ドナルド・トランプ前大統領はすでにフロリダ州の豪邸に移り住んだが、ゴルフ三昧の生活で収まる人ではないだろう。
周囲の人が語る話の中に、興味深い動きがあるので記したい。
まず1月中旬から話題に上がっていた「愛国者党=パトリオット・パーティ」の設立についてだ。
トランプ氏の顧問であるジェイソン・ミラー氏が書面で「(愛国者党の設立を)私たちは支持していませんし、かかわりもありません。この動きについては報道で知るだけです」と公表。
トランプ氏が自ら積極的に新政党を立ち上げる動きは、少なくとも当面はなさそうだ。
ただ愛国者党については1月25日、フロリダ州でジェームズ・デイビス氏という政府職員が「MAGA(米国を再び偉大な国に)愛国者党」という団体を設立して連邦選挙管理委員会に届け出た。
トランプ氏は同党とは距離を置くつもりだが、デイビス氏は全米50州で草の根運動を展開して、次回大統領選(2024年)にトランプ氏を再選させるために活動していくつもりでいる。
保守派の中での「トランプ人気」は相変わらず強いものがある。
デイビス氏がフォックス・テレビに新党結成の理由を話している。
「民主党と一緒になってトランプ氏を弾劾しようとしています。今後、我々は同氏を再選させる運動だけでなく、(全米レベルで)多くの候補を擁立していくつもりです」
トランプ氏からソッポを向かれた団体であるが、独自にトランプ再選を目指していくという。
さらにデイビス氏は昨年11月の選挙で7400万人以上の有権者がトランプ氏に投票した事実を踏まえ、「その中から何か新しいことを行いたい人が集まってくるはず。何割かは来ると信じている」と胸中を語っている。
その動きが最終的にトランプ氏を動かすことになるかは未知数だし、米議会上院での弾劾裁判の行方によってはトランプ氏に有罪判決が出され、再選どころの話ではなくなる可能性もある。
そのほかにもトランプ氏の周囲からはいくつかの話が聞こえてきている。一つはケーブルTV局の買収である。
保守系フォックス・ニュースのライバル局となるような新テーブルTV局を立ち上げて、自身が出演者となって語り尽すという話だ。
また1月6日の連邦議会議事堂の暴動後、トランプ氏のツイッターとフェイスブックのアカウントが停止されたままなので、自分でSNSを新たに立ち上げるというアイデアも出ている。
停止前のツイッターのトランプ・フォロワーは約8800万人、フェイスブックの方は約3500万人という数字なので、何割かが戻ってきたとしても影響力は大きい。
前出のジェイソン・ミラー氏はさらに、ポッドキャストのニュース番組に出演した時、トランプ氏が本当に力を入れるべき要務の話をした。
「私はトランプ氏が選挙システムの件で、変革を起こすリーダーになると期待しています」
「いままさに変革をスタートさせる機運が強まっており、この動きは米国政治にとって大変重要です」
これはもちろん憲法改正を意味する。多くの方はご存知かと思うが、米大統領選は総得票数の戦いではない。
選挙人制度によって勝敗が決する。
選挙人は全米50州と首都ワシントンDCに人口比で割り当てられており、計538人。人口の最も多いカリフォルニア州には55人、人口の少ないノースダコタ州やワイオミング州にはそれぞれ3人の選挙人が分配されている。
開票は州ごとに行われ、勝った候補は州に割り当てられた選挙人をすべて獲得し、合計が270を超えた時点で勝者が決まる。
トランプ氏はジョージア州やペンシルベニア州を含め、複数州で不正が行われたと主張し続けた。
選挙人数では最終的に306対232でバイデン大統領に負けるわけだが、総得票数でもバイデン氏に約700万票もの差をつけられた。
また2016年の大統領選ではヒラリー・クリントン氏の方が約286万票も多くの票を獲得していながら、選挙人システムのカラクリでトランプ氏が勝つ結果となった。
こうした流れをみると、「大統領選は総得票数で決めるべき」との内容を含めた法改正を推し進めたがるのは共和党ではなく、むしろ民主党であるかに思える。
これは仮定の話であるが、憲法改正によって選挙人制度を改正し、日本などと同じように総得票数で争うことにした場合、将来、共和党候補は簡単には勝てない状況に陥らないとも限らない。
党派を越えて全米レベルで広範な支持を集めたドワイト・D・アイゼンハワー大統領(民主党)やロナルド・レーガン大統領(共和党)などは例外として、僅差の勝負になる選挙では、今後民主党が有利になる。
というのも、共和党は白人の保守層に支持基盤があるが、民主党候補は黒人やアジア系、ヒスパニック系等のマイノリティーから支持をとりつけており、今後マイノリティーの人口が増えていく米国では民主党候補がどうしても有利になる。
こうした傾向は特にカリフォルニア州で顕著だ。
すでに非ヒスパニック系白人の割合は39.7%にまで落ちている。
一方、ヒスパニック系(混血含む)と黒人、アジア系の合計は51.7%に達しており、こうした社会背景の中で保守派の候補が勝つことは多難だ。
そのためトランプ氏は最初から同州で勝つことは無理だったわけだ。
いずれにしても、憲法改正は容易ではない。物事を変えることにかけては他国より可能なことが多い米国でさえ、憲法改正は難しい。
ミラー氏が目指しているのは州ごとによる変革と言われるが、まだ詳細は明らかになっていない。
1月25日に公表された首都ワシントンのシンクタンク、ピュー研究所が行った世論調査結果をみると、回答者の29%だけが今でもトランプ氏の支持を打ち出していた。
一方、68%は「主要政党には残ってほしくない」と回答しており、トランプ人気は陰りをみせた。
1月25日にトランプ氏はフロリダ州で個人事務所をオープンさせ、ワシントンを出発する前には、「何らかの形で戻ってくる」と述べたが、同氏の人気が再燃するかどうかは難しいところだ。
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(出典 news.nicovideo.jp)
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