秘密結社というと、ごく一握りの支配者層が歴史を裏から操るための組織を想像するかもしれない。
現実には、上位1%の特権階級による組織もあるが、貧しい労働者たちによって結成されたものもある。またその目的もさまざまだ。
平和的な秘密結社がある一方で、過激な活動を繰り広げ、世界を変えてしまった秘密結社もある。
そうした秘密結社は、歴史を裏から操るどころか、歴史にはっきりと足跡を残している。ここでは、そうした秘密でありながら、世界的に有名になってしまった結社を紹介しよう。
3人のフリーメイソンによって、1887年イギリスで設立された魔術結社。
その教えは、魔法の儀式らしきものが描かれた「暗号文書」に基づいており、会員は己に秘められている神性、すなわち「聖なる守護天使」とつながることを目指した。
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オカルティストとして有名なアレイスター・クロウリー、ウェイト版タロットの製作者A. E. ウェイト、アイルランドの劇作家W. B. ウェイツなど、1890年代には数百名の会員がおり、男性ばかりでなく、女性も受け入れられていた。
19世紀のロンドンでは、魔術結社としてもっとも強い力を誇り、近代の「ウィッカ」(欧州の古い多神教的信仰をもとにした新宗教)にも影響したとされているが、やがて分派に分裂し、衰退した。
2. 義和団
清朝末期に起きたの動乱「義和団の乱」で知られる秘密結社。
メンバーの多くは山東省の農民だが、単一の起源は特定されておらず、拳法に由来するという説と、自警団に由来するという説がある。メンバーはボクシングを思わせる武術を駆使し、「義和拳」とも呼ばれる。
義和団の乱の背景には、長年にわたるかんばつや洪水にくわえ、地域の習慣を無視しして布教活動を行うキリスト教宣教師といった外国人への反発があった。
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1890年代後半、義和団が宣教師や国内の信者を標的にすると、清王朝がこれを支持。義和団はついに北京の外国人街を包囲するにいたった。
日本、アメリカ、ロシアなど8か国が鎮圧のために軍隊を派遣。アヘン戦争や日清戦争によって衰退していた清王朝だが、これによってさらに打撃を受け、1912年に崩壊。
何世紀にもわたる皇帝による中国の統治に終止符が打たれ、やがて毛沢東による中華人民共和国が誕生する。
3. トゥーレ協会(ドイツ)
急進的な反ユダヤ主義と暴力的右翼ナショナリズムを是とする秘密結社。国家社会主義ドイツ労働者党。いわゆるナチスの母体の1つとされる。
設立は1918年、西部戦線で負傷し除隊した元ドイツ兵ウォルター・ナウハウスと、自称貴族のルドルフ・フォン・ゼボッテンドルフによる。トゥーレとは、ゲーテの「ファウスト」などで語られる伝説の地のことだ。
表向きの活動目的は古代ゲルマンを研究することだったが、実際には神智学をもとにしたアーリア主義や、民族主義と結びついた神秘主義を範として、反ワイマール共和国的扇動や反ユダヤ主義的プロパガンダを広めた。
協会自体は短命に終わる。ナウハウスは謀議の罪で処刑され、ゼボッテンドルフは仲間を売った疑いで失脚。協会は1925年頃に解散したとされる。
しかしそのメンバーの中に、ナチスの前身であるドイツ労働者党の関係者がいた。これをもってナチスの母体の1つとされることがあるが、「ゼボッテンドルフの誇大妄想の産物」とする説もある。
4. セブン・ソサエティ
バージニア大学の秘密結社。設立された経緯は不明だが、アルファ・オメガ・インフィニティに囲まれた「7」のシンボルが大学年鑑に初めて掲載されたのは、1905年のことだ。
生前のメンバーは極秘とされるが、葬儀の際に旗が掲げられるために、その事実を知ることができる。
セブン・ソサエティは、手の込んだ贈り物や寄付をすることで有名だ。たとえば1947年、卒業式の演説中、突然爆発が起きたかと思うと、177,777.77ドルと記載された小切手が浮かんでくるというサプライズがあった。
また2008年には、7が描かれた旗を掲げるスカイダイバーによって、14,777.77ドルの寄付金が届けられた。
なお、セブン・ソサエティと連絡をとる唯一の方法は、大学のロタンダ(屋根がドーム状の円形の建物)にあるトーマス・ジェファーソン像に手紙を投函することだそうだ。
5. レパード・ソサエティ
シエラレオネに起源がある西アフリカの動物崇拝カルト。19世紀から20世紀にかけて起きた一連の血生臭い殺人事件への関与が疑われている。
20年代と40年代にコンゴ東部で多発した殺人事件に関連していたとされ、容疑者だったメンバー数人が死刑。さらに40年代のナイジェリアでは、200人以上が同カルトの犠牲になったと言われており、メンバー77人が死刑となった。
その実態についてはほとんど知られておらず、人種差別や植民地支配の恐怖から生まれた都市伝説と事実を区別するのは難しい。
