ワグネルの乱:早くも米国で取り沙汰され始めたプーチンの後継者 ロシア ... - JBpress ワグネルの乱:早くも米国で取り沙汰され始めたプーチンの後継者 ロシア ... JBpress (出典:JBpress) |
ロシアの民間軍事会社ワグネルが武装蜂起した時、米ワシントンの政府関係者は、ロシア政府が保有する核兵器の行方が何よりも気がかりだったという。
国防総省の元高官だったエブリン・フォーカス氏は米メディアの取材に、「今回、ロシアで内乱があった時、すべての核施設を責任者がしっかり管理し続けられるかが最も心配だった」と述べている。
というのも、核兵器が反乱軍の手に渡った場合、地球のかなりの地域を「消し去る力」が敵方に渡ることを意味するので、米政府関係者は神経を尖らせていた。
ただ、ワグネルのエフゲニー・プリゴジン氏の反乱は最後の一線で立ち止まったため、安堵したという。ロシアの核体制に変化はなかった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「プリゴジンを潰す」とまで発言したが、実際は発言の数時間後にプリゴジン氏と取引をして事態の収拾にあたった。
今回のワグネルによる反乱劇で見えてきたものがある。
それはプーチン氏の政治力が低下してきたのではないかということだ。
すでに米政府内で語られ始めているが、ワグネルの台頭を短期間だけだが許してしまったことに、将来への憂慮が増した。
かつてのプーチン氏であれば、短期間でさえこうした反乱は許さなかったはずだ。
ニューヨーク・タイムズ紙も6月27日、「プリゴジン氏による短期間の反乱は、プーチン氏の権力基盤が就任以来、かつてないほど脆弱であることを証明した」と書いた。
アンソニー・ブリンケン米国務長官はNBCテレビの番組「ミート・ザ・プレス」に出演して、次のように語った。
「ロシアのファサード(外観)に亀裂が入ったと思う。ワグネルがウクライナから出てきて、モスクワに向かったということ自体が異常だ」
「(中略)プーチン氏がこれから数週間、また数か月のうちに対処しなくてはいけない問題がいろいろと浮上してきた」
知人の米外交専門家も次のように述べる。
「プーチン政権というのはこれまで、無敵という認識のうえに築かれた独裁政権だった」
「それが短期的であったにせよ、武装集団によって脅かされた。これはプーチン氏にとっては極度の屈辱にほかならない」
今回の反乱は、ロシア国家のゆっくりとした衰退を世界に示すことになったのではないか。
プーチン氏は民主主義や市民主義に反する軍事拡張主義を追求してきた。これは強さの表れではなく、絶望の表れと解釈してもいい。
米専門家に取材を進めると、見えてきたことがある。それは「プーチン後の世界」がすでに語られていたことである。
外交専門家の間では、プーチン氏から次のトップに代替わりをした後、「深く危険で予測不可能なロシアになる」という事案が取り沙汰されているという。
もちろん現段階では予測の域を出ないのだが、欧米諸国だけでなく、日本でも「プーチン後の世界」に備えておく必要があると告げられた。
米首都ワシントンに本部を置く欧州政策分析センター(CEPA)の安全保障問題を担当するエドワード・ルーカス氏も言う。
「この点(プーチン後)については多くの国で準備ができていないし、考えてもいない。我々が直面するジレンマもあるが、いますぐにでも考える必要があるだろう」
ロシアとウクライナが1年以上も戦闘状態にある点も考慮する必要がある。戦争が長引けば長引くほどプーチン政権は弱体化するはずで、何が起きても不思議ではない。
ましてやウクライナに侵攻してから1年以上を経ているにもかかわらず、プーチン氏はいまだにウクライナを掌握できていない。
両国の軍事力を総合的に比較した時、両国には比較にならないほどの開きがあり、ロシアがすでに圧勝していてもおかしくない戦力であることが分かる。
例えば、常備兵役と予備役を含めた兵士数は、ロシアが約290万であるのに対し、ウクライナは約110万。
戦車等の戦闘車両はロシアの約1万6000両に対し、ウクライナは約3300両。戦闘機もロシアの約1400機に対しウクライナは約130機といった具合で、ロシアが圧勝していても不思議ではない。
いまは欧米諸国がウクライナの後ろ盾になっていることもあるが、ロシアの圧勝というシナリオは遠のいた。
取材をしていくと、米軍関係者の中から「(中国の)習近平国家主席がプーチン氏にウクライナ戦争を終わらせるように働きかけるべきだ」との声もあった。
戦争を継続させるということ自体、経済的にも政治的にも大きな負担になるので、ロシアという国家の成長を真に憂慮するのであれば、戦争はすぐにでも終了させた方が得策のはずである。
だがプーチン氏にはすぐに戦争を終わらせる意図はなさそうだ。
ただ、もしプーチン氏が政権の座から引きずり降ろされたらどうなるのか。
いまよりも国際関係はさらに危険が伴った混沌とした状態になることが予想される。
「プーチン政権よりも残忍で、抑制の利かない強硬派にとって代わられる可能性もある」との見方もあり、ウクライナ戦争がさらに長期化する可能性もある。
プーチン氏が政権の座に居座り続けたとしても、欧米諸国を味方につけたウクライナが今後、優勢な立場を堅持していくことも十分に予想される。
そうなると、プーチン氏はコーナーに追い詰められることになり、プーチン氏はウクライナ市民にいままで以上に無慈悲な攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
ウクライナ戦争がいますぐプーチン政権の崩壊につながる可能性は低そうだが、「プーチン後の世界」の駆け引きは、想像以上に混沌としていることは間違いなさそうだ。
「プーチン後の世界」としては、プーチン氏に代わる人物の名前がすでに何人か挙がっている。
筆頭がミハイル・ミシュスチン首相で、さらに国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ社長やイーゴリ・シュワロフ元副首相などの名前も出ている。
いずれにしも、プーチン氏がロシアのトップに鎮座しているかぎり、すでに「終わりの始まり」がスタートを切っていると考えた方がいいかもしれない。
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(出典 news.nicovideo.jp)
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