令和の社会・ニュース通信所

社会の出来事やニュースなどをブログに書いて発信していきます。あと、海外のニュースなども書いていきます。

    カテゴリ:国内 > 国防



    高い買い物になる。

    まず防衛産業の育成から始めよ

     国家安全保障戦略(安保戦略)が決定する前に、なぜ高い兵器を購入することが決まるのか。日本は、戦い方と抑止力を検討して、どの武器を持つべきなのかよく考えるべきだ。

    JBpressですべての写真や図表を見る

     今年の11~12月にかけて、2つの海外の武器を購入することがほぼ決まったようだ。

     フィンランド製装輪装甲車500両は、一般的な装甲車の価格1両概ね約5億円という情報から算定すると約2500億円、米国製のトマホーク500発は、英国防省が購入した価格を参考にすると約1500億円だ。

     相当高価な買い物である。

     この2つの買い物は、日本の安保戦略を検討中であるにもかかわらず決まったことだ。

     これらは2つとも、日本防衛の主役あるいはほぼ同じ役割を担う。それなのに、なぜ外国製なのか。

     しかも、日本の防衛基盤を育成しなければならないことが求められているのにもかかわらずだ。

     極めて高価な買い物をしなければならず、膨らむ防衛予算をどうやって確保しようかと、国会で議論されている。

     しかし、実は自民党内でも意見が分かれている。

     高い買い物をするのであれば、本当に必要なものなのか、数量は適切か、他に方法はないのか、今後の日本の防衛産業の発展性(将来性)はどうなのか――。

     どれも大きな問題であるにもかかわらず、一つも提起されていない。

     日本の防衛問題の焦点および日本の防衛の意識・感覚にズレがあるのではないかと、不安を感じざるを得ない。

    1.外国の武器購入に軍事戦略はない

     どのような武器を保有(購入)するか考えるときには、まず我が国周辺の軍事的脅威に備えるために、頂点に国家安全保障戦略、このもとに防衛戦略(防衛計画の大綱)、陸海空防衛戦略が、そしてその戦略に基づく陸海空統合の戦い方(統合防衛計画)、陸海空個別の戦い方(個別の防衛計画)を決める。

     その戦い方が達成できる武器を購入するのだ。

     予算の制約や開発の期間を考慮して、長期的に計画するか、あるいは短期的に購入する。

     日本で製造できないものや技術を導入したいものについては、海外からの輸入に頼らざるを得ない。

     しかし、必要な時に必要な武器を導入できること、継戦能力の必要性、日本の防衛産業育成などを考えると、日本国内、日本の企業(防衛産業)に委託することが望ましい。

     防衛装備庁は、「防衛産業基盤を国内に維持し、強化する必要性がある」と認識し、次の2点を強調している。

    ①国土特性等に適合した装備品を取得することは、我が国防衛の観点から極めて重要である。また、防衛生産・技術基盤は、防衛力そのものである。

    ②経済安全保障の観点から、我が国の自立性の確保および不可欠性の獲得が喫緊の課題である。防衛生産・技術基盤を国内に維持し、強化する必要性は一段と高い。

     現実に起きているのは、防衛装備庁が強調していることと反対のことだ。

     ウクライナでの戦闘では、精密誘導兵器がいろいろな場面で使用されている。

     この様子を見ていると、日本の戦い方は大きく変わっていかなければならないはずだ。

     ところが、このことについては議論されず、税についてなど、その財源をどうするかが議論されている。

     今回のフィンランド製の装甲車の購入もトマホークの購入についても、前述の理論はなく、突然どこかで決定されたようで、全く奇妙な話である。

     政治家や大手メディアがこのことについて、問題として取り上げないことも不思議に感じる。

    2.国土防衛用の戦車・装甲車は国産に

     陸上の主戦場で戦う装甲車を外国製にすることが決定した。

     装甲車というのは、十数人の歩兵を装甲車に搭乗させて、戦車と供に戦う戦闘車だ。例えば国土防衛戦では、

    ①沿岸付近の陣地に配置して敵の上陸を撃破する。

    ②国民が安全に後方に下がれば、戦いながら内陸部まで後退する。

    ③いったん上陸した敵部隊に反撃するときには、戦車と供に攻撃する武器だ。

    候補に挙がった装甲車

     防衛省令和4年12月9日のお知らせによると、「陸上自衛隊96式装輪装甲車の後継車両である次期装輪装甲車(人員輸送型)として、フィンランドPatria社の『パトリアAMV』に決定した」という。