たとえば、メンバーはヒョウの皮を身にまとい、鉄の爪で武装して、超自然的なパワーを手に入れるために人を殺しては、その血肉を食らったという。
その一方で、地域の力関係の維持、地元民の正義の執行、植民地政府への反抗なども、彼らの蛮行の背景として考えられるようだ。
6. モリー・マグワイアズ
アイルランドは、農民による秘密結社の長い歴史がある。
モリー・マグワイアズも地主に対抗するために1840年代に組織されたアイルランドの秘密結社だ。メンバーは、女装や燃やしたコルクで顔を黒く塗るなどして、素性がバレないようにしていた。
その10年後にはアメリカ、ペンシルベニア州で、アイルランド系カトリックの坑夫たちによって分派が結成されている。1860~70年代にかけて、劣悪な労働環境に対する抗議や、南北戦争への徴兵から身を守るために、鉱山会社の関係者24名を暗殺したとされている。
しかし、その活動がレディング鉄道の利益まで揺るがすようになると、鉄道会社はモリー・マグワイアズにスパイを送り込んだ。それから2年半後、裁判が行われ、「モリーズの王」と呼ばれたジョン・キーホーをはじめとする20人が絞首刑とされた。
歴史家によると、この裁判は著しく不公平なものだったようだ。検察のほとんどが鉄道会社や鉱山会社の関係者で、陪審員にアイルランド系カトリックはいなかった。また提出された証拠もはなはだ怪しいものだったという。
ジョン・キーホーは1878年12月の絞首刑から101年後、ペンシルベニア州知事によって恩赦された。
7. 黒手組
1911年にセルビアの軍人によって結成された秘密結社で、正式名称を「ウイェディニェニェ・イリ・スムルト(統一か死か)」という。セルビア人が暮らす地域の統一を目指していた。
その目的のためにテロや政治家の殺害などを行なっているが、特に重要なのは、第一次世界大戦の発端となったオーストリア皇太子暗殺への関与だ。暗殺犯に武器などを供与し、その密輸も手伝ったという。
黒手組が皇太子暗殺を企てた理由については諸説ある。
1908年にオーストリア=ハンガリー帝国がボスニア・ヘルツェゴビナを併合したが、これが彼らの目的である統一国家実現の障害とみなされたという説。あるいは、セルビア首相と対立していた黒手組のリーダー、ディミトリエヴィチが、首相の失脚を狙ったという説もある。
いずれにせよ、1917年、ディミトリエヴィチをはじめとする黒手組の幹部たちは反逆罪で処刑され、グループはその力を失った。
8. アフリカン・アメリカン・ミステリーズ
この秘密結社に関するほとんどの情報は、設立者とされるウィリアム・ランバートが1887年にデトロイトの地元紙に語ったことだ。
ランバートは、デトロイトで成功した黒人経営者で、黒人参政権・奴隷制度廃止・黒人児童への教育などを求めて運動を行なっていた人物だ。秘密結社「地下鉄道」を通じて、1500人以上の黒人奴隷の逃亡を手助けしたともされている。
手の込んだ儀式を受けてアフリカン・アメリカン・ミステリーズに入会したメンバーは、秘密の合言葉や手信号を教えられ、自分たちの身を守った。またメンバーの中には「地下鉄道」の関係者もいたようだ。
ランバートによると、メンバーは100万人近くおり、1年間に1600人もの黒人奴隷をカナダに逃亡させたという。
9. 薔薇十字団
17世紀にドイツで出版された「薔薇十字文書」によって知られるようになった友愛組織。その文書には、薔薇十字団は15世紀終わり頃にクリスチャン・ローゼンクロイツという人物によって設立されたと記されている。
ローゼンクロイツは、エルサレムへの巡礼におもむき、そこで古代の神秘的知識を得て、薔薇十字団を組織したらしい。
薔薇十字文書の内容は、奇想天外なもの。たとえば、1616年に出版された第三の文書「化学の結婚」では、開祖ローゼンクロイツが幻の城へ旅して、鳥の死体の灰から作られた2つの存在の結婚を目撃する(なお著者は神学者ヨハン・アンドレーエだが、彼自身はあくまで出版者で、著者はローゼンクロイツとしている)。
ローゼンクロイツを主人公とする小説(アメリカ人作家のジョン・クローリーは、世界初のSF小説と評している)なのだが、ヨーロッパ社会にセンセーションを巻き起こし、「薔薇十字の啓蒙」と知られるようになる。
イギリスの思想家フランシス・イェイツによると、薔薇十字文書は宗教・神秘主義・科学の考え方が統合されており、新い世界観を生み出しているという。その内容は、フリーメイソンや黄金の夜明け団といった秘密結社にも影響を与えたとされる。
References:9 Mysterious Secret Societies From Around the World / written by hiroching / edited by parumo
(出典 news.nicovideo.jp)
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