(出典 afpbb.ismcdn.jp)


どうなるのかな?

(北村 淳:軍事社会学者)

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 アメリカ大統領選挙トランプ大統領が敗北しバイデン政権が発足する見込みが強まったため、アメリカ海軍は再び大幅に戦略を練り直さなければならない事態に直面してしまった。

 トランプ陣営は2016年大統領選挙期間中より「偉大なアメリカの再興」の具体的方策の1つとして「大海軍の復活」を打ち出していた。実際にトランプ政権が発足すると、355隻艦隊を構築して海軍力の増強著しい中国海軍に対抗する方針を推進した。

 その後、「355隻艦隊では中国海軍に対抗するのは困難」という海軍関係者たちの突き上げもあり、数カ月前にはエスパー国防長官が、355隻ではなく500隻艦隊(ただし無人艦艇をも参入する)を可及的速やかに生み出そう、というアイデアを公言し始めた。

 ところが、先週実施され開票が始まった大統領選挙では、どうやらバイデン前副大統領選挙人の過半数270名以上を獲得した模様である。来年(2021年1月20日からは民主党バイデン政権がスタートすることになりそうだ。

「模様」「なりそうだ」というのは、本稿執筆中(米国時間11月9日)になっても、いまだに米全州での選挙公式勝敗が出揃っているわけではないし、主要メディア間でも大統領選挙人獲得票がバイデン290票対トランプ214票(AP、 FOXニュース、 フィナンシャルタイムズ)であったり、バイデン279票対トランプ214票(ABCCNNNBCニューヨークタイムズワシントンポスト)と一致しているわけではないからだ。

 大統領選挙と同時に行われた連邦議会上院選挙、同じく下院選挙の結果もいまだに確定していない。11月9日時点での上院勢力確定数は民主党48対共和党48で残り4議席の行方は確定していない。下院勢力確定数は民主党215217共和党198~201民主党が過半数である218議席を獲得することはほぼ確実であるものの確定したわけではない。

 したがって「民主党大統領に、下院が民主党優勢で、上院が共和党優勢」という勢力図になるのか「民主党大統領に、上院と下院ともに民主党優勢」という構図になるのか、確定するまでには今少し時間がかかりそうである。

国防費削減は必至

 いずれの勢力図が誕生しようとも、とりわけ米海軍関係者たちは「オバマ政権下で8年間にわたって副大統領を務めてきたバイデン氏と、強烈なリベラル派で初の女性副大統領に就任するハリス氏の政権が発足することにより、国防予算に大鉈が振るわれることは確実である」と危惧している。

 オバマ政権は、危殆(きたい)に瀕しつつあったアメリカ財政を立て直すために歳出強制削減措置を開始した。すなわち、連邦機関の歳出を22%削減するという方策である。そして、歳出削減22%の半額以上の13%が国防関連費とされた。

 この強制削減措置は、国防総省や軍当局が、国防関連費のうち「削減する項目」と「据え置く項目」、そして場合によっては「増額する項目」を取捨選択して、結果として13%の削減を達成するのではない。すべての国防予算に関して一律13%カットしなければならないのである。

 オバマ政権に取って代わったトランプ政権は、アメリカ国防戦略を抜本的に修正して、アメリカの主たる仮想敵を中国とロシア(とりわけ中国海洋戦力)に設定し、軍事大国間での衝突に勝利を収めるために「355隻艦隊」をはじめとする強力なアメリカ軍を再興する方針を打ち出した。

 そして、オバマ政権下で開始された強制削減措置は2022年まで続くことになっていたが、トランプ政権下では着実に国防予算は拡大された(国防総省予算~海外での作戦費用や駐留費などを除く基礎的予算~は2017会計年度が5232億ドル、2018会計年度が5745億ドル、2019会計年度が6162億ドル、2020会計年度が6333億ドルである)。

 これに対してオバマ政権下では2012会計年度の5304億ドルから2015会計年度の4961億ドルまで国防費が減額された。そのうえ、13%の強制削減措置まで課されたという“実績”がある。そのためバイデン政権下では、6000億ドルを超えた国防予算が大幅に削減されることは確実であると考えられている。

論拠を失う「大海軍再興」

 バイデン政権が発足すると、トランプ大統領が打ち出した中国とロシア仮想敵と明言しての国防戦略はおそらく改定される可能性が高い。

 ただし、中国に対する姿勢を180度転換して妥協的になるというわけではない。

 バイデン氏のかねてよりの主張によると、中国は敵ではなく競争相手であり、人権問題に環境問題、それに知的所有権をはじめとする不公正な貿易問題などでは、中国に対する強硬姿勢による交渉を粘り強く続けなければならないとしている。

