下水から食用油を作り、腐った食材は"下痢止め薬"で味付け…海外メディアが報じた中国料理店の呆れた実態 - Yahoo!ニュース 下水から食用油を作り、腐った食材は"下痢止め薬"で味付け…海外メディアが報じた中国料理店の呆れた実態 Yahoo!ニュース (出典:Yahoo!ニュース) |
■食用油と燃料油を同じタンクローリーで運ぶ
中国で、食の安全をめぐる懸念が再燃している。今年7月、食用油と燃料油を同じタンクローリーで搬送していたことが判明し、中国国内の消費者に衝撃を与えた。過去には下水から油分を汲み取ってレストランの料理に使用したり、腐った食材に下痢止めとして使われる薬を混ぜて提供することで期限切れ食材の使用の発覚を防いだりと、衛生環境をめぐる混乱が続いている。
中国で食用油と燃料油を同じタンクローリーで輸送した事件は、食品安全に対する深刻な懸念を引き起こした。国営紙「北京日報」が詳細な調査報道を掲載したことで注目を集めたほか、英ガーディアン紙など欧米メディアも相次いで報じている。
北京日報の記者は潜入取材を行い、石炭燃料を積んだタンクローリーの運転手にインタビューを実施した。運転手は中国西部の寧夏(ねいか)から東海岸の河北省秦皇島(しんこうとう)まで、1290キロ以上を走ったという。
運転手は記者に「空の車両で戻ることは許されていない」と話した後、タンクローリーを洗浄することなく、河北省の別の施設へとタンクローリーを走らせた。32トン近い大豆油を積み込むためだ。
■「公然の秘密」になっていた
このような運用はめずらしいことではなく、他のタンクローリーも同様の輸送を行っていたという。この運転手は北京日報に対し、食品と化学燃料を同じタンクローリーで清掃せずに輸送することはよくある「公然の秘密」であると話している。
中国の規定では、食用油と燃料油の輸送に、異なるタンクローリーを使用すると定められている。しかし、調査報告によると、これらの規定は無視されることも多く、検査も不十分であるという。燃料用であることを示す標識を白い紙で覆い、食用油を輸送していると報じられている。
ガーディアン紙はこの問題が、中国国民の「激怒」を引き起こしたと報じている。ブルームバーグは、事件を受け、中国糧食備蓄管理総公司が製造する「金鼎(ジンディン)」ブランドの食用油のネット販売が一部で停止されたと報じた。
ジョンズ・ホプキンス大学の政治学准教授ジョン・コシロ・ヤスダ氏は、ドイツ国際放送局のドイチェ・ヴェレに対し、「中国は食品システムの改革の初期段階にある」と述べている。中国の食品安全問題は一朝一夕で解決できるものではないとヤスダ氏は指摘する。
■下水に浮いた油を汲み取り、料理店で2年間使い続けた
過去の食品スキャンダルが記憶に新しい中国では、消費者の不安が高まっている。2008年には、汚染粉ミルクにより6人の乳児が死亡し、30万人以上が被害を受けた。また、2013年には、上海の飲料水の水源である黄浦江で1万6000頭以上の死んだ豚が見つかった。
下水に浮いた油を汲み取り、料理店で2年間使い続けた衝撃的な事件もある。2020年、再生廃油から食用油を精製していた問題が発覚した。再生廃油から有害な食用油を製造した「下水油」スキャンダルだ。
下水油とは、レストランのフライヤーや下水、そして排水から油脂分を分離・回収するグリーストラップから回収された廃油をベースに、再加工して作られる油を意味する。元となる油は、下水道のマンホールの蓋を開け、長い棒を差し入れるなどして汲み取られる。
この油には発がん性物質やその他の毒素が含まれている。本来は工業用油として使用されるべきところ、北京を拠点とする英字メディアのベイジナーの報道によると、露天商や小規模レストランに販売されていた。
■コスト削減のために下水油を使用するケースも…
同年、山西省の人民裁判所が下した刑事事件の判決によると、陝西省の楡林市にある小龍坎火鍋のフランチャイズ店が、鍋のスープのベースとして下水油を使用していた。中国国営英字紙のグローバル・タイムズは、同店が2年間にわたって2トン以上の下水油をスープに使用していたと報じている。有害な原材料の製造、販売、流通に関与したとして、5人が起訴された。
小龍坎は2014年創業の人気の四川風火鍋チェーン店で、中国全土で急速に店舗数を拡大している。中国本土に1000店舗以上を構え、海外では東京(新宿・上野)、メルボルン、ニューヨークなどの都市にフランチャイズ店を展開している。
北京日報の記者が当時、小籠館食品安全ホットラインに電話したところ、電話口のスタッフは、起訴されたレストランとのフランチャイズ契約を終了したと説明した。さらに、小籠館飲食管理有限公司は謝罪声明を発表し、2019年の調査開始以来、当局に全面的に協力してきたと述べている。
下水油の使用は、この店舗に留まらない。専門家はベイジナーに対し、複数のレストランでコスト削減を目的として下水油が使用されているケースがあり、こうした非合法なビジネスに多くの業者が関与していると説明している。