     AMVとは、「Armored Modular Vehicle(装甲モジュラー車両)」のこと。

     選定理由は、

    ①第1段階評価においては、「日本製の三菱重工業の機動装甲車フィンランド製のAMVも必須要求事項を満たしている」ということである。つまり、どちらも、防衛省の要求性能を満たしている。

    ②第2段階評価においては、「基本性能」「後方支援・生産基盤」および「経費」について100点を満点とする加点を行い、最終的な評価点が最も高かったPatria社製AMVに決定したという。

     フィンランド製という外国のAMVに決定しなければならほどの差があったのか。

     決定の理由として、基本性能については、パトリアAMVが最も優れており、経費については、パトリアAMVが高い評価であった。

     後方支援・生産基盤については、全体として概ね同等の結果となった。合計点でパトリアAMVが高い点数を獲得したということらしい。

     この結論の評価結果については不明確であり、全く納得できない。

     パトリアAMVは既存の車両で、三菱重工装甲車は試作品だ。もし性能が少々劣っているとすれば、製品にする際に改善すればよい。

     後方支援と生産基盤が同じ評価というのも納得できない。

     国内で日本の技術で生産することから、それらの点では、日本の製品の方がはるかに高いといえる。

     この評価の中に、日本の防衛産業の育成という基準がない。

     本来であれば、この評価項目が大きな要素として入れられるべきである。

     関係者から聞いたところによると、なぜ日本企業が提案する装輪装甲車が落選したのか、その理由は具体的には分からないという。

     企業として開発に注力してきた技術陣への説明もできないらしい。

     これでは、日本の企業も技術者やる気をなくし、企業の防衛産業部門の閉鎖、技術者の民間部門への配置換えが行われることになる。

     近年、日本企業の100社以上が防衛関連事業から撤退するという事態を招いている。極めて不安な事態だ。

     ウクライナでの戦闘でも、ウクライナロシア軍の侵攻を食い止めるために、戦闘機・戦車・火砲・弾薬を、ミサイル無人機を飛翔中に破壊する防空兵器を、早急に供与してほしいと何度も懇願した。

     だが、早急に供与してほしいと懇願しても、供与する国の国会や政府が決定するまで得られなかった。また、届けてもらえるまでに、相当な時間がかかった。

     必要な兵器がなければ、戦闘で敗北する可能性がある。また、多くの将兵が刻々と死傷していく。

     これらのことから、現代戦になればなるほど、国内に生産基盤を持つことが求められる。

     国産にすれば、国内企業、下請け企業までも武器生産技術レベルが上がる。大量生産すれば、価格も抑えられる。

     できるかぎり国内の企業に依頼することが望ましいのだ。

    3.トマホークは抑止力になるのか

     トマホーク巡航ミサイルは、ほぼ40年前に開発された兵器である。

     1991年湾岸戦争2001年からのアフガニスタン戦争、2003年イラク戦争などで、大活躍した。

     私は、当時情報分析官の仕事をしていて、このミサイルイラクの建物に命中する映像を見て、こんなにすごいミサイルがあるのかと衝撃を受けたものだ。

     国家安全保障戦略の改定検討中に、自民・公明両党は、反撃能力確保のために、米国製のトマホーク導入を盛り込むことに合意したという。

     さらに、防衛省が米国製の巡航ミサイルトマホーク」について、2027年度までをメドに最大500発の購入を検討しているという。

     岸田文雄首相は12月13日ジョー・バイデン大統領との首脳会談で購入交渉を進展させる方針を確認し、「反撃能力」の保有に向け、準備を加速させている。

     だが、ちょっと待ってほしい

     このミサイルは、開発や戦闘で使用されてから20~30年が経過している。

     現在、ロシアは極超音速滑空体「アバンガルド」、中国は変則軌道ができる「DF-17」、北朝鮮も2種類の極超音速滑空体の実験を行っている。

     米国も極超音速巡航ミサイルや極超音速滑空体の実験を行い成功している。軍事大国では、撃ち落とされない弾道ミサイルの開発が焦点だ。

     トマホークの性能は、射程が約1200~3000キロである。

     日本がトマホークミサイルを保有すれば、九州~北京まで約1500キロであることから、狙って攻撃できる。

     また、中国の主要な海軍基地まで1000キロ前後、空軍基地は概ね1300キロ内、地上軍の基地までは1500キロ以内。中国軍の主要都市と中国軍の基地を狙って攻撃できる。

