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気が抜けない。

(舛添 要一:国際政治学者)

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 当選確実の報道で勝利宣言をし、バイデン候補は政権移行への準備を着々と進めている。マクロン仏大統領、メルケル独首相、ジョンソン英首相など各国首脳も、すでにバイデン「次期大統領」に祝意を伝えている。菅首相も、12日午前には電話会談し、日米同盟の強化と「自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて」協力することで合意した。

 しかし、トランプ大統領は、選挙に不正があったとして敗北を求めず、法廷闘争を続ける意向を示している。ポンペオ国務長官も、「トランプ政権2期目への政権移行が滞りなく行われる」と述べ、選挙の手続きはまだ終わっていないと強調している。

 1月20日に次期大統領が無事に着任できるのか、まだ暫くは混乱が続くと思われる。

米国の混乱を見て香港の民主派議員「排除」に乗り出した中国

 それまでに政権以移行の作業を進めるには、連邦施設を管理する一般調達局(GSA、General Services Administration)の認定が要る。しかし、トランプ大統領が任命したエミリー・マーフィGSA長官はまだその認定をしていない。そのために、準備が遅れ、安全保障上の機密事項の伝達もできない状況である。

 2000年大統領選挙でも同様な事態が生じ、それが安全保障体制の早期確立を遅らせ、翌年の同時多発テロに繋がったとされている。

 11月11日、香港政府によって民主派議員4人が立法会の議席を剥奪された。これは習近平政権の指示であるが、この措置に抗議して、民主派議員全員が議員辞職した。立法会の構成は、親中派が41人、民主派が21人、欠員が8人であり、民主派全員が抜けると、三権分立は機能しなくなる。

 中国政府は、アメリカが政権移行期で混乱しているタイミングを狙って、この強硬措置を採ったと思われる。大統領選の決着が来年の就任式までもつれ込むとすれば、3カ月にもわたって、アメリカ政府が機能しないことになってしまう。

 南シナ海などインド太平洋への進出を図る中国にとっては、野望を実現する絶好のチャンスなのである。そこで、アメリカとしては早期に選挙結果を確定させる必要があるが、トランプ大統領は、国益よりも個人的利害を優先させる姿勢を崩していない。

トランプ以上に中国に強く出る可能性あるバイデン

 しかし、アメリカも世界もバイデン政権の誕生を前提として動き始めている。バイデン外交は、トランプ外交をどう変容させるのか検討してみたい。

 最大の課題は米中関係である。第二次大戦後続いてきたパックス・アメリカーナ(アメリカの平和)を脅かしているのが中国である。長期独裁体制を敷いた習近平は、中華人民共和国建国100年後の2049年には世界一の大国になることを目標に掲げ、パックス・シニカ(中国の平和)を樹立するために全力をあげている。

 中国は、経済力では日本を抜いてGDPで世界第二の大国になっている。軍事力の拡充も凄まじく、航空母艦の建造など海軍力を拡張させ、海外介入能力を向上させている。経済力や軍事力強化の背景には、技術力の急速な向上がある。

 その中国の台頭を抑えるべく、トランプ政権は保護貿易主義に走り、情報先端産業の担い手であるファーウェイなどを攻撃してきた。

 バイデン政権になったら、対中強硬路線が一気に緩和されると考えるのは早計である。人種やLGBTに対する差別に対しては、民主党政権のほうが厳しい対応をとってきた。「Black Lives Matter」を主張する層が、今回の大統領選でバイデン候補の勝利に貢献した。中国における人権侵害や香港の一国二制度の形骸化に対しては、トランプ政権以上に強く当たるであろう。

 しかし、14億人という人口をかかえる中国が魅力あるマーケットであることには変わりない。極度の貿易摩擦を回避しながら、アメリカの国益をどう守っていくのかがバイデン政権の腕の見せ所である。

 トランプ大統領は、自らの新型コロナウイルス対策の失敗を棚上げして、「中国ウイルス」と呼び、中国にすべての責任を負わせようとした。バイデン政権はアメリカコロナ対策を充実させることに力を注ぐ意向であり、コロナを巡っては米中間の感情的対立は緩和されるであろう。

国際協調に舵切るバイデン

 日中間の経済関係は緊密であり、原材料の供給、製品のマーケットとして相互依存関係を深めている。政治的にも早急に解決すべき懸案の問題もない。

 尖閣諸島への中国艦船の接近回数が増加しているが、12日の日米首脳の電話会談で、尖閣がアメリカによる防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用範囲であることを確認している。南シナ海で行っているように、中国は既成事実を積み上げていって自国領土とする手を使うが、それを阻止するには、自らの防衛努力と共に日米安保体制を盤石に保つことが肝要である。

 その意味で、菅首相との電話会談で、歴代政権と同様にバイデンが「尖閣諸島アメリカも守る」と明言したことは、中国の野望をくい止めるために意味がある。中国は、当然のことながらこれに反発し、日米安保は冷戦時代の遺物だと酷評した。

 トランプ政権は、アメリカ第一主義で、同盟国との関係を毀損してきた。駐留米軍の一方的な撤退を決めたり、駐留米軍経費の負担増を求めたりしたからである。海外から米軍を帰国させ、同盟国に経費を払わせたと吹聴して支持率を上げるためである。