■期限切れの食材でも「下痢止めを混ぜれば問題ない」
食品スキャンダルは尽きない。昨年には、期限切れの食材に下痢止めとして用いられる薬を混ぜて提供していたことが発覚した。江蘇省南通市のレストランで発生したこの事件は、同店の2人のシェフが関与していた。古い食材による食中毒を防ぐため、ゲンタマイシン硫酸塩を料理に混ぜていたという。
中国・国営英字紙のグローバル・タイムズによると、ゲンタマイシン硫酸塩は処方薬の抗生物質であり、現地で下痢止めとして使われることがある。同紙によると昨年9月、このレストランの従業員が自治体のホットラインに通報し、ゲンタマイシン硫酸塩注射薬を食品添加物として使用していると告げた。
これを受け、捜査機関がレストランを捜索したところ、厨房のゴミ箱から使用済みのゲンタマイシン硫酸塩の箱4つが発見された。シェフのオフィスからは、未使用の箱101箱が押収されている。レストランで提供されていた料理をサンプリング検査した結果、ゲンタマイシン硫酸塩が含まれていることが確認された。
薬局の販売体制も問題視されている。ゲンタマイシン硫酸塩は聴力や腎臓に障害を引き起こす可能性があり、特に子供や高齢者は問題を生じやすい。処方薬であり、薬局が処方箋なしに販売することは許可されていない。
■中毒性のあるアヘンでリピート客増をもくろむ
しかし、香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙によると、このレストランの従業員は処方箋なしにこの薬を購入できていたという。事態を受けて地元当局が335の飲食店と508の薬局を調査したところ、複数の薬局が長期間にわたってゲンタマイシン硫酸塩を違法に販売していたことが明らかになった。120の薬局に業務改善命令が出されている。
今年4月23日、2人のシェフはそれぞれ懲役2年と1年6カ月、執行猶予2年の判決を受けた。16万元(約330万円)の罰金が科されている。
別の目的で、添加物を混ぜ込んだ事件もある。米CNNは2016年、アヘンケシ由来の成分を麺に使用していたとされる食品スキャンダルを報じた。中国国家食品薬品監督管理局は、35軒のレストランを調査中であり、そのうち5軒はすでに起訴されたと発表した。こうしたレストランの料理から、アヘンケシから精製されるモルヒネとコデインが検出された。
中国ではケシの添加が2013年から禁止されているが、CNNによると、ケシの粉末を食品に振りかけることは珍しくないという。英BBCによると、北京の人気レストランチェーン「フーダ・レストラン」も調査対象となっている。同社のゼネラルマネージャーであるフー・リン氏は、同社が意図せずアヘンを含む調味料を購入した可能性があると説明したが、それ以上の詳細な説明を避けた。
2014年にも、中毒性によりリピート客を得ようと考え、アヘンを麺に混ぜた麺料理店の店主が、10日間勾留されている。客の26歳男性が麺を食べた後、偶然に警察官の麻薬検査を受けたことで発覚した。
■猫500匹をレストランに販売しようとした男
中国の食品業界をめぐっては、身近な動物を食材として販売しようとした例も報じられている。2017年の中国・江蘇省九江で、ある男が500匹の猫をレストランに売ろうとしていた事件が発覚した。
男はスズメやペットの鳥をおとりに使い、野良猫やペットの猫をおびき寄せては捕まえていたと報じられている。多くの猫がケージに入れられ、小型トラックの荷台に詰め込まれていた。米ワシントン・ポスト紙は発見当時、暑さで死にかけの状態だったと報じている。男は常習的に、1匹あたり30元(約620円)ほどで猫を売っていたという。別の男性が、自分のペットが盗まれたと警察に訴えたことで逮捕につながった。
このニュースは中国のポータルサイト「網易(Netease)」で激しい議論を巻き起こし、4万件以上のコメントを集めた。コメントの多くは、猫を食べるということよりも、ペットを盗むという行為に憤りを示すものであった。動物愛護団体は同紙に、中国では毎年1000万頭以上の犬と400万頭ほどの猫が食用として殺されていると話している。
■ネズミ、キツネ、ミンクが“羊肉”に
猫ではなく、ネズミを食肉として出荷していた事件も過去に起きている。2009年から2013年まで、ネズミ肉を羊肉として販売していた大規模な食品偽装事件が起きていた。
中国公安部の発表によると、ネズミ、キツネ、ミンクの肉が羊肉として偽装され、上海や江蘇省の無錫市で販売されていた。事件の発覚後、10トン以上の偽装肉が押収されている。押収された肉は、ゼラチン、カルミン酸、硝酸塩が混ぜられ、味や食感を羊肉に似せて加工されていたという。英BBCによると、900人以上が逮捕される大規模なスキャンダルとなった。