     広島から平壌まで約800キロ、北朝鮮全土まで約1000キロだから、十分に射程圏内に入る。

     だが、大きな問題をはらんでいる。

     問題その1は、速度が時速880キロ(音速よりちょっと遅い)、弾道ミサイルよりも遅い(3分の1~5分の1)ために、打ち落とされる可能性が高いことだ。

     もしも、中国が「S-300」や「S-400」防空ミサイルを重要基地などに配備していれば、撃墜される可能性がある。

     具体的に、ウクライナでは、ロシア巡航ミサイルが、ウクライナの防空兵器で打ち落とされている。

     中国から弾道ミサイルが発射されると、日本の着弾場所にもよるが、10数分前後で到達する。

     もし、日本が本土からトマホークを撃ち返したとしたら、北京まで2時間近くかかる。こんなのんびりした撃ち返し能力で良いはずがない。

     問題その2は、そもそも抑止力になり得るのかということだ。

     ロシア・中国・北朝鮮は、極超音速滑空体の実験を行っている。弾道ミサイルの弾頭部分の主力として、極超音速弾道のミサイルや滑空体を開発中である。

     このようなミサイルの開発状況の中で、音速にも及ばないトマホークが、中国や北朝鮮に対して抑止力となり得るはずがない。

     問題その3は、トマホークは後10年もすれば、新たな巡航ミサイルと交代することになるだろうということだ。

     目の前にリプレースが迫っている古い兵器を日本が購入する意味があるのか。これは外圧で買わされると考えるのが普通だろう。

     将来的には、日本の「12対艦ミサイル」の射程を伸ばすという案もある。

     日本の長射程巡航ミサイルを保有することには賛成だ。

     だが、中国や北朝鮮が、極超音速で飛翔する弾道ミサイルを開発している時に、巡航ミサイルだけで、抑止力となるという考えは不十分である。

    4.日本の反撃能力はどうあるべきか

     まもなく時代遅れになりそうなトマホークを購入することになぜ決まったのか、その経緯の説明が全くないのでは国民の信頼を得られない。

     日本の武器を装備するには、防衛戦略と戦い方と一致させなければならない。防衛戦略や戦い方が不明なままで、トマホークを購入しますというのには納得がいかない。

     本来であれば、中国や北朝鮮弾道ミサイルを抑止するために、最も適した兵器は何なのかを検討すべきだ。

    ①極超音速滑空体を搭載した弾道ミサイルか、通常の弾道ミサイルか、あるいは巡航ミサイルかどうかを検討する。

    ②決定したミサイルは、日本で製造できるのであれば国産で、できなくて米国の技術に依存しなければならないのであれば米国製にするという検討があってよいはずだ。

     日本は、現段階では、速度が遅い巡航ミサイルで抑止力を保有することは必要だ。

     だが、近い将来には、どのミサイルが抑止力になるのかを十分に検討すべきだ。

     日本は、弾道ミサイルを開発・製造する時に来ている。日本には今のところ技術があるので、持つか持たないかの検討に入るべきだ。

    [もっと知りたい!続けてお読みください →]  ロシアの最新兵器はどこへ消えたのか、統計数字の謎を暴く

    [関連記事]

    塹壕で恐怖に怯えるロシア兵、ウクライナの斬進反復攻撃奏功

    日本の「トマホークミサイル購入計画」を大歓迎するバイデン政権の胸算用

    ミサイル駆逐艦「チェイフィー」から発射されたトマホークミサイル(太平洋上で、2020年11月30日撮影、米海軍のサイトより)


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【防衛】40年前開発のトマホークでは日本は守れない、これだけの理由】の続きを読む


