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北朝鮮はキム一族以外の人に政権交代するべきです。

 今年の軍事パレードに出現した兵器を見ると、通常兵器の近代化を始めたことが明確に分かる。

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 北朝鮮軍は、兵器の欠陥をなくし、南北統一のための軍事力を作り上げ、これまでの戦略を大きく変えようとしている。

 北朝鮮(以後、北)は、国内事情が三重苦であっても、ミサイルを開発し増産している。これらの兵器とパレードで見せた金正恩委員長の笑いを重ね合わせると、不気味な感じがする。

 重点的に近代化を始めたのは、地上軍の攻撃兵器だ。

 北人民に生活窮乏状態を強いていながら、軍事力を増強する狙いは何なのか。そして、北軍が、短距離弾道ミサイルと近代化した通常兵器を増強して、どのように軍事戦略を作り変えようとしているのか――。

 これらについて、元陸自幹部学校戦略教育の経験を基に、南侵シナリオ分析を実施してみた。

観閲台上で近代化した兵器を見て満面の笑顔を見せる金正恩

(演説で、国が三重苦だとして涙ぐみ、一方では多額の軍事費をつぎ込んで、近代化に進み始めた兵器の行進を見て笑顔を見せる金正恩。この笑顔の先に見えるのは、北による韓国の軍事占領なのだろう)

1.北朝鮮軍の戦術変貌

 金正日総書記時代には、「北が韓国を攻撃すれば、米韓軍から何倍にしてやり返される」というのが、北軍の当時の実力であった。

 例えば、北が、ソウルに砲撃をすれば米韓空軍戦闘機が空爆によりやり返す、南北軍事境界線を越えて攻撃すれば、反撃されて攻撃が頓挫する。戦闘機が上空に上がれば簡単に撃ち落される。

 防空ミサイルは戦闘開始直後に破壊され、全く役に立たない。

 米国の介入を抑止できる核やICBM(大陸間弾道ミサイル)はない。後方支援基地である在日米軍基地を叩くことさえできないのが実態であった。

 金正恩氏がトップに就いて、2019年までに、GPS誘導の短距離弾道ミサイル、超大型多連装ロケットの実験を成功させたことで、米韓軍の空軍基地やミサイル基地などに対して、同時に奇襲射撃することが可能になった。

 つまり、ミサイルロケット攻撃だけで、米韓国空軍の滑走路において、それらの作戦機を破壊することができる。

 だが、これに連携して地上軍が南北軍事境界線を越えてソウルを占拠し、その後、釜山まで短期間に占領するためには、歩兵と特殊部隊の攻撃では速度が遅く、途中で攻撃が止まる可能性が高い。

 例えば、ソウルの大部分を占拠しても、漢江を越える時に、攻撃がストップしてしまう。

 このような欠陥があるため、韓国の要域を点では占領できるが、北から続く面で占領することはできない。

 そこで、北は、韓国軍の砲撃を受けても攻撃できる近代的な戦車や装甲機動車が必要になる。

 昨年までは、これらの兵器が時代遅れのポンコツであったが、今年の軍事パレードを見ると、近代的な戦車部隊と装甲機動部隊に変化しつつある。

 これらの数量はまだ少ないが、今後増加させれば、ミサイルなどと連携させて攻撃し、短期間に釜山まで突進することが可能となる。

2.金正日時代までの南侵シナリオ

北軍による南侵は、侵攻開始と同時に失敗する

(1)戦争の口火は、北の火砲がソウルや米韓軍の陣地を射撃することから始まる

 射程が短い火砲は、韓国軍の監視所や第1線陣地を射撃する。射程が長い火砲は、ソウルに向けて射撃するだろう。

 ソウルの漢江付近まで届く火砲は、砲身が長い172ミリ自走加濃砲、240ミリ多連装ロケットであり、多くても軍が保有する総数2万門の火砲のうち、わずか500門にも満たない。