問題の偽装肉は、主に山東省から出荷されていた。食品安全の専門家である復旦大学の李曙光氏は、グローバル・タイムズ紙に、「キツネやミンクの肉は、毛皮のために飼育されている農場から来ている可能性が高い」との見方を示している。山東省の農場では、毛皮をはぐ目的でキツネやミンクが飼育されており、その肉が使用されていた可能性が高いという。
山東省医科大学の研究では、一帯の農場で飼育されているミンクの肉から、人間にとって有害な細菌が大量に検出されている。さらに、問題の農場では、多くのミンクが感染症で死亡している。
中国農業大学の食品安全専門家である侯才元氏は、グローバル・タイムズ紙に、「ネズミ、キツネ、ミンクの肉を販売することは違法であり、これらの肉には食品検査基準がない」と危険性を指摘している。
別の食品安全の専門家は、大規模な屠殺場やスーパーマーケットではトレーサビリティ(出所の追跡手段)が確保されている一方、「問題は、規制されていない食品市場から肉を購入する小規模な露店やレストランにある」と述べる。
■1970年代の肉を密輸していた事件
肉自体は牛や豚であったものの、およそ半世紀前の大幅に古い肉が流通していることもある。2015年6月、中国の税関当局が14の省と地域で行った大規模な取り締まりの結果、1970年代の肉が密かに流通していることが発覚した。
湖南省の長沙税関は同年6月1日、20人のメンバーからなる2つの密輸団を摘発し、800トンの冷凍肉を押収したと発表した。摘発された密輸肉の多くは賞味期限が切れており、40年以上前のものも含まれていた。一部は70年代に梱包された肉であった。
税関職員の張氏は、チャイナ・デイリー米国版に、「その製品(古い肉製品)はコンパートメント全体を完全に埋め尽くしていた。臭くて、ドアを開けたときに吐きそうになった」と語る。
問題の肉は、摘発されなければレストランや小売店、スーパーマーケットへ出荷される予定であった。長沙税関の反密輸局副局長である楊波氏は、米CNNに、「密輸された肉製品は検査されておらず、鳥インフルエンザや口蹄疫などのウイルスを含む可能性があるため、非常に危険」な状態であったと述べている。
■本当に「単発の出来事」なのか…
不正な肉を取引する密輸業者は、コストを削減するために冷蔵車ではなく普通の車両を使用することが多く、その結果、肉は何度も解凍されることがある。腐敗が進みやすくなり、消費者に重大な健康リスクを引き起こすおそれがある。専門家はCNNに対し、冷凍肉に一度解凍された痕跡が残らない限りは、消費者が新鮮な肉と古い肉を区別することは難しいと語る。
期限切れの肉は発覚しにくく、身近なフードチェーンも食品汚染の影響を受けたことがある。2014年には、上海の福喜食品有限公司が賞味期限切れの肉を使用していたことが明らかになった。同社はマクドナルドやケンタッキーフライドチキンなど、大手ファストフードチェーンに製品を供給していた。
この問題は上海のドラゴンTVが放送した潜入調査報道によって発覚したもので、番組では同社の従業員が期限切れの肉を新鮮な肉に混ぜ込んでいる様子や、マクドナルドの検査官に嘘をついている場面が映し出された。
米CBSニュースによると、調査報道が放送された直後、上海の当局は問題の工場を閉鎖した。福喜食品は米OSIグループの子会社だが、OSIはこの報道に関し、事件は常習的ではなく「単発の出来事」であるとの認識を示しつつ、責任を認めている。
■歴史ある中華料理の汚点となっている
食品は体内に直接取り込まれることから、徹底した安全性が求められる。食材のプロが集う現場で、安全性軽視が暗黙の慣行となっていることは非常に残念だ。
コスト削減のため下水から油をくみ上げたり、傷んだ食材を隠すために下痢止めを混ぜて客に提供したりと、常識で考えられない行為が日常的に行われている。毎年のように不正が発覚しては報じられている現状を鑑みるに、明るみに出ていない不衛生な慣行は、まだまだ広く行われていると考えざるを得ない。
中華料理は紀元前2000年頃に端を発し、現在までに4000年以上にわたり改良を重ねてきたと言われる。古代から秦・漢時代、唐・宋時代を通じて発展を遂げ、20世紀以降に世界に広まり独自の進化を各地で遂げた。その総本山とも言うべき中国で、食の安全が脅かされている。世界に誇る食文化の中枢であるだけに、出された料理を安心して口に運べる環境作りが求められよう。
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フリーライター・翻訳者
1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。
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(出典 news.nicovideo.jp)
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