日本経済新聞 2022年8月31日 18:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC294OW0Z20C22A8000000/
2022年8月29日、中国中央ラジオ局は、近ごろ中国各地で「怪魚」が数多く目撃されていると報じた。
同局は、河南省汝州市の中央公園にある湖で1カ月あまり前に「怪魚」が出現し、当局が調査したところ外来種のアリゲーターガーであることが判明したと紹介。この1カ月で北京、湖南、広西、江蘇、青海、寧夏、雲南、山東などの省・市・自治区の住宅地や公園でも相次いでアリゲーターガーが目撃されており、他の魚や子どもにかみついたとの報道も出ていると伝えた。
その上で、アリゲーターガーについて北米原産の大型肉食淡水魚で、成魚の体長は1.5メートルに達すると説明。繁殖能力が高く、毎年数万個の卵を生むとしたほか、凶暴な性格で水中生物をほとんど捕食してしまう上、全身が硬いうろこで覆われているために目立った天敵がいないと紹介した。
そして、通常は熱帯に生息するアリゲーターガーが中国各地の住宅地などで見られることについて、中国水産科学研究院珠江水産研究所の顧党恩(グー・ダンエン)研究員が「観賞用として中国に連れてこられたもの。安価で手に入れやすく、正規のルートで販売していれば法律にも抵触しないので人気があるものの、成長ペースが速く、多くの人が飼育できなくなって捨ててしまう」と解説したことを伝えた。
また、「アリゲーターガーは食べられるのか」とし、ネット上では「アリゲーターガーを捕獲して、油で揚げて食べた」という冗談交じりの書き込みが見られると説明。これに対し専門家が「アリゲーターガーの卵には猛毒があり、冗談でも食べたなどと言ってはいけない」と指摘するとともに、飼えなくなった場合には大学や研究機関、関係当局に処分を依頼し、住宅地や公園で見つけた場合は速やかに当局に連絡するよう呼び掛けたとした。(翻訳・編集/川尻)
◆課長がいないと嘆く企業
人材不足、人手不足という言葉がここ数年、そこかしこから聞こえてくる。特に深刻なのは40代の生え抜きや優秀な人材確保がままならないことだ。ある通信会社の幹部は、現場の苦しいやり繰りについて話してくれた。
「中間管理職のなり手が不足して、40代の課長クラスが圧倒的に不足している。じゃあ、優秀な若手を登用すればいいじゃないかと思われるが、しっかりとカネと人をマネジメントして回していくには年齢と経験値が必要。管理職候補の採用も積極的に行っているのだが、なかなか優秀な人とは条件面で折り合いがつかない。若手の採用と違って年収が高いし、管理職ともなれば『とりあえず採用してみるか』となれないのがキツい」
この会社では、管理職になるためにあった昇進のハードルも大きく下げ、社内の人材確保にも力を入れているという。
「ウチの会社では管理職になるための昇進試験以外にも、管理職には転勤など条件があるが、この条件を大幅に緩和して転勤条項を撤廃した。出産などを理由に転勤したくないと昇進試験を受けずにいた、勤続年数の長い女性社員や優秀な30代後半の社員にも積極的に試験を受けてもらって、管理職になってもらうように話をしている」
その結果、女性や若手の管理職も増えて社内の雰囲気は良くなったと幹部は語る。しかしそれでも「薄氷を踏むが如き人事」だと幹部は嘆く。
◆就職氷河期の買い手市場が40代不足を招いた
では、こうした状況を転職市場はどう見ているのだろうか。大手転職エージェントの担当者は40代が置かれた状況についてこう解説する。
「40〜45歳くらいの世代は2000年代前半の就職氷河期世代と言われています。この年代の方々は新卒の求人倍率が1倍を切る状況下で就職しています。他の世代と比べて狭き門を突破したわけですから、優秀だったとも言えるでしょう。しかし、優秀な人は待遇のいい会社ややりたいことのできる会社に移っていきますし、やる気のある方は起業するという選択をすることもあります。また、働き方が多様化し始めたのもこの年代です。企業に属さずにフリーランスや業務委託などで働く方が多いのも今の40代の特徴です。
企業側の『40代がいない』という理論は、『自分たちと同じ規模の会社に長く勤めて職歴を積んできた40代がいない』ということです。ザックリした数ですが、20代の人口は1200万人。それに対して40代の人口は1800万人いる。数字だけ見てもわかるように、40代自体はいるんです。年功序列的な視点でしか人材を判断できないから『40代が足りない』と考えてしまうのです。結局、大手企業は40代以上歓迎とか、実績や経験を重視と表向きでは言いますが、正社員として長く勤めてきたという“保険”が欲しいんです」
正社員であることも実績の一つと言われればそれまでだが、そんなに正社員が偉いのかとも思えてしまうのだが……。
◆若手が活躍するベンチャーが40代を欲しがるワケ
こうした大手企業だけでなく、若手が活躍するイメージの強いベンチャー起業でも40代不足は深刻だという。あるネット系広告代理店のベンチャー起業の幹部に話を聞いた。
「ウチの会社は社長含め幹部5人で15年前に立ち上げたんです。設立メンバーはその当時みんな30代だったので、自分たちよりも年上の方はほとんど採用に応募してきません。ベンチャーは若いコは集まるので、気がついたら幹部以下は20〜30代前半の社員といういびつな年齢構成になっていました。こうしたベンチャーは多く、経験があってマネジメントができるベテランがいないと嘆く声は多いんです」
とはいえ、条件面、待遇面では大手には敵わない。そこで思い切ってこの会社では採用基準を見直したところ、人材確保に成功したという。
「まず、完全に実績重視で副業もOK。フリーランスや自営している方の応募も歓迎としたところ、そういった層からの応募がかなり増えました。しかし、実際に入社した後、最初は自分よりもかなり年下の上司の下で働くこともある点が社内では不安視されていましたので、他の年代の採用よりも面接の回数を増やしました。コロナ禍ではありますが、面接も基本的にリアルで行い、会社に来てもらって若いコたちだらけの環境で一緒に仕事ができるのかを重視して採用しましたね」
その結果、40代後半管理職を2人採用することができたという。
「一人親方的に自営されている方と業務委託で働いているフリーランスの方を採用することになりました。さもすると自分の子供と同い年の部下、上司と仕事をしているのですが、2人とも人を立てるのがうまいんです。それと、百戦錬磨の経験と広い人脈は非常に重宝していますね。今までウチの会社になかった知見を共有できたことはかなり大きいです。イイお父さん的な存在として若いコたちとも仲良くやってもらってます」
◆虫が良すぎる企業体質を変える必要
とはいえ、こうした企業はまだまだ少数だ。ほとんどの会社は数年先を見越した人材教育と採用を主眼に置く人材戦略が主流である。先述の転職エージェントの担当者はこうした人材戦略について、懐疑的な見方をする。
「大手企業になればなるほど終身雇用、永年勤続を前提に人材戦略を考えている傾向にあります。どれだけ若い社員に心血を注いで育てても、やっぱり若いコは辞めるんです。こんなに育ててやったのに、お前はその恩を……なんて浪花節は若いコじゃなくても通用しない時代ですから。そんなに辞めずに働いて欲しいなら待遇や職場環境を整えるべきですし、人が欲しいなら採用基準も見直せばいいんです」
40代足りない問題はこの先、どうなるのだろうか。このエージェントは「そもそも自分たちで採用を控えておいて、今になって採用を控えた年代が足りないなんて虫が良すぎますよね」と最後に付け加えた。
取材・文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代酔っ払いライター