「人生がめちゃくちゃになった」。母の入信に自己破産、兄の自殺……安倍元首相に凶弾を放った山上容疑者の人生は暗澹たるものだった。事件の余波は新宗教の信者を親に持つ宗教二世に広がる。教義への疑念、家族との葛藤、抑圧された性。見過ごされてきた苦しみを二世が語った。
◆教団の実態や生きづらさ。声を上げる宗教二世たち
安倍晋三元首相の銃撃事件で注目を浴びている「宗教二世」。今、二世が生きづらさを知ってもらうために次々と声を上げている。
宗教学者の塚田穂高氏は、「二世の問題は見過ごせないものとなっている」と話す。
「統一教会(現・世界平和統一家庭連合)やエホバの証人、創価学会などの新宗教の信者は国民の1割超ともされる。現在、新たに信者を獲得して急成長している教団はほぼないので、多くが二世かそれ以降。その数は少なくとも数百万人以上。
教団による違いはあるものの、二世の中には信仰をあらかじめ決められ、家に友達を呼べば祭壇を珍しがられたり、しつけでムチ打たれたり、親が布教活動に明け暮れネグレクトされたりと苦しんできた人もいる。それが今、SNSで当事者同士がつながり、問題の声を上げ始め、大きなうねりとなっています」
◆家族が壊れていく統一教会の過酷な献金ノルマ
「この話題もいつまで続くのかはわかりません。宗教二世の心の叫びを聞いてもらえるのは今しかない」
SNSで声を上げた宗教二世の一人、斉藤千尋さん(仮名・20代)は統一教会の合同結婚式で信者同士が結ばれて生まれた。山上容疑者の家庭と同じように献金によって家庭が壊れていったと話す。
「教団は献金のノルマはないと言っていますが、実際は献金を示す隠語の『K』を使い、毎月『K〇〇万円』を集めなさいと指示があります。毎月、今が一番大変な時期なので地獄に堕ちないために借金してでもお金を集めましょう、と繰り返す。お金はサタン(悪魔)のものだから執着してはいけない、全部捧げなさいと言いますが、私には一番お金に執着しているのは教団のほうに見えました」
◆「学校ではずっといじめられていた」
信仰心の厚い両親のもと、斉藤さんは“外の世界”とのギャップにも苦しむ。
「私はランドセルも制服もお下がり。一目見ただけで貧乏とわかるので、学校ではずっといじめられていた。あるとき勇気を出して親に相談したら『神様があなたに期待しているの。外の世界はみんなサタンだから仕方ないね』と。テレビも『ドラえもん』と『サザエさん』しか見せてもらえなかった。『ちびまる子ちゃん』はお父さんがお酒を飲んでいるのでダメらしいです」
一方で、家には何十万円もする壺や印鑑が何個も並べられていたという。
「100万円の石を買ってきたときは『これで霊界の先祖様が降りてこられるから、この家はどんどん良くなる』と話していました。もちろん何も変わりませんよ。それどころか私の給料まで親は献金に回していたので、メンタルをやられてしまいました」
◆「“真の家庭をつくる”をスローガンに掲げながら、いくつもの家庭を壊してきた」
現在、斉藤さんは脱会し、家族とは距離を置いて暮らしている。
「教団の教えに反発しながら、家族との関係を切れずに、思い悩み自殺した二世もいます。遺書には『もっと愛されたかった』と書いてあり、普通の親ならものすごく後悔するはずなのに、『あのコはサタンの試練に耐えきれず、霊界に先に行ったのね』と言う。人間のセリフではないですよね。統一教会は“真の家庭をつくる”をスローガンに掲げながら、いくつもの家庭を壊してきました」
こうした声があることを、当の宗教法人側はどのように捉えているのだろうか。
統一教会に献金のノルマがあったか尋ねると、「(斉藤さんの証言は)事実ではありません」と否定した。
◆宗教団体は二世からの悲痛な声を重く受け止めるべき
前述の塚田氏は、二世問題は他人事ではないと指摘する。
「宗教二世の問題は、家族の問題だと捉えられがちですが、教団の教えや組織、構造的な問題も多分にある。宗教団体は、当の二世から悲痛な声が上がっていることを重く受け止めるべきです。また問題は新宗教の家庭に限らず、伝統宗教やスピリチュアルな実践、陰謀論、政治的団体などでも同種の問題は起こりえます。その意味では誰もが関わることになるかもしれません」
二世の声に耳を傾ける時だ。
【上越教育大学大学院准教授・塚田穂高氏】
’80年、長野市生まれ。近現代日本の宗教運動、宗教と政治、カルト問題、宗教教育などを研究。著書に『徹底検証 日本の右傾化』(編著)など
取材・文/SPA! 宗教二世取材班 写真/産経新聞社

(出典 news.nicovideo.jp)
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