| 自民党の派閥は機能しているのか? 「政策集団」に立ち返れるかが今後 ... - モデルプレス 自民党の派閥は機能しているのか? 「政策集団」に立ち返れるかが今後 ... モデルプレス (出典:モデルプレス) |
統一地方選挙と衆議院、参議院の補選が終わった。選挙は民主主義の基本である。「弾丸(bullet)」ではなく、「票(ballot)」で決着をつける、つまり、投票で自分たちの代表を選ぶという仕組みである。平和的な決定方式と言える。
【関連記事】舛添要一氏連載『国際政治の表と裏』、前回の記事を読む
■選挙とは何か
スイスの一部の田舎では、今でも成人の男性が広場に集まって、地域の方針を直接に決めるている。「ランツゲマインデ」という。「青空議会」と呼んでもよい。
また、住民投票もよく行われる。私は若い頃、2年間スイスで研究生活を送ったが、あまりにも住民投票が多いので閉口したものである。
関連記事:杉村太蔵、日本の選挙制度に独自見解 「”あなたの1票で日本を変える”は嘘」
■大統領制と議院内閣制
民主主義社会では、様々な政党が組織され、権力を掌握すべく努力する。大統領などの首長選挙や議会の選挙に候補者を擁立し、政権獲得を目指す。とくに議会の選挙では、議席の過半数獲得を目指す。
アメリカのような大統領制では、三権分立が徹底しており、大統領と議会は完全に並列である。今のアメリカ大統領は民主党のバイデンであるが、議会の下院は共和党が多数派である。
これに対して、日本やイギリスのような議院内閣制では、国会の多数派のリーダーが首相になる。そこで、政党は、議会で単独過半数を獲得できるように選挙で全力をあげる。もし、どの政党も単独では過半数に達しなければ、他の党と組んで連立政権を形成する。
■人材のリクルート
政党は、選挙に勝てるような優秀な人材を探す。そして、当選して議員になれば、政治の現場で育てていき、その議員が経験を積み、能力を向上させる。政党が政権を獲得すると、成長した議員は大臣などの要職に就く。
政党が大きくなると、党内に様々な集団ができる。その代表が派閥である。派閥どうしが競争して、党内の主導権を握ろうとする。派閥の長は、子飼いの議員を増やして、党を牛耳れば、首相の座も手に入る可能性が出てくる。
政策による集団のみならず、趣味を同じくする議員たちもグループを作る。政党の垣根を越えて議員連盟(議連)というものを組織する。たとえば、「佐渡金山の世界遺産登録を実現する議員連盟」、「将棋文化振興議員連盟」、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などである。
■自民党の派閥とは?

自民党には派閥がある。派閥とそこに属する国会議員数を見ると、安倍派(清和政策研究会)が95人、茂木派(平成研究会)が54人、麻生派(志公会)が54人、岸田派(宏池会)が45人、二階派(志帥会)が41人、森山派(近未来政治研究会)が7人である。
そもそも、自民党の派閥の目的、機能とは何か。派閥は、自分たちの領袖を首相にすることが目的の集団である。親分が首相になれば、子分の自分も大臣になれるかもしれないと思い、議員たちは汗を流す。一般的に、派閥の規模に比例して、大臣、副大臣、政務官のポストが配分される。従って、派閥は、所属する議員の数を増やそうとするのである。
タテマエを言えば、派閥とは政策集団であり、同じような考えを持つ政治家が集まるはずである。たとえば、岸田派はハト派、安倍派はタカ派というイメージである。しかし、個々の議員に当たってみると、実際はそうとは限らない。つまり、現実には政策はあまり大きな要素ではない。
■中選挙区時代の派閥
自民党の派閥は、中選挙区制という制度が生み出したものである。中選挙区とは、一部の例外を除いて、定数が3〜5である。自民党は強くて、一つの選挙区から複数の当選者を出す。たとえば、5人区では5人とも自民党ということがありうるし、4人、3人、2人と、複数が当選する。そうなると、野党候補との戦いよりも同じ自民党の候補との競争のほうが熾烈になる。
かつて「三角大福中」と言われた三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘が率いる5大派閥の時代に、たとえば、田中派と福田派の議員がいる選挙区で、新人が対抗して出馬しようとすると、それ以外の三木、大平、中曽根の派閥から立候補するしかなくなる。こうして、定数5と派閥数5が一致するのである。
問題は、同じ自民党から複数の候補が戦うのだから、政策の競争ではなく、ばらまくお金の競争となることである。派閥は、「カネとポストの配分単位」でもあった。そこで、「カネのかかりすぎる選挙」が問題となり、小選挙区制に移行したのである。
■小選挙区での派閥
衆議院が小選挙区比例代表並立制を導入してからは、派閥は中選挙区時代のような大きな役割を果たさなくなった。小選挙区では1人しか公認候補は出さないので、派閥間の競争はあまりない。公認権を持つ総裁(首相)が誰を公認するかを決めるのであり、そこで首相官邸の力が強くなったのである。「安倍一強」という時代がそうである。
そこで、小選挙区時代には、親分を首相にするという派閥の最大の目的は少しぼやけてしまった。岸田文雄が内閣総理大臣だということは、最大派閥でなくても首相になれるということである。
派閥は、もともとは政策集団であるべきであり、各派閥が「切磋琢磨」(大平正芳の言葉)して政策を磨き、それを有権者に支持してもらうのである。派閥は、今こそ、この原点に立ち返るべきではなかろうか。
■執筆者プロフィール

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
・合わせて読みたい→ひろゆき氏、“同名”の人の不祥事つづき自虐ツッコミ ファンも「風評被害」
(文・舛添要一)

(出典 news.nicovideo.jp)





コメント
コメントする