「資本主義は人民大衆を抑圧し略奪する最後の搾取制度です」
つまり、資本主義ではない北朝鮮では人民大衆は抑圧も略奪も搾取もされないと言いたかったのだろうが、実のところ、資本主義社会より過酷な搾取が行われているのが現実の北朝鮮だ。中でも、中国に派遣された労働者に対する搾取は、凄まじいものがある。
中国のデイリーNK情報筋によると、中国に派遣された北朝鮮労働者は一般的に早朝4時、6時から深夜10時、12時までの長時間労働に苦しめられている。本来なら中国の労働法で禁じられた行為だが、正式な就労ビザを取得して中国で働いているわけではないので、労働法が適用されないという法の抜け穴を利用し、労働力を搾取しているのだ。
それだけではない。労働者の月給は2800元(約5万円)から3200元(約5万7000円)と、中国当局の定めた最低賃金は上回っているものの、一部の企業では、生活費として50元(約890円)を支給するだけで残りはすべて党資金(忠誠の資金)としてピンはねしている。およそ98%という驚異的なピンはね率だ。
この手のピンはねは以前から存在したが、コロナ禍で受注が減り、忠誠の資金のノルマが達成できなくなったことで、その割合がより高くなり、今では食費などの名目で給料のほとんどが奪われる状況となっている。
そればかりか、貯金すら奪われる事態も起きている。デイリーNKの取材に応じたある北朝鮮労働者は次のように述べている。
「コロナ禍以降、家に1回だけ1000元(約1万8000円)を仕送りした。2019年から貯めてきたお金はすべて党資金として取られた。そんな状況でもほとんどの労働者は50元でも節約して家族に仕送りしようとする。どうせコロナで外出できないので、お金を使うところもない」
奴隷同然の状況に、働く人たちの間では不満が高まるも、管理者は「祖国(北朝鮮)のためには命も捧げるというのに、カネを捧げることくらい何でもない」と述べ、北朝鮮では50元でも大金なのだから我慢するよう説得している。人の命を大切にしない北朝鮮の実像がここでも現れている。
そう言われた労働者は、国が苦しい状況にあり、コロナ禍で1年間仕事ができなかったことを考え、仕方なく従っているという。
苦しいのは、中国に滞在する北朝鮮の貿易関係者も同じだ。北朝鮮が国境を封鎖し、輸出入もストップしたことで、月給以外の収入がなくなってしまった。北朝鮮当局は、そんな事情を考慮して上納金の額を減らすなどという生易しいことはしないため、彼らは月給をそっくりそのまま上納せざるを得ない。
当局は今年2月、上納金を4ヶ月未納した機関、団体、作業所、レストラン、工場の末端責任者は本国に召喚するとの規定を作った。単なる帰国で済まされるわけもなく、厳しい総和(総括)を迫られた末に、奥地の閑職に追いやられ、中国での豊かで自由な暮らしを二度と取り戻せなくなるのだから、彼らも必死にならざるを得ない。
(出典 news.nicovideo.jp)
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