 圧倒的な航空優勢を獲得している米韓空軍戦闘機が航空攻撃を実施して、容易に破壊できる門数だ。

(2)第1線軍団歩兵部隊による軍事境界線突破攻撃

 北軍火砲の射撃で、韓国軍陣地を一時的に制圧した後、4個の第1線歩兵軍団が坑道陣地から出て、南北軍事境界線を徒歩で越えて攻撃する。

 装甲防護力がない歩兵の攻撃は、韓国軍が設置した境界線付近の地雷などの障害物によって、前進が停止させられる。

図1 北朝鮮地上軍各軍団の配備

(3)米韓軍の戦闘機や砲撃による反撃

 北軍は、境界線付近の障害処理に手間取っているところを、米韓軍作戦機による航空攻撃や砲撃により大きな被害を受ける。北軍の攻撃は、早期に頓挫して停止する。

(4)米韓軍の反撃に対する北軍の防空戦闘

 北の防空ミサイルは、時代遅れであり、米韓軍の戦闘機を撃ち落とすことはできない。

 また、北の戦闘機は、「MiG-29」×18機を除いて、時代遅れのものであり、上空に上がれば、米韓軍戦闘機に撃墜される。

F-15戦闘機空対空ミサイルの餌食だ。航空優勢は、米韓空軍が圧倒的に確保する。海上の制海権も同様だ。

図2 金正日時代の南北の戦い例(イメージ

3.短距離ミサイル完成後のシナリオ

地上軍の攻撃速度が遅いため、ソウル占拠までが限界か

(1)戦争の口火は、ミサイルロケットによる奇襲射撃により始まる

 北は、2019年までに完成させたGPS誘導の短距離ミサイルや超大型多連装ロケットを、韓国全土の米韓軍特に空軍と海軍基地に対して、正確に命中させ破壊する。

 米韓空軍基地が、北軍の奇襲攻撃を受けると、大きな被害を受ける。

 この場合、米韓軍の戦闘機や軍艦が破壊されるであろう。そうなると、戦闘機による反撃が不可能になる。

(2)砲兵部隊の射撃は、長期間可能

 韓国軍が反撃に使用する戦闘機や火砲陣地が事前に破壊されていれば、北軍の火砲は、弾薬がなくなるまで撃ち続けることができる。

(3)第1線歩兵軍団による軍事境界線突破

 2018年に行われた2回の南北首脳会談の取り決めで、南北は、陸上の軍事境界線付近の監視所や障害物を取り除き、南北軍事境界線上空を飛行禁止にした。

 情報収集と監視ができなくなり、海上の北方限界線一帯を共同パトロール海域にした。

 このことにより、北軍が南侵する場合の障害物のかなりの量が取り除かれた。つまり、北軍が軍事境界線を越えて南侵する場合、阻害するものが減ったことになる。

(4)旧式の機甲部隊や装甲化部隊による突進

 第1線歩兵軍団が韓国の領土の要点を奪取する。上手くいけば、ソウル市街地まで占拠できるかもしれない。

 だが、ソウルの南を流れる漢江を超えて南下することは難しいだろう。

 その後、第1線軍団の後方にいた旧式の戦車や装甲車部隊が、新たに戦闘に加入して、南侵を加速させる。

 北軍の旧式の戦車や装甲車の攻撃は、韓国軍対戦車兵器により、撃破され、破壊される可能性が高い。攻撃速度は遅く、米韓軍の反撃を受けやすい。

 各部隊指揮官ジープで移動するので、戦車や装甲機動車と一緒に動くことはできない。指揮所は、くぼ地に天幕を張って作られ、砲撃を受ければ木っ端みじんに破壊される。

 移動の時は指揮所の設定や撤収に時間がかかれば、各部隊の攻撃速度を停止させることになる。

図3 短距離ミサイルが完成した場合の南北の戦い(イメージ

 北のミサイルロケットに攻撃されて、早期に韓国空軍基地が破壊された場合には、日本に駐機する米軍戦闘機や韓国から避難してきた米軍戦闘機が、北軍を攻撃することになるであろう。

 米空軍機が日本から飛び立ち、北軍を直接攻撃することが求められる。

 日韓関係の悪化が継続していれば、「日本からの出撃はやめろ」という日本国民の声が高まるだろう。

4.近代的機動部隊に変貌後のシナリオ

侵攻開始後、釜山まで一気に突進が可能か

 2の内容のほかに、次の事項の能力が加わる。

(1)北の短距離ミサイルが韓国全域の軍事基地を射撃し、この効果が持続している間に、大量の戦車や装甲車などが、電撃戦によって韓国全土を蹂躙することが可能になる。

 この場合、北地上軍の4個機械化軍団(装甲車で戦う部隊、1個軍団には3~5個の機械化旅団で編成、3万~5万人規模の部隊)、1個機甲軍団(戦車で戦う部隊、約3万人規模の部隊)、2個自走砲旅団が、釜山に向かって一斉に進撃する。

