太陽系で一番遠い惑星「海王星」のさらに向こうには、「エッジワース・カイパーベルト」という氷や岩石が円盤状に集まった領域がある。
近畿大学と国立天文台の天文学者チームが行ったシミュレーションによると、この領域には未知の惑星があるかもしれないそうだ。
「カイパーベルト惑星」と呼ばれるその惑星は、地球の1.5~3倍の大きさで、海王星の6~16倍も遠くにあると推測される。
このカイパーベルト惑星が本当にあるのだとすれば、それが太陽系が誕生してからこれまでずっと、海王星より遠くの領域にある天体の軌道に大きな影響を与えてきたと考えられるという。
現在の太陽系は、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と8個の惑星があることが知られている。
では、こうした惑星の数は、太陽系が誕生した当時から現在まで、ずっと同じだったのだろうか?
じつはこの疑問については、はっきりした答えは出ていない。むしろ大昔はもっとたくさんの惑星があった可能性すら指摘されている。
そんな生まれてまもない太陽系の惑星の姿を知りたければ、「エッジワース・カイパーベルト」(以下、カイパーベルト)にその痕跡が残されているかもしれない。
[もっと知りたい!→]地球はどうやってできたのか?太陽系最遠の小惑星アロコスが教えてくれること(米研究)
カイパーベルトとは、氷や岩石が円盤のように集まった領域のことで、太陽から一番遠い惑星である海王星のさらに向こう側にある。
こうした氷や岩は、かつて太陽系のはずれで惑星が作られたときの名残だと考えられている。
そんなカイパーベルトには面白い特徴がある。
それは太陽から75億キロ以上離れたところ(ちなみに海王星は45億キロ)にある遠方カイパーベルト天体が、なにやら重力の影響を受けて、不思議な軌道を描いていることだ。
ではその重力の発生源は何なのか? それこそが未知の惑星「カイパーベルト惑星」かもしれないのだ。
新たなシミュレーション技術でカイパーベルト惑星の存在を示唆
そこに本当に惑星はあるのか?
近畿大学のソフィア・リカフィカ・パトリック氏と国立天文台の伊藤孝士氏は、この謎を解くために、そこに惑星があると仮定してシミュレーションを行なってみることにした。
およそ45億年前の太陽系の初期には、4つの巨大惑星が存在したと考えられている。
そこで今回のシミュレーションでは、まずこの4つの巨大惑星の重力のみを考慮して、カイパーベルトの動きを調べてみた。
だが、このシミュレーションでは現実のカイパーベルトの様子を上手に再現することができなかった。
そこで今度は「カイパーベルト惑星」をくわえてシミュレーションが試された。するとこちらのシミュレーションでは、現実のカイパーベルトを上手に再現できたのだ。
4つの巨大惑星のほか、カイパーベルト惑星が存在すると仮定して、45億年分のシミュレーションを行った結果。現実のカイパーベルト天体の軌道によく一致している / The Astronomical Journal (2023). DOI: 10.3847/1538-3881/aceaf0
このことから、カイパーベルトにはまだ知られていない惑星が存在する可能性があると研究チームは主張する。
仮にカイパーベルト惑星が本当に存在するのだとすれば、それは地球の1.5~3倍ほどの質量で、太陽から200~500au(1auは太陽と地球の平均距離)の距離を30度の傾斜軌道で公転していると考えられるという。
このカイパーベルト惑星はその重力によって、太陽系が誕生してから今までずっと、海王星より遠方にある天体の軌道に影響を与えてきたと考えられるそうだ。
この研究は『The Astronomical Journal』(2023年8月25日付)に掲載された。
References:Japanese astrophysicists suggest possibility of hidden planet in the Kuiper Belt / 近畿大学プレスリリース / written by hiroching / edited by / parumo
(出典 news.nicovideo.jp)
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