    反発がある。国民への説明が足りてないようだ。

    1 1ゲットロボ ★ :2022/12/12(月) 00:40:30.86ID:m4BX19XH9
    アンケートは9日午後から10日朝にかけて、夕刊フジ編集局ツイッターで実施した。2046票の回答があった。投票結果は別表の通り。

    ttps://www.sankei.com/resizer/x1RceN5kkQDdCEyEi9qozbtq0Ao=/727x685/smart/filters:quality(65)/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/JO57PGXXVVE6PDV6ZEFT6KG27M.png

    防衛費増額をめぐり、夕刊フジは財源を「増税」で賄うことの是非について緊急アンケートを行った。29%が「絶対反対」、64・4%が「まず税収増や防衛国債の発行などを検討すべきだ」と回答した。岸田文雄首相は2027年度以降、不足する約1兆円の財源について増税を検討する意向を示しているが、93・4%が反発する結果となった。自民党内でも反対意見が噴出しており、今後の展開が注目される。

    増税反対では、痛烈な意見が相次いだ。

    「増税しか思いつかない能力の低い#財務省#霞ヶ関官僚#政治家の給与から財源を確保すればいい」「増税のために防衛費を人質に取るな」

    政府に知恵や工夫を求める声も寄せられた。

    「政府や行政が身を削れ」「巨大なムダ、不必要な政策を洗い出しそのカネを防衛費に充てるべき」「税収増へ景気回復の努力を怠るな」「防衛国債に後ろ向きなのはなぜ?」「財務省が嫌がる『ふるさと納税』のように『防衛納税制度』をつくれば」

    増税を容認する意見もあった。

    「国防最優先だから増税してでも増強してほしい」「増税反対の動きを中国ロシアが見て『日本国民は国防の覚悟も気概もない』とみられるのもマズくないですか?」

    松野博一官房長官は9日の記者会見で、増税批判の声について「国民の皆さまのご理解が得られるよう、丁寧に説明していくことが重要」と述べた。

    https://www.zakzak.co.jp/article/20221210-WFZRD44YYZOJRHHENDGVCN2NAI/
    https://www.zakzak.co.jp/article/20221210-WFZRD44YYZOJRHHENDGVCN2NAI/2/

    【【国防】防衛増税に93%が反発「『防衛納税制度』をつくれば?」 夕刊フジ緊急アンケート】の続きを読む



    問題点をどう解決するのかな?

    代替テキスト
    (写真:時事通信

    岸田文雄首相は防衛費などの関連予算を今後5年で倍増し、27年度には国内総生産(GDP)比2%以上にするよう関係閣僚に指示を出した。2022年度の防衛費は約5.4兆円でGDP比1%ほどだが、これを2%に増やすとなると11兆円になる。軍事評論家の田岡俊次さんが語る。

    「今年4月に発表された『世界の軍事費』(ストックホルム国際平和研究所)によれば、2021年の日本の防衛費は世界9位でした。11兆円に倍増させると、日本は一気にアメリカ、中国に次ぐ3位に。平和憲法を掲げながらも、実質的に軍事的列強国の一国となるのです」

    そもそも防衛費を倍増すれば日本の防衛力は高まるのだろうか。田岡さんは「巨費を投じても効果は乏しい」と指摘する。

    「政府は、敵のミサイル発射を阻む『敵基地攻撃能力』の必要性を訴えていますが、実効性はありません。北朝鮮ミサイルは移動式発射機に載せてトンネルに隠し、出てきて即時発射できる。敵の位置がわからないと、こちらは攻撃できません。たとえ兆候をつかんだとしても、単に訓練しているのか、日本を狙っているのか意図や方向を判断するのは困難。政府が慌てて攻撃したら“先制攻撃をした”と世界から非難される可能性もあります」

    また5兆円の“使い道”にも疑問符がつくとこう続ける。

    「今でも14645人が欠員となっている自衛隊では隊員の募集に苦労しています。2018年から一般の隊員の採用を18歳以上33歳未満にまで広げましたが、人員は一向に増えていません。予算を増やしたからといって、この問題が解決するとは限りません」

    さらに、防衛費増額を主張する人たちの根拠になっている米中の台湾有事に日本が巻き込まれるリスクも低いという。

    「中国と台湾の経済関係は極めて密接、相互依存で発展してきた。中国が台湾に攻め込めば自らの足を打つ結果に。台湾行政府の世論調査では、独立でも統一でもない『現状維持』を望む人が84・9%もいる。日本はそれを支持して、米中戦争の防止につとめるほうが安全保障と国益にかなうのです」



