トランプ再選のデマはなぜ拡散された? 政治系ユーチューバーKAZUYA(週刊SPA!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース トランプ再選のデマはなぜ拡散された? 政治系ユーチューバーKAZUYA(週刊SPA!) - Yahoo!ニュース Yahoo!ニュース (出典:Yahoo!ニュース) |
チャンネル登録者数は70万人を超える、人気政治系ユーチューバーのKAZUYA。政治的スタンスは「ライトなライト」(軽い右寄り)を自認する。日本の未来に光をともすべく、難解な政治ニュースや社会問題を軽やかに、明るく、面白く斬る!
◆根拠不明な「トランプ再選」の拡散で見えた、情報の取捨選択の危うさ
ユーチューバーとして活動を始めて、もう10年近くになりますが、情報をいかに選択して発信すべきかが年々難しくなっていくなと感じています。
選択肢があるのは一般的に喜ばしいことです。しかし現代は情報過多で、選択肢も多すぎて何が何だか……。かつては情報を得るといえば人づてに聞くとか、新聞、ラジオ、テレビ、雑誌に本が主流でした。しかし今はネットという情報の大海原が広がり、誰もがスマホという船を手に入れ航海に出ています。
ネットの大海原は私たちに恵みを与えてくれます。日常では知り得ないさまざまな情報をネットを通じて得ることができますし、ネット社会はさまざまなビジネスを生み出し、多くの人に金銭的な利益ももたらしています。僕もまさにその恵みを受けているタイプの人間で、ユーチューバーとして生計を立ててきました。
一方で現実の海と同じように、ネットの海も危険が伴います。見た目が綺麗な魚でも実は毒を持っているとか。ネットにおける情報選択も似たところがあって、とんでもない毒情報があるので、慎重に見る必要があります。何事も鵜呑みにするのは危険なことです。
◆根拠不明なネット情報に飛びつき拡散し続けた人々
昨年11月以降、米国のトランプ前大統領に関連するネット情報は怪しさの極みでした。トランプ氏は大統領選挙が「盗まれた」として、不正だったとの認識を示しています。確かに個別の選挙違反は検挙されており、例えば死んだ母親の名義で投票して息子が逮捕されるなどしています。ただ選挙結果を覆すような大規模不正の証拠は出ていません。
それでも「トランプ勝利」を信じた人々は、根拠不明なネット情報に飛びつき拡散し続けたのです。
例えば「ヒラリーが逮捕された」「ペロシ下院議長が逮捕された」「世界緊急放送がある!」といった情報が、ユーチューブやツイッターで拡散していました。この手の謎の話はたくさん出回っていましたが、なかでも驚いたのが「ドイツで大統領選挙に関連するサーバーを巡って米陸軍とCIAが銃撃戦をして死者が出た!」というものです。ドラマや映画のようで、ドイツの主権はどうなっているんだという話です。そんな話が現実に起こっていたら、世界的な大ニュースになっていることでしょう。
◆衝撃的な情報ほど立ち止まって調べるべき
先に挙げた誰々が逮捕されたなどもそうですが、ネットだけにそんな重大事件の情報が出るなんてことはありません。僕はテレビや新聞も偏っているとは思いますが、ネットは誰でも発信者になれるうえに個人が勝手に書いているだけなので、より注意深く見る必要があると考えています。衝撃的な情報ほどすぐさまリツイートせず、立ち止まってほかにも情報がないか調べるべきでしょう。
ツイッターは匿名の人が多く、誰がどんな意図で書いているのかわかりませんし、無責任に何でも書けます。ユーチューブは再生数至上主義で、金儲けのために思ってもいないことを動画にして視聴者を惑わすことも考えられます。
ご存じだと思いますが、ユーチューバーは再生数と再生時間の多さで収益が左右されます。動画の時間が8分以上になると、自分で広告ポイントを設定できるため(設定してもすべて広告が掲載されるとは限りませんが)、ちゃんと見てもらえる動画であれば収益率が上がります。
テレビも行きすぎた表現等が見受けられますが、一応企業としてやっているわけですから、多少のチェック機能は働きます(万能じゃないけど)。一方でネット動画はよほど逸脱した発言や表現がない限りチェックシステムも曖昧で、広告掲載の審査に落ちることはあっても動画自体は残り続けることが多いです。
◆情報を発信する立場として、踏み越えてはいけない一線
もはや一人1ユーチューブアカウントの時代になり、コロナも相まって芸能人も続々と参入するなかで、競争は激化の一途をたどっています。そうなると結局注目を集めるために過激化していくのは自明の理で、昨年は迷惑系ユーチューバーが世間を騒がせ、逮捕される始末です。
過激なことを言っている、やっている人のほうが目立つのはある意味仕方ないことです。ユーチューブはお金が絡んでいるため、つい過激に走ってしまうのもわからないではありません。
それでも踏み越えてはいけない一線があるのではないでしょうか。
政治系でいえば、米大統領選挙関連で本当かどうかわからない情報をそれっぽく言うことで、実際に再生数が伸びていました。一過性のお金儲けならそれでも成立するのかもしれませんが、長期的にやっていくと考えると汚点になりかねません。
トランプ氏が逆転するかのように煽り続けている人がいましたが、結局起こったのは1月6日の議事堂突入の悲劇、そしてあまりにもあっけない1月20日のバイデン氏大統領就任です。
それでも脱落しない人は3月4日にトランプが大統領に就任するという荒唐無稽な話にすがりつきました。当然何も起こらなかったですけどね……。
◆バランス感覚を持ったうえで、自分と考えが合わない媒体を見よう
発信者にも当然問題がありますし、僕自身も気をつけなければいけないのですが、読み手も衝撃的な情報ほど立ち止まって見るべきです。一番大事なのはバランス感覚です。根本の部分でみな世界観は違いますが、常識としてのバランス感覚は誰しもが持っておくべきでしょう。
バランス感覚を養ううえで、自分と考えが合わない媒体(僕で言うと朝日、毎日新聞等)を見るといいでしょう。今回、「トランプ再選」の話に傾倒した人も、マスコミ不信はわかりますが頭ごなしに否定せず、自分にはない視点があると思って見るとなかなか勉強になりますよ。
今週の一言
バランス感覚を持ったうえで、自分と考えが合わない媒体を見よう
【政治系ユーチューバー・KAZUYA】
動画配信者、作家。1988年、北海道帯広市生まれ。2012年より、YouTubeとニコニコ動画にて「KAZUYACHANNEL」を開設し、政治や歴史、社会問題などのニュースをほぼ毎日配信する。YouTubeのチャンネル登録者数は70万人超、ツイッターのフォロワーは11万人超。『日本人が知っておくべき「戦争」の話』など著書多数
<文/KAZUYA>

(出典 news.nicovideo.jp)
【トランプ再選のデマはなぜ拡散された? 政治系ユーチューバーKAZUYA】の続きを読む