500㎞の巡航ミサイル「トマホーク」を搭載したバージョンも展開できる。

    ここに、米陸軍の「155㎜ M- 777榴弾(りゅうだん)砲」(射程40㎞)、「MLRS 240㎜多連式ロケット砲」(射程60㎞)、「HIMARS(ハイマース)」(射程80㎞)といったミサイルシステム、「ATACMS(エイタクムス)」(射程300㎞)、「PrSM(プリズム)」(射程500㎞)、トマホーク、極超音速中距離ミサイル「LRHW」(射程2775㎞)といったミサイル戦力も加わり、中国艦のレーダー、センサー、対空ミサイルを破壊する。

    米空母から発艦する戦闘機FA-18。中国軍の対艦ミサイルを迎撃するため、対空ミサイルSM-6を航空機に搭載できるよう改造した対空ミサイル「AIM-174B」(下)を装備
    米空母から発艦する戦闘機FA-18。中国軍の対艦ミサイルを迎撃するため、対空ミサイルSM-6を航空機に搭載できるよう改造した対空ミサイル「AIM-174B」(下)を装備
    水陸両用戦訓練で上陸した部隊を上空から援護する攻撃機A-10。リムパックでは敵艦攻撃、さらには敵役までもこなす活躍だった
    水陸両用戦訓練で上陸した部隊を上空から援護する攻撃機A-10。リムパックでは敵艦攻撃、さらには敵役までもこなす活躍だった

    実際には、米軍や自衛隊は中国軍による台湾侵攻の兆候が出始めたら、先に動き始める。艦艇は侵攻開始が予想される日の数週間前から、輸送機は72時間前から。この動きを抑止力として、侵攻を思いとどまらせるためだ。

    その抑止を中国が無視して侵攻を開始した場合は、リムパックで実演したB-2に加えてステルス戦闘機F- 35A、その空母搭載型F- 35Cによるクイックシンク攻撃、陸自12式と米海兵隊ネメシスなどによる各島からのミサイル・火砲攻撃を開始。撃ち漏らした中国艦には米空軍攻撃機A- 10、米陸軍攻撃ヘリAH- 64アパッチによる掃射攻撃が加わる。

    ■それでも戦術・戦略の数は中国側が優位

    中国が侵攻すれば、台湾は無傷では済まない。しかし一方で、諸外国は台湾にいる自国民の保護・退避のために、軍の派遣を迫られる。リムパックで環太平洋地域の多国籍軍が見せた、着上陸から市街地を制圧するMOUT訓練は、その可能性を具体的な形で中国に示す意味合いがあったのだと思う。

    この水陸両用戦訓練で、海上自衛隊のおおすみ型輸送艦「くにさき」から発艦したLCACで海浜部に上陸したペルー海兵隊は、軽装甲車両で内陸部へ移動し、ヘリの降着地点を確保。その後、インドネシア、トンガ、スリランカ、フィリピン、マレーシア、韓国、メキシコ、そしてアメリカの各軍がヘリやAAV(強襲上陸戦闘車)で上陸し、敵軍を掃討するために市街戦へとなだれ込んだ――。

    海自輸送艦「くにさき」(上)から、ペルー海兵隊の人員と軽装甲車両を載せたLCAC(エアクッション型揚陸艇、下)が発進。多国籍軍による海浜部への上陸作戦だ
    海自輸送艦「くにさき」(上)から、ペルー海兵隊の人員と軽装甲車両を載せたLCAC(エアクッション型揚陸艇、下)が発進。多国籍軍による海浜部への上陸作戦だ

    ただし、現実には事がそううまく運ぶとは限らない。中国と台湾はあまりにも距離が近く、戦術・戦略のカードの枚数は、米軍・自衛隊側よりも、中国軍のほうが圧倒的に多いからだ。

    また、アメリカ政府としても、この問題について判断を誤ると政治的に取り返しのつかない事態となる。中国はその政治的な弱点を突いて、まったく別の形で"電撃作戦"を行なう可能性がある。

    例えば、台湾海峡に艦艇を出すのではなく、いきなり数千発の地対地ミサイルを叩き込み、台湾の陸海空軍基地を一気に壊滅させる。同時に、あらかじめ台湾に潜入していた中国軍の特殊部隊が動き出し、都市部のテレビ・ラジオ局を占拠して情報をジャックする―といったシナリオだ。

    こうした手に出られたら、米軍がMDTFというカードを使うチャンスはない。今後、政治・軍事両面での駆け引きはどうなっていくのか。

    撮影・取材・文/柿谷哲也 協力/小峯隆生 写真/米海軍 米陸軍

    米空軍のステルス戦略爆撃機B-2は今回がリムパック初参加。艦艇を一撃で沈める新型爆弾「クイックシンク」を投下する


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【国防】多国間軍事演習・リムパックで見えた自衛隊&米軍の最新「対中国戦略」】の続きを読む



    この問題に対して、政府はどんな対策を講じているのでしょうか。技術的な面だけでなく、法律や制度の側面でも改善が必要なように思います。

    オリンピックでは違反行為として制裁が下った相手チームの「ドローンでの視察」。軍事目的ではむしろ戦法として常識になりつつある行動です。悪意の有無にかかわらず、小さな飛翔体による「のぞき見」が世界で大問題になっています。