    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【自衛隊】「隊員不足は解消しない」“防衛費GDP比2%”の効果に疑問符】の続きを読む


    防衛力を強化

    1 nita ★ :2022/11/30(水) 07:23:49.69ID:2BNxrj+H9
    11/30(水) 5:00配信
    読売新聞オンライン 

     防衛省が米国製の巡航ミサイル「トマホーク」について、2027年度までをメドに最大500発の購入を検討していることがわかった。岸田首相は13日のバイデン米大統領との首脳会談で購入交渉を進展させる方針を確認し、「反撃能力」の保有に向け、準備を加速させている。

     複数の日米両政府関係者が明らかにした。自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」を巡っては、自民、公明両党は抑止力の向上に必要だとの認識で基本的に一致している。12月中に改定する国家安全保障戦略に保有が明記される方向で最終調整が行われている。

     反撃能力の具体的な手段として想定されているのは、陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」だ。ただ、射程を伸ばす改良が必要で、実戦配備は26年度以降とされている。

     防衛省は改良された12式の配備が遅れたとしても、反撃能力を早期に確保するため、トマホークを導入したい考えだ。北朝鮮がミサイル発射技術を急速に進展させていることなどを踏まえ、最大500発の保有が必要だと見積もっている。米国の製造能力などとの関係で、購入の規模は今後変動する可能性がある。

    以下略

    https://news.yahoo.co.jp/articles/279c1951bf2e5cf3aa6fc3c2988d8f4de6a81c4f

    【【防衛省】トマホーク最大500発購入へ、反撃能力の準備加速…8年前に購入の英は65発190億円】の続きを読む


    どうなるのかな?

    ■日本と同じく平和ボケは重症?

    今年の2月27日、つまり、ロシアウクライナ侵攻の3日後、ドイツのショルツ首相(SPD)は臨時国会を召集し、2023年には1000ユーロ(約13兆円)を国防強化のために臨時に投入するとか、23年以降は一般の国防費をGDP比の2%台にのせるとか(現在は約1.5%)、歴史的ともいえる国防強化計画を発表した。

    それどころかベアボック外相(緑の党)に至っては、戦車やらミサイルなど重火器をウクライナに供与すると言ったので、皆がビックリ。戦後のドイツ平和主義を貫き、今では徴兵制も停止。特にSPDと緑の党は、戦争はもちろん、武器の輸出などにも反対で、国民も皆、それに満足していた。ポーランドロシアの脅威を言おうものなら、「何を大袈裟な」と本気にしなかったのだから、要するに日本と同じく平和ボケが進んでいたわけだ。

    だから国防費も、NATOからどんなにせっつかれようが、GDPの1.1~1.5%ぐらいをウロウロ。それが一転、よりによって緑の党の外相が「ウクライナ民主主義が踏みにじられているのを見過ごす訳にはいかない!」とタカ派に豹変(ひょうへん)したのだから、それは皆が驚く。

    ■「歴史的大転換」どころか国防費が下がっている

    1000ユーロの国防強化費の財源は、リントナー財相(自民党)によれば「特別財産」とか。「特別財産」とは何ぞやと思ったら、何のことはない新たな借金だ。リントナー財相は財政均衡を公約にしていたので、一般会計の収支に現れない借金ということで、特別財産という言葉が編み出された。ドイツ政府では、借金と財産が同義語になってしまった。

    ところが、それから8カ月あまりが過ぎた今、来年度の予算には、ショルツ首相が自画自賛した「歴史的大転換」は見当たらない。今年503.3億ユーロだった国防費は、なぜか501ユーロに下がっている。また、特別財産の1000ユーロで購入するはずだった軍の装備も、急に尻すぼみになっている。それどころかその1000ユーロ自体、まだ影も形もない。

    ドイツ国防軍の装備はとてもお粗末で、すでに10年以上も前から問題になっていた。有事となれば、戦闘機は飛ばない、駆逐艦は出ない、戦車は走らない、弾丸はないという状態になるだろうと言われつつ、しかし、いっこうに改善されないまま今日まで来ている。飛ばないヘリコプターが多すぎて、演習の時にADAC(日本のJAFに相当する民間の自動車連盟)から借りたという不名誉な話もあるほどだ。

