近年、台風による大規模災害が世界各国から報告されている。昔からある自然災害だが、気候変動の影響で、台風が大きくなってきているのだ。
もし台風が大きくなる前に沈静化することができれば、被害を最小限度にとどめられるはず。そう考えたノルウェーの企業が、新技術を開発した。
海中に「泡のカーテン」で気泡を放出することで、台風にエネルギーを注ぎ込む温かい海水を冷やし、大きくなる前に沈静化させてしまうのだ。
【画像】 >泡のカーテンで海水の温度を下げ、台風の成長を抑える
ノルウェーに拠点を置く「OceanTherm」社は、ますます大きな被害をもたらしつつある台風を防ぐために「泡のカーテン(バブル・カーテン)」という技術を開発した。
台風が大型化しているのは、温暖化によって海面の温度が高くなっていることが影響していると考えられている。海面の温度が華氏80度(摂氏26.5度)を超えると、熱帯性低気圧(つまり台風)が発達しやすくなり、いっそう勢力を強めるようになるからだ。
そこでバブル・カーテン技術を用い、船に穴のあいたパイプを取り付け、海中に気泡を放出する。すると深いところにある冷たい海水が浮き上がる。これによって台風にエネルギーを注ぎ込む温かい海水を冷やしてしまうのだ。
OceanTherm社のオラフ・ホーリングシーター氏によると、現時点でこの構想はまだ初期の段階にあるが、シミュレーションではうまくいくことが確認されている。水深100メートルの海水ならば、海面温度を摂氏26.5度以下に下げられるだけの冷たさなのだという。
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OceanTherm社が最終的な目標としているのは、メキシコ湾や大西洋全域にバブルカーテンを張れるシステムを構築することだ。
実験には莫大な費用がかかるが、台風の被害総額に比べれば微々たるもの
しかしそれまでの道のりは険しい。たとえば、陸や海で実証実験を行うには毎回数億円もの費用がかかる。効果が確かではないものに、これだけの資金を集めるのは簡単なことではない。
ところが、この数字を台風によってもたらされる被害と比べてみると、また話は違ってくる。OceanTherm社は実験に必要となる総費用をおよそ19億円と見積もっている。
一方、アメリカ海洋大気庁(NOAA)によれば、2017年にアメリカが受けた台風の被害額は31.3兆円であるという。もし本当にバブルカーテン技術でこうした被害を防ぐことができるのならば、19億円など安いものだ。
また将来的には、この技術で死にかけているサンゴ礁を救うという応用も考えられるようだ。
環境に与える影響に懸念の声
ただし、こうした技術が環境に与える影響を懸念する声もある。NOAAの環境工学者トレイシー・ファナラ博士は、バブルカーテンがメキシコ湾の藻類に影響を与える恐れがあると指摘する。
たとえば海水を無理やり海面へと上昇させてしまえば、藻類もまた強制的に海面へ連れて来られることになる。こうした1つの変化は、ドミノのように連鎖的に次から次へと別の影響へと発展するかもしれない。
これ以外にも、台風はその地域にとって必要不可欠な雨を降らし、乾いた滞水層を潤わせるという役割を果たしているために、これを完全に消し去ってしまうわけにもいかないという。
とはいっても、バブル・カーテン技術を完全に諦めてしまうのではなく、小規模で運用したり、ここから学んだことを別の分野に応用するという可能性はあるようだ。
「沿岸部の海水温を変えて、台風を弱めるというのは1つの方法です。ですが、地球の自然プロセスについて、私たちはまだ完全に理解していません」とファナラ博士は語っている。
Norwegian company hopes bubble curtain technology can combat major hurricanes
written by hiroching / edited by parumo
追記(2012/09/20) 摂氏と華氏の表記を追加して再送します
(出典 news.nicovideo.jp)
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