    ついに五輪でもドローン使った情報収集が問題に

    パリオリンピックで「ドローン」による偵察行為が問題になっています。サッカー予選一次リーグA組のカナダ女子代表がドローンを使い、対戦相手の練習を偵察したとして、2024年7月27日、国際サッカー連盟は同チームの勝ち点6を剥奪処分に。同チームは処分の取り消しまたは軽減を求めたものの、スポーツ仲裁裁判所は31日に要求を却下したと発表しています。

    スポーツの国際大会におけるドローンを用いた偵察行為が大々的に問題になったのは今回が初めてですが、軍事の分野では問題行為どころか、地上戦を優位に進める戦法としてドローンが使用されつつあります。

    7月5日付の「Forbes」は、ロシアが7月上旬にウクライナの空軍基地へ偵察用ドローンを侵入させ、そのドローンが収集した情報を基に弾道ミサイル「イスカンデル」で攻撃を加え、ウクライナ空軍の戦闘機や戦闘ヘリを無力化したと報じています。

    具体的に戦闘に大きな影響を与えた例はまだそれほど多くはないものの、国内では5月、海上自衛隊横須賀基地へ停泊していたヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を上空から撮影したと思しき動画が中国のSNSに拡散され、物議をかもした件が記憶に新しいです。

    日本政府は小型無人機等飛行禁止法を施行し、横須賀基地をはじめとする重要施設上空のドローンの飛行を禁じています。しかし、違反に対する罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金という軽微なものですし、そもそも自衛隊警務隊の警察権は平時には民間人に適応できないため、重要施設上空を飛行するドローンの取り締まりは、警察に委ねるしかないというのが現状です。

    有事はもちろん平時においても、正当な理由があれば自衛隊によるドローンの無力化もできなくはないのですが、ドローンの接近を察知するための手段、無力化するための手段ともに、整備は十分とは言えません。

    対ドローン 自衛隊はまだ能力不足?

    確かに、航空自衛隊の基地などの重要拠点には、地上にレーダー網が張り巡らされていますが、レーダーは高高度を高速で飛行する航空機やミサイルの察知を主目的に開発されており、低高度を低速で飛行するドローンのような目標の接近の察知や補足には適していません。

    もちろん防衛省・自衛隊も手をこまねいているわけではなく、航空自衛隊のレーダーの一部を、ドローンの接近も察知できるよう改修を進めているという話もありますし、陸上自衛隊の駐屯地などに、ドローンの飛行音を探知して接近を察知するシステムの配備も進めているようです。しかし、前述したようにその数は少なく、能力的にも不足しています。

    アメリカのノースロップ・グラマンは、レーダーや光学・赤外線センサーなどの複数のセンサーを組み合わせて接近してくるドローンなどの目標の接近を早期に察知し、目標情報を高度なAI(人工知能)によって処理するシステム「M-ACE」を実用化しています。これは、必要に応じて機関砲など迎撃用の火器で撃墜し、無力化も行えるものです。

    ほかに、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」も類似機能を備えています。こうした実績のある外国製システムを導入して、重要拠点に配備するくらいのことをしないと、自衛隊がドローンの接近を早期に察知して護りを固める能力を早期に獲得することは、困難なのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

    ドローンにミサイル使う? ついて回るコスパ問題

    ドローンを無力化するための一番有効な対抗手段はミサイルなのですが、いかんせんミサイルはドローンのような安価な目標の無力化には費用隊効果の面で適していませんし、砲弾や銃弾などに比べて製造に時間もかかるため、必要な時に必要な数が揃わないという問題もあります。

    ドイツなどからウクライナに供与された「ゲパルト」対空戦車がロシアのドローンを多数撃墜したことから、日本でもゲパルトの同種装備品である87式高射機関砲でドローンを無力化すれば問題ないのではという声もネット上などにはあるようですが、北海道に集中配備されている87式高射機関砲をドローン対策のために分散配備するなど、とうてい現実的とは言えません。

    対ドローンに、日本では具体的な動きも進み始めています。

    防衛省は7月16日に、高い出力のマイクロ波を照射してドローンを無力化するシステムの共同研究を行うための事業取り決めを、アメリカとの間で締結しています。

    また6月17日付の時事通信は、同省が3月に、レーザーでドローンなどを無力化するシステムの取得契約を三菱重工業、川崎重工業、東芝インフラシステムズの3社と締結したと報じています。これは陸上自衛隊の高機動車などに搭載する想定です。

    高出力マイクロ波やレーザーを用いるドローン無力化システムは、実用化までにはまだ時間を要すると思います。このためこれら技術の研究開発を進めて熟成させながら、法整備と、M-ACEのような既存のミサイルや機関砲と組み合わせることのできるシステムの整備を並行して進めていく必要があると筆者は思います。

    対ドローン能力の高さにより再評価された「ゲパルト」対空戦車(画像:在ウクライナ ドイツ大使館)。


    (出典 news.nicovideo.jp)

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