新型コロナでより深刻度が増した貧困問題、それに追い打ちをかけるインフレの嵐――。ただでさえ厳しい暮らしを強いられている低所得者層の生活が今、インフレによって脅かされている!
◆苦しむ低所得者層。インフレ貧困の現状とは?
日本全土に吹き荒れるインフレの嵐。相次ぐ値上げラッシュは、これまで安泰だと思われていた人たちをも貧困に陥れようとしている。
生活困窮者支援に取り組むNPO「ほっとプラス」理事で社会福祉士の藤田孝典氏は、貧困の最新事情についてこう話す。
「2年前のコロナ前と比べると、今は3倍近い相談件数が寄せられています。中小零細企業に正社員で勤める世帯年収300万円台の人たちからも、家賃や水道光熱費などの支払いで精いっぱいという相談が目立ちますね」
◆炊き出しに世帯年収300万円台の人たちも
また、インフレによる社会不安が中間所得層まで及んだ結果、支援現場の様相も変わってきていると、藤田氏は指摘する。
「かつてはホームレスや生活保護受給者が大半を占めていた炊き出しに、現在は世帯年収300万円台の人たちも並ぶようになりました。彼・彼女たちから話を聞くと、炊き出しで得た物資で生活用品や食料などの生活費を節約しているようです。
さらに、子どもの教育費を削り、外食・娯楽を控えるなど、すでに水準を下げた生活を送っている。もはや、彼らは中間所得層と言えるのか……。このままでは、多くの世帯が文化的な生活から遠のいてしまうのではないでしょうか」
’22年3月3日に経済財政諮問会議へ提出された「我が国の所得・就業構造について」(内閣府)によれば、社会保障や税など、所得格差を埋める所得再分配を加味すると、全世帯の年間所得の中央値は、’94年の509万円から’19年は374万円と、この25年で27%も下がっている。
貧困予備軍ともいえる年収300万円台は、今や日本のボリュームゾーンとなっているのだ。
◆わずかな値上げで家計が崩壊する
年収300万円世帯に忍び寄る貧困の足音。一方、すでにギリギリの生活を送っている低所得層への影響は計り知れない。
「特に、非正規雇用や年金生活者、シングルマザー、生活保護受給者といった低所得者層の多くが、インフレ前から家計は限界まで切り詰めており、貯金もなく生活にまったく余裕がありませんでした。そのため、収支のバランスに少しでも綻びが生じると、生活そのものがままならなくなります」
◆電気が止まった
事実、今回の生活必需品のほんの少しの値上がりで、「電気が止まった」「食事や入浴の回数を削った」などの声が藤田氏のもとに多く寄せられたという。
「生活が困窮しても相談に乗ってくれる人が周りにおらず、医療費も払えないため、最終的には症状が悪化した状態で見つかるというケースもあります。お金さえあればなんとかなるという状態に対して、命すらも危険な状況に及んでいるのです。ここまでくると正直、先進国の暮らしとは言い難いですね」
低所得層をより貧困へと突き落としたインフレ地獄。値上げラッシュでひっ迫する生活は、もはや限界に来ているのかもしれない。
【社会福祉士・NPO「ほっとプラス」理事 藤田孝典氏】
生存のためのコロナ対策ネットワーク共同代表。生活困窮者支援に関する活動と提言を行う。著書に『コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来』(毎日新聞出版)
<取材・文/週刊SPA!編集部>
(出典 news.nicovideo.jp)
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