フィンランドのマリン首相は18日、北大西洋条約機構(NATO)に「スウェーデンと同時に加盟したい」と強調した。
詳細はソース 2023/2/19
https://news.yahoo.co.jp/articles/396c1667a8b2973982073fd1abae3d696fc22d72
次世代エネルギーの一つとして、水素の利用に世界的な注目が集まって久しい。
水素を燃料として使う場合、その最大のメリットは、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出しないことにある。水素を燃やしても、生じるのは水である。そのため、いわゆる脱炭素化の観点から、水素は極めて有望なエネルギーとなるわけだ。
したがって、脱炭素化で世界をリードしようと腐心するEUにとっては、水素の利用の推進もまた重要な政策的課題となっている。
水素は「二次エネルギー」(利用のために加工の過程が必要なエネルギー)であり、基本的に水を電気で分解することで生産される。そのための電気を再エネで賄えば、実にグリーンな水素が出来上がる。
周知のとおりEUは、脱炭素化の観点から再エネによる発電を重視している。再エネによって発電を行い、その電力で水を分解して水素を生産できるなら、脱炭素化という観点からは極めて理想的な電力の発電から消費への流れが構築される。
そのためEUは、あくまで再エネによって発電した電力による水素の生産を、普及の基本に据えている。
加えてEUの場合、ロシア産の化石燃料に対する依存の軽減、つまり「脱ロシア化」を図ろうとしていることも、水素の利用に向けた動きに弾みをつけたといっていいだろう。
金融・経済制裁に反発するロシアがヨーロッパ向けの天然ガスの供給を絞り込んだことは、かえってEUの脱ロシア化に向けた意思を強固なものにしたと考えられる。
特にロシアに対する依存度が高かった天然ガスに関しては、米国などからの液化天然ガス(LNG)輸入の増加に加えて、地中海・西アフリカでのガス田開発といった試みが進む模様である。
また天然ガスに代わるエネルギー源も必要となるが、脱炭素化の理念にも適う水素は、EUにとってはまさに打ってつけの次世代エネルギーということになる。
EUの執行部局である欧州委員会が、化石燃料の「脱ロシア化」を掲げて2022年5月に公表した行動計画である「リパワーEU」の中でも、再エネ発電によって生産した水素の利用を広めていく方針が強調されている。
脱炭素化と脱ロシア化の両立を図りたいEUにとって、水素の利用は確かに有効な戦術になりえるのかもしれない。
その水素の利用に向けた実証実験が、アドリア海の沿岸で始まることになった。
中心となるのは、アドリア海に面する人口210万の小国スロベニアの国営電力会社HSEである。このHSE社は2月1日に、自社が主導する水素利用の実証実験を開始するに当たって、EUから2500万ユーロ(約35億円)の補助金を獲得したと発表した。
この実証実験の正式名称は「北アドリア海水素バレープロジェクト」という。いわゆる官民連携のかたちで、水素の利用に向けた研究・開発を後押しすることがその目的である。先導役のHSE社に加えて、スロベニアとクロアチア、そしてイタリア北東部フリウリベネチア・ジュリア州の政府が参加し、さらに34の事業体が参加する。
このプロジェクトの下で、各事業体は水素の生産から利用までの一貫したバリューチェーンを構築し、今後の水素の利用に向けた可能性を探ることになる。
将来的に再エネ由来の水素を年間5000トン生産するとともに、製造業や交通網で用いることが最終目標となる。プロジェクトの期間は6年間が想定され、2023年後半の稼働を目指す。
EUには「ホライズン・ヨーロッパ」という、EU加盟各国の研究・開発投資を支援するための補助金支援プログラムが設けられている。このプログラムの予算は、EUの中期予算(多年次財政枠組み)から拠出されるが、今回、HSEが主導する水素利用の実証実験は、このホライズン・ヨーロッパによる補助金支援を得ることになる。
「北アドリア海水素バレープロジェクト」の全容はまだ明らかではないが、HSE社のプレスリリースによると、このプロジェクトでは鉄鋼やセメントといった素材産業での水素利用の実現を視野に入れている模様だ。素材産業では多くの化石燃料が利用されるため、ここで水素の利用が広がれば、脱炭素化が大いに進むと世界的に期待されている。
特に、鉄鋼業で水素の利用が進むことは、脱炭素化の象徴的な観点からも歓迎される動きとなる。製鉄の過程で、コークス(石炭を蒸し焼きして炭素部分だけを残したもの)は欠かせない材料である。
一方、高炉にコークスを投入して鉄鉱石を溶かす際に、コークスに含まれる炭素と鉄鉱石に含まれる酸素が結合し、大量のCO2が生まれる。その過程で、コークスの代わりに水素を使えば、水が生まれることになる。
この高炉水素還元技術を確立することができれば、脱炭素化に大きく資するとともに、この分野における技術覇権を制することができるだろう。なお日本でも、2030年ごろまでに1号機を実機化し、以降の普及・実用化を目指そうと実証実験が進められている。
そもそも、水素の利用に向けた技術では、日本も勝る点が多い。
その中心である兵庫県の神戸市は、「水素スマートシティ神戸構想」を掲げ、産官学の連携の下で様々な実証実験を行っている。例えば神戸港内の人工島「ポートアイランド」では、2018年に水素燃料によるガスタービン発電の実証実験が行われ、成功している。
それに2022年2月には、オーストラリアより液化水素を積載した運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が帰港、話題となった。同年6月に神戸市内で2カ所目となる商用水素ステーションがポートアイランドに整備されることが決定、2023年春の稼働が目指されている。日本がヨーロッパ勢に後れを取っているというわけでは必ずしもない。