    ADACのヘリは道路情報を流すため、あるいは事故現場に急行するため、ちゃんと空を飛んでいる。いずれにせよ、昨年まで16年も続いていたメルケル政権に、改善しようという意思が希薄だったことは確かだろう。

    ■「“平和の利息”が使い切られた今、再軍備に取り掛かるべき」

    現在のドイツ国防軍は自衛隊と同じく隊員を募集するが、なかなか集まらないため、保育所を完備するなどして“働きやすい職場”を心がけている。一方、近年のスキャンダルは、軍の中に蔓延(はびこ)っているという「極右思想」。2020年、軍のエリートである特殊部隊(KSK)の一部解体の後、軍内部の諜報(ちょうほう)を担当しているMAD(軍事保安局)が、“極右の人間”を摘発するのに躍起になっている。21年には半年足らずで700件もの“容疑”が浮かび上がったというが、詳細はよくわからないというのが国民の正直な感想だ。

    いずれにせよ、そうするうちに肝心の軍隊は、ますますボロになっていった。だから、ショルツ首相の軍隊強化案は間違っていない。間近でウクライナの戦争を見ながら、国民も当時、皆、そう思った。

    この政府の動きを最大限に活用しようとしているのが、ドイツの安全保障関係者だ。特に、軍需産業のためのロビー活動に従事するGSP(安全保障協会)では、会長曰く、「十分あると思われていた“平和の利息”が使い切られた今、ドイツは再軍備に取り掛かるべき」なのである。軍隊の中で取り締まられている「極右」とは違い、GSPの面々は政治的にも強大な力を持っている。ただ、彼らがSPD率いる国防省を信用しているかというと、おそらくしていないだろう。

    ■ドイツ政府の常套手段に日本も踊らされている

    一方、9000kmも離れた日本でも、かねがね祖国の国防の不備を憂いていた一部の政治家や国防関係者が、ショルツ首相の心意気を見て張り切った。自衛隊が担う最小限の防衛でさえ憲法違反と責め立てる勢力が大手を振っている日本である。ドイツの決断はありがたく、「あのドイツでさえ安全保障の重要さに目覚めた。いざ、日本も!」と発奮した。

    ただ、私は当初から、ドイツ政府の動きには懐疑的だった。彼らの大風呂敷は毎度のことで、メルケル前政権も、ここぞというところで派手に打ち上げ花火を上げて世界中の人々を感動させたが、たいていは尻すぼみだった。しかし、花火の美しい残像だけが見た人の脳裏に長く留まるのである。

    さて、そうするうちに、やはり10月の終わりになって、「特別財産」で賄われる予定だったさまざまな軍事強化プロジェクトが大幅に縮小されたというニュースが伝わってきた。なぜ、こんなことになったかというと、国防省の立てた計画に「相当な欠陥」があることを会計監査院から指摘されたからだそうだ。インフレの影響や為替の変動、利子などの国債費も抜け落ちており、しかも予算を大幅にオーバーしていたというから、何だか素人臭い。

    ■結局国防費は増やさず、新設予定の装備も減らし…

    そこで、計画を再度練り直した結果、輸送用装甲車フックスの購入は取りやめ。海軍の「フリゲート126」は、すでに注文してあった4艦に2艦追加するはずだったが、それも取りやめ。しかも、注文済みの4艦は来年に建造が始まるが、その費用56億ユーロは「特別財産」には付け替えられず、通常の国防費から出すという。ただ前述のように、来年の国防費は今年よりも減っているし、再来年も増やさないと財務相。

    また、当初の計画では、高速護衛艦K130を10隻購入するはずだったが、それがおそらく6隻に縮小される。また、潜水艦発射式の対艦ミサイル「アイダス」は、製造資金が足りないので、当面、引き続き開発だけに投資。さらに米国から購入する対潜哨戒機P-8ポセイドン)は、12機の予定が8機になった。ただ、うち5機はすでに発注されているが、残りの3機はお財布を見ながらということになるという。こうしてみると、一番犠牲になったのが間違いなく海軍である。

    ■ロシア、中国に続いて米国にも依存するのか?