 外交や安全保障の理論的素養もないそのようなポピュリズムにあきれ果てて、ティラーソン国務長官、マティス国防長官などの側近が政権を去って行った。シリアから一方的に米軍を撤退したことが、この地域を不安定にし、ロシアのプレゼンスを高めることに繋がったのである。

 バイデン政権の大きな特色は、トランプ政権のアメリカ第一主義から国際協調路線へと転換することである。トランプ大統領は、オバマ政権の外交成果を覆そうとして、TPP、パリ協定、イランとの核合意から脱退した。

 バイデンは、地球温暖化対策に熱心であり、パリ協定に復帰することを決めている。ヨーロッパはこの姿勢を歓迎しており、2050年までに温暖化ガスの排出を「実質ゼロ」にするというカーボンニュートラル宣言をした菅首相にとっても好都合である。

 また、中東政策については、イランとの核合意にも復帰すると思われる。しかし、トランプ政権が推し進めてきたイラン封じ込め政策、イスラエル優遇政策、イスラエルUAEバーレーンとの国交樹立を単純にオバマ時代に戻すことは困難であろう。ヨーロッパや日本と協力しながら、中東政策を再構築することが必要になってくる。

 国際機関については、トランプ政権が中国寄りだと批判して脱退したWHOに、バイデン政権は復帰すると明言している。

 TPPについては、この4年間で貿易をめぐる状況が大きく変化しており、復帰ということはなさそうであるが、トランプ流の保護主義を続けることはなかろう。米中貿易関係についても、この姿勢がプラスに働くことを期待したい。

 中国やロシアは、バイデン陣営に対して何のシグナルも送っていない。プーチン大統領は、トランプ政権と一定の良好な関係を維持してきただけに、バイデン政権の出方を待っているのであろう。トランプ政権下で、ロシアヨーロッパや中東で影響力を増すことに成功した。バイデンが、欧州同盟国と協力してロシアの力をそぐことができるかどうか。息子のウクライナ疑惑などがあり、容易にはロシアとの関係について動くことはなかろう。

サプライズよりも手堅さ

 北朝鮮については、トランプ大統領は、金正恩との首脳会談で人気を博そうとしたが、結局何の成果もなく終わってしまった。残ったのは、首脳会談の記念写真のみである。バイデン政権にとっては、北朝鮮は優先度の高いテーマではない。

 このように考えてくると、北方領土の返還も拉致問題の解決も、バイデン政権になったからと言って突破口が見出されるわけではない。

 菅首相は、バイデン大統領誕生後、できるだけ早い時期に訪米し、日米首脳会談を行う予定であるが、あまり大きな成果を上げることは期待しないほうがよい。同盟国の中で、どの首脳がワシントンに一番乗りするかなどということを優先的に考える必要もない。大事なのは会談の中身だからである。

 ヨーロッパと同様に、アメリカも日本も新型コロナウイルスの感染再拡大の波が押し寄せている。当面は、日米両国とも、当面はコロナ対策に忙殺されるであろう。トランプのように予測不可能で世界を混乱させる要素が少ないだけ、まだバイデンのほうがましだと言ってよかろう。

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[もっと知りたい!続けてお読みください →]  バイデン電話会談「菅首相より4分長い」で沸く韓国

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hinode

hinode

もたついてもバイデン政権に移行してもつけ入りまくれるし。

vippo

vippo

トランプがアメリカファーストを考えるならどっちに転がってもいいようにしておくべきなんだがね

ゲスト

ゲスト

↑確かに正論で草

.43

.43

「政権簒奪にもたつく中国」の間違いでは? 舛添はまず「不正な手段で国家をのっとろうとするヤツに政権を移譲したがるバカはいない」ということから学ぼうか。

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訂正 「バカはいない」→「バカはお前の同類しかいない」

目玉の親父

目玉の親父

中国が隙に付け入るからさっさと政権移行しろと、公金横領の舛添は誘導したいのだろうけど、中国が介入したから大統領選で不正が横行してグダグダになったんでしょ。

ChodorinoSuijin

ChodorinoSuijin

ん?まだ息してたのか?舛添...(^_^;) さっさと消えろ!

cookieone

cookieone

トランプは依然として大統領。チャイナを念頭に置いた国家非常事態宣言を発令した。安全保障にかかわるチャイナとのあらゆる取引を禁止、摘発に乗り出す。選挙結果に拘わらずバイデン親子を刑務所送りにする。日本企業もとばっちりを受ける。

KAMISAN

KAMISAN

もたつく原因作ったのも中国なんですがそれは…?

残酷天使

残酷天使

サプライズよりも手堅さ?菅政権には逆のこと言ってる記事があったような。

エフィア

エフィア

選挙の不正は不明だけど、BLMもコロナも中国が絡んだ原因なんですが…。中国は、ダムの洪水の復興はどうなったんですか?それこそ全くニュースにならない隠し事だと思います。

新世暇ディン大将軍

新世暇ディン大将軍

そもそもその原因作ったのが中国なんやがwというか付け入るスキを与える為に不正選挙したんじゃねえの?w売国電になったスキどころがら空きになるんじゃないの?w

BCTA

BCTA

グレタ君がうんともすんとも言ってこないのが不気味すぎる

ゲスト

ゲスト

↑グレタ好き過ぎるやろ。