 10万~12万人の特殊部隊も、短距離ミサイルの射撃や装甲機動部隊の前進と連携して、攻撃の目標や侵攻経路上の軍事的要域や都市を攻撃して占領する。

(2)新型の戦車や装甲機動車は、韓国軍の砲兵部隊や対戦車ミサイルの攻撃を受けると、相当の被害は予想されるが、攻撃前進を止めることはなく、前進が可能である。

 これらの指揮官軽装甲機動車に乗車して、戦車等と同行して指揮をしながら移動できる。

(3)自走の対戦車火器が戦車などに同行すれば、米韓軍の戦車が行く手を塞いで、攻撃してきても、戦車と対戦車兵器により、これらをかなり撃破できる。

(4)新型防空ミサイルのエアカバーがある範囲を前進できる

 2017年に実験に成功し、今年出現したロシア名「S-300」防空ミサイルは、射程内に入ってきた米韓軍戦闘機の撃墜が可能だ。

 これまでは、米韓軍機が圧倒的な航空優勢をとっていたが、これからは、この防空ミサイル生きている限り、米韓軍機の航空攻撃はなかなか難しくなる。

 中国がロシアから購入している最新型の「S-400」ミサイルを北が購入すれば、防空能力は飛躍的に高まる。

 ただし、北の機動部隊がこのエアカバーを越えて攻撃すれば、米韓軍の防空ミサイル戦闘機にやられてしまう。

図4 ミサイルと地上軍機動部隊と連携した南北の戦い(イメージ

 北の南侵の速度が早く、くい止めることができない場合、在韓米海空軍は、日本に一時避難ということもある。

 避難してきた空軍戦闘機が、日本から発進して直接北軍を攻撃すること、韓国軍に対して、弾薬などの兵站支援を求められることも予想される。

5.新工場が完成、弾薬量産

 北は、今年の3月砲兵部隊による射撃の写真を公開した。

 火砲の射撃が写るこの写真は、合成を重ね、多くの火砲が射撃し、空砲の火炎を出して凄みを見せ、多くの弾薬を発射しているかのように見せかけていた。

 だが、写真をよく見ると、弾薬箱や薬きょうの数が極めて少ないことから、今年の春までは、北には、戦える弾薬がないと評価した。

 その後、国連制裁を受け、コロナ禍においても、5月に順川の燐酸肥料を製造する工場を完成させた。

 私は、この工場が、化学肥料も製造するが、大部分は弾薬やミサイルの個体燃料を製造する工場であると評価している。

 工場の完成後、多くの弾薬の製造を始めただろう。韓国軍と戦うために、弾薬が増産されて、逐次備蓄されていると思われる。

6.北軍の新戦略は韓国の早期併合

 北は、国連制裁を受け、コロナ禍で三重苦と言われる深刻な国内事情にあっても、ミサイルロケットの開発を進め、地上軍の攻撃を主体とした兵器の近代化に手を付け始めた。

 中露の支援を受けたとしても、多額の費用はかかるものだ。

 これまでして、何のために軍事力の強化を進めるのか。この理由は、北は核ミサイルを保有したが、次に韓国に対して戦争を仕掛け勝利するためには、軍事力の欠陥の改善を図ることが必要だからだ。

「これまで成し得なかったことを金正恩将軍様が南北を赤化統一させた」と朝鮮の歴史に刻みこむのが、最終的に達成したい目標なのであろう。

 北は、軍事力を使って、何としてでも韓国を占領するという強い意志の現れだ。

 今後、韓国が米国からも見放され孤立し、在韓米軍が縮小され、あるいは、撤退すれば、数日後には、北は、南北の軍事境界線を越えて進撃してくるだろう。

 軍事的合理性から判断すれば、韓国は釜山まで短期間で占領されてしまう可能性は十分ある。

 文在寅政権が、南北境界の障害等を取り除き、米韓合同軍事演習を極端に減らし、韓国自体、孤立に向かっていること、北が攻撃的な兵器を増強している以上、半島有事は早まると見ておくべきだろう。

 ことを起こす時期は、北の要求を多く受け入れる、文政権の期間中ということになる。

 韓国全土が同時に攻撃されることになれば、在留邦人保護は、安全な地域に避難したものを保護する計画から、砲弾など落下している中で保護する計画まで考えておかなければならなくなる。

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10月10日の軍事パレードに姿を見せた金正恩委員長(提供:KCNA/UPI/アフロ)


(出典 news.nicovideo.jp)