脱炭素化は世界的なメガトレンドであり、その点において水素は期待されるエネルギーである。加えてこの動きは、脱ロシア化という観点からも、ヨーロッパで加速することになった。
水素の利用に向けた技術に関しては、日本が先行している分野も多く、日本の事業者にとっても、ヨーロッパ向けに輸出の機会が増える可能性は高いだろう。
そもそも水素の実用化にあたっては、インフラの整備を含めて、様々なハードルを越える必要がある。そのためには政府による巨額の支援が不可欠であるが、この点に関しては財政に余力があるヨーロッパの方が優位だろう。すでに歳出の2割強が国債費となっている日本の場合、産業政策に費やすことができる財源はそれほど多くない。
他方で、水素の調達という観点からすれば、日本とヨーロッパはライバル関係にある。再エネ発電による水素の生産を目指すEUだが、実際はその生産に限界があると考えており、海外からの輸入を視野に入れている。水素の輸入に関しては、天然ガスと同様に、各国単位ではなくEU27カ国として輸入を行うスキームも念頭に入れている。
日本もまた、国内での生産だけではなく、海外からの水素の輸入を志向している。水素を輸入するうえで、日本とEUはライバル関係にある。
需要家としての経済規模は、日本よりもEUのほうがはるかに大きい。主な輸入先としてはオーストラリアや中東が想定されているが、そうした国々との間で戦略的な友好関係を構築する必要がある。
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欧州議会は、2035年から内燃機関搭載の自動車と小型商用車の新車販売を事実上禁止する法案を可決した。EU加盟国の承認を得て正式採用となる。
【画像】日本車はどう対応する?欧州排出ガス規制【日本メーカーの最新EVたちを写真で見る】 全80枚
この法案では、2030年までに自動車のCO2排出量を55%(2021年比)、商用車の排出量を50%削減するという中間目標を掲げており、議員による本会議の投票結果は賛成340票、反対279票、棄権21票であった。
ただし新車の生産台数が年間1000~1万台、または商用車の生産台数が年間1000~2万2000台の少量生産メーカーは、2035年末までは規制の適用を免除される可能性がある。年間1000台未満のメーカーは、その後も引き続き免除される見込みだ。
欧州委員会は2025年までに、新車と商用車のライフサイクル全体でのCO2排出量を評価・報告するための方法を提示する予定である。その後2年ごとに、ゼロ・エミッションに向けた進捗状況を評価する報告書を発行する。
また、2026年12月までに、法的に定められた排出量規制と実際の燃料・エネルギー消費量データとのギャップを監視し、メーカー固有のCO2排出量を調整するための方法を策定する。
欧州議会の声明によると、ゼロ・エミッション車や低排出ガス車(0~50g/km)を多く販売するメーカーに対する既存のインセンティブは、販売動向に応じて調整されることになるという。バッテリー駆動の電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及が進めば、これらのインセンティブは縮小する可能性が高い。
この法案は2022年10月に合意されたもので、今後数週間以内に欧州連合理事会に送られ、正式な承認を受けることになる。
欧州議会の主席交渉官であるヤン・ハイテマ氏は、この法案について次のように述べている。
「この規制は、ゼロ・エミッション車および低排出ガス車の生産を促進するものです。2030年の目標を野心的に修正し、2035年のゼロ・エミッションを目標とします。これは2050年までに気候変動抑制に到達するために極めて重要です」
「この目標は自動車業界にとって明確なものであり、自動車メーカーにとっては技術革新と投資を刺激するものです」
「ゼロ・エミッション車の購入と運転は、消費者にとってより低コストなものになり、中古車市場もより早く追随することになるでしょう。持続可能な運転が誰にとっても身近なものになるのです」
現在、多くの自動車メーカーが排出ガス削減に向けた独自の目標を持っており、新しい法規制に歩調を合わせつつある。
例えばフォードは、2026年までに欧州向けのラインナップを完全にゼロ・エミッション対応(PHEVまたはバッテリーEV)とし、2030年からはEVのみを販売する計画だ。フォードは2021年に初の量産型EVであるマスタング・マッハEを発売し、今年後半にはフォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォームをベースにした新型クロスオーバーを投入する予定である。
ルノーとプジョーも2030年までに欧州での完全電動化を目指し、フォルクスワーゲンは2030年までに1台あたりのCO2排出量を2018年比で40%削減することを目指している。
高級車メーカーも電動化を進めている。ボルボの2022年の新車販売台数61万5121台のうち41%がPHEV(23%)とEV(18%)で、ミニのベストセラー車はミニ・エレクトリックだった。
ルノー傘下のダチアは、価格優位性を維持するためにも軽量で燃費の良いエンジン車を製造することでCO2目標を達成する計画である。それでもダチア唯一のEVであるスプリングは、2022年に欧州で数多く売れたEVの1つとなっており、クプラ・ボーン、ヒョンデ・アイオニック5、ポールスター2といった他社製EVを抑えている。
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