    政府、および国防省に対する批判は、実は他のところからも来ている。ドイツの宇宙・航空関連の企業連合会であるBDLIによれば、購入が決まったステルス戦闘機F-35ロッキード社製)と大型輸送ヘリCH-47Fには、160ユーロという莫大(ばくだい)な税金が注ぎ込まれるが、そのメンテナンスはすべて米国に委ねるという。

    整備や維持補修をドイツ国内で行えば、何十年にも亘(わた)って確かな収入が保証されるし、最新武器に関する技術の共有、および向上など安全保障上の利点が大きい。将来の研究開発への参入もあり得る。

    しかし今のままでは、購入後の整備は米軍基地、あるいはロッキードやボーイングの工場に委託されることになり、しかも、ドイツ以外の国となる可能性が高い。しかも、それによって当然、ドイツの安全保障の米国依存は高まり、それは、エネルギーロシア依存、経済の中国依存と同じく、非常に危険なことだとBDLI。

    ちなみにスイスの場合は、同じくF-35を発注しているが、ちゃんと自国にも利益が落ちるような契約内容になっているという。ところが独国防省は、米国側にその打診さえしなかったというから、BDLIは怒り心頭である。しかも、これまでは戦闘機の購入の際、さまざまな特注がなされ、ドイツ仕様となったが、今回はほぼスタンダード装備のままだそうだ。

    ■戦争反対を長年叫んでいた彼らに交渉ができるのか

    なぜこんなことになったのか? 以下は私の憶測だが、現ドイツ政府は、武器についての交渉に暗いのではないか。1998年から2005年までのシュレーダー政権(SPD)の7年間を除いては、1982年から2021年までの長きに亘り、国防省のポストはCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)の独壇場だった。SPDや緑の党は前述の通り、その間ずっと戦争反対を叫んでいたのだ。国防に関するパイプは、国内でも国外でもあまり太くはないだろう。

    それに、特注の仕様の決定や、メンテナンスへのドイツ企業の参入となれば、その交渉にBDLIが出てきて采配をすることになる。専門知識で遅れをとる政府の国防委員らが、それを嫌ったという可能性もある。

    さらに考えられるのは、メンテナンスを米国に委ねると、武器自体の価格は安くなるという事実だ。メンテナンスを委託されれば、米国はその後、20年、30年、あるいはもっと長く収入が見込めるので、その分、武器自体の価格を安くする。つまり、金欠のドイツ政府は、当面の出費を少しでも減らすため、安いヴァージョンを選んだのかもしれない。

    ■日本の政治家はこの危うさをわかっているのか

    いずれにせよ、財務省は均衡財政という公約にこだわっており、連邦軍の装備の画期的な改善は見込めない。ショルツ首相やランブレヒト国防相が言う「国防費2%」は、当分、目標値のままかもしれない。実際、これまでの状況を維持するだけで精一杯という声もある。

    新しく購入した2隻のタンカーの支払いはお金が足りず、軍病院の売り上げを回すという信じがたい報道もあった。CDUの議員は、「武器の費用捻出のために手術を増やせというのか」と皮肉っていたが、私が思うに、これまで国防に携わっていたCDUもこの惨状に関しては決して無実ではない。

    以上、混乱したドイツの国防事情を書いたが、日本は、ドイツが何をしようが、しまいが、絶対に覚醒しなければならない。日本を取り巻く安全保障環境は、現在、北朝鮮から飛んでくるミサイルや、尖閣諸島や対馬がやりたい放題されてしまっている状況を挙げるまでもなく、戦後最悪の痛ましさだ。ドイツよりも確実に危ない。「遺憾の意」や、「厳重に抗議」でしたり顔の日本の政治家は、はたしてこの危うさをわかっているのだろうか?

    ----------

    川口 マーン 惠美(かわぐち・マーン・えみ)
    作家
    日本大学芸術学部音楽学科卒業。1985年ドイツシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ライプツィヒ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)が同賞特別賞を受賞。その他、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『移民・難民』(グッドブックス)、『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)、『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』(ビジネス社)がある。

    ----------

    ベルリンで開催された週次閣議に出席したドイツのオラフ・ショルツ首相=2022年11月18日 - 写真=AFP/時事通信フォト


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【【国防】「防衛費増額」の是非を議論している場合ではない…平和ボケで国防軍がボロボロになったドイツの教訓】の続きを読む

    このページのトップヘ