 そして、それら諸問題に関してアメリカの同盟友好諸国と対中包囲網を構築し、国際世論の力を持って中国当局に改善を迫るというスタンスを打ち出している。バイデン政権は人権や環境といった側面から攻撃を仕掛けてくるため、ある意味では中国にとっては厄介な相手になるものと思われる。

 いずれにしても、トランプ政権と違ってバイデン政権は中国やロシアを正面切って軍事的仮想敵と呼ぶことは避けるため、強力化しつつある中国海軍を封じ込めるための「大海軍再興」の論拠は消え去ってしまいかねない。

 さらに追い打ちをかけるように、11月9日(米国時間)、トランプ大統領自身が「500隻艦隊構築」を打ち出したエスパー国防長官をクビにしてしまった。これによって、バイデン政権発足と共に、「355隻艦隊構築」構想や大海軍再興構想は、中国海軍と戦わずして敗北を喫してしまうことになりそうである。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  トランプ氏、バイデン次期大統領就任後は「一般人」

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アメリカ海軍第7艦隊(出所:米海軍)


(出典 news.nicovideo.jp)

ゲスト

ゲスト

軍人による内乱までいかなきゃいいがなぁ

ゲスト

ゲスト

戦闘行為が始まって損耗してから国防費増やしても遅いんだけどな。

綾色紫月

綾色紫月

それじゃぁさ、第七艦隊丸ごと日本にレンタルすれば良いんじゃない?

エキュー@芽にんにく

エキュー@芽にんにく

レッドチームが軍備拡大してるのに・・・。やはり日本は独自で防衛力もたなきゃだめですね。

paruparu

paruparu

選挙前に「一部軍人がトランプ氏に反発」とかの報道を見たはずなんだが・・・戦争したいからと解釈していたが予算削られればジリ貧じゃないか

新世暇ディン大将軍

新世暇ディン大将軍

そりゃあ売国電は中共の犬だからなw中国に不利なことはしないだろうw尖閣を息子の為に売り渡し奴だしなw

みどり

みどり

話し合いが無意味な相手に話し合いで〜って言ってる時点でずっこけそうだな  

マツ

マツ

バイデン政権の誕生により米国は対中融和姿勢に変わり社会保障を充実させるため国防予算を大幅に削減するだろう、そうなれば米海軍は大幅に弱体化し5年以内に西太平洋における米軍の優位は失われるだろう、そうなれば中国軍は南シナ海を聖域化し台湾に侵攻する可能性がある。南シナ海の聖域化、台湾失陥により我が国のシーレーンが遮断され日本は中国の軍門に下ることになる。 

マツ

マツ

我が国は南シナ海における中国による聖域化を阻止するため所得税分離課税制度を廃止し防衛費をGDP比3%まで引上げ長距離地対艦ミサイル・高速滑空弾の実戦配備を進め、ベトナム・フィリピンとの基地使用協定を締結し長距離地対艦ミサイル部隊・高速滑空弾部隊を駐留させ南シナ海の制海権を確保し、南沙諸島・西沙諸島の敵基地を無力化するべきだろう。

マツ

マツ

また憲法を改正し集団的自衛権を全面的に認め、日英印豪同盟を締結し日英印豪艦隊が連携し南シナ海における船舶の航行を守り、また中国を海上封鎖することにより中国による台湾進攻を阻止するべきである。

エフィア

エフィア

フィッツジェラルド破壊やその後のニアミス事件のリベンジすら出来ずに、名誉は潰れたままの海軍。二度の北朝鮮牽制作戦は評価されず、シリアや中東方面の作戦も何故か非難続出。対テロ対策(密輸や資金源の破壊)や、海軍増強中の対中国政策に必要なのに。対中包囲網による国際圧力による問題解決って、トランプの主張とどう近くるの?公聴会では、中国包囲網は愚策って言ってた癖に。

kinven05

kinven05

バイデン「話せばわかる!」米国海軍青年将校「問答無用(発砲)」←とはならんよなぁ残念ながら、でも政権替わっても軍産複合体は守りたいだろうから「同盟国は軍事費を増やすべき(米国製の武器を買え)」と言う発言が強くなるだけだよな。

マツ

マツ

台湾の防衛については日台防衛協定を締結し、奄美を要塞化し長距離地対艦ミサイル部隊を駐留させ東シナ海の制海権を確保し中国軍の太平洋への進出を阻止することにより中国軍による台湾への二正面作戦を阻止するべきだろう。 また奄美に大規模な陸自部隊を迅速に事前展開できる体制を整え、九州に高速滑空弾部隊を駐留させ奄美の防備を固め中国軍による侵攻に備えるべき。

hinode

hinode

トランプが推進してきたシェールガスやめるなら、また中東に軍事リソースを増強させる必要が出てくると思うんだけど、その辺バイデンはどう考えているんだろうか?

age-s

age-s

というか、政権交代「してない」のに絶対確定みたいな論調どうよ