「ライス副大統領」なら日米貿易戦争を覚悟せよ - JBpress
(出典:JBpress) |
スーザン・エリザベス・ライス(Susan Elizabeth Rice、1964年11月17日 - )は、アメリカ合衆国の外交政策顧問、元アメリカ合衆国国際連合大使。 クリントン政権2期目には、国家安全保障会議スタッフ、アフリカ担当国務次官補を務め、オバマ政権では、2009年1月22日の上院議会で全 34キロバイト (4,025 語) - 2020年7月7日 (火) 12:28 |
今年秋のアメリカ大統領選挙で、民主党の候補者となることが確実視されているバイデン氏の優勢が伝えられている。そこで注目されているのが、副大統領になるのは誰か、だ。最近になって急浮上しているのがクリント政権やオバマ政権で要職を務めたスーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障担当)だ。だがこのライス氏、「中国に優しく日本に厳しい」人物で、かつて日本政府は対応に苦慮した相手だ。もし彼女が副大統領になると、日米関係はどうなるのか。国際情勢に精通するジャーナリストの歳川隆雄氏に解説してもらった。(JBpress)
副大統領候補の条件は「女性」で「有色人種」で「確かな行政経験」
(ジャーナリスト:歳川 隆雄)
今年11月に予定されているアメリカ大統領選挙。現時点では各種調査を見る限り、民主党からの候補指名がほぼ確実なバイデン元副大統領が、現職のトランプ大統領を大きくリードしている。現時点で大統領選挙が実施されれば、バイデンの勝利はほぼ確定的な情勢だ。
そうした中で注目されているのが、バイデンの副大統領候補選びだ。現在77歳のバイデンがもしも大統領選挙に勝利すれば、来年1月の就任時点で、史上最高齢の大統領となる。健康問題への懸念が払しょくされることはまずない。そして大統領の健康に万一のことがあれば副大統領が大統領職を継承することになる。だからバイデンの副大統領候補選びは、いつも以上に注目されているわけだ。
バイデン自身は副大統領候補について、「女性から選ぶ」と明言してきた。またバイデン氏は副大統領候補を有色人種から選ぶとも見られている。そうしたことから、この条件に合う人物の名前がこれまでに10名ちかく、取りざたされてきている。
その中で、世論調査で常に上位に食い込み、本命視されているのが、カマラ・ハリス上院議員(55歳)だ。ジャマイカ人の父とインド人の母を持つ元検事の彼女は、カリフォルニア州の司法長官を務めた経験を持つ。そうした行政経験が、「万が一」の場合も考慮に入れなければならない今回の副大統領候補選びで評価されているのだ。
他の候補の中には、ケイシャ・ランス・ボトムズ(50歳)のようにアトランタの現職市長もいるが、その経験は、ハリスが司法長官を務めたカリフォルニア州のような大都市でのものではない。そのため、行政経験で言えば、ハリスのほうに分があるのだ。
急浮上してきたスーザン・ライス
そうした中、この3週間ほどのうちに急浮上してきたのが元大統領補佐官のスーザン・ライス(55歳)だ。彼女の経歴は、まずクリントン政権で、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の上級スタッフを務めた後、アフリカ担当の国務次官補を務めた。さらにオバマ政権では、国連大使と国家安全保障問題担当の大統領補佐官を歴任してきた。
つまりそれぞれ2期8年あったクリントン政権とオバマ政権の計16年、民主党政権の中枢で行政を担ってきた経験がある。選挙の洗礼を受けた経験はないのが弱点ではあるが、十分な知見、キャリア、能力がある。そこでライスが副大統領候補に急浮上してきたわけだ。
では果たして誰がバイデンの副大統領候補となるのか。バイデン自身は8月第一週には発表すると明言している。
ワシントン在住の私のディープスロートによれば、バイデンの胸中はすでに決定しておおり、それを知らされているのは彼に寄り沿う3人の女性だけだという。ジル夫人、妹のヴァレリー・バイデン・オーウェンズ、そして選対責任者のジェン・オマリー・ディロンだ。妹のオーウェンズは、有名な人権活動家でもあり、バイデンの“裏選対”的役割も担っている。
そして、私が見るところ、彼女らに打ち明けられている名前は、「スーザン・ライス」である可能性が極めて高い。というのも、ライスの最大のライバルであるハリス自身、民主党の予備選でバイデンと争ってきた。その過程で彼女は、「バイデンはかつて人種差別的な発言をしてきた」と執拗に攻撃していた。それをジル夫人と妹のオーウェンズは未だ許していないのだ。
また日本以上のコロナ禍に遭遇しているアメリカでは、さまざまな会合が自粛されている。本来ならば、副大統領候補それぞれに直接面談し、じっくりと主要政策をすり合わせたり、残りの大統領選の戦い方について意見交換したりしながら最終的な人選をするのだが、今回はコロナの影響でそれができなかった。だから、バイデンはこれまでの自分の知見と経験則の中から「ランニングメイト」(副大統領候補)を選ばなくてはならない。そうなってくると、かつてオバマ政権で同じ釜の飯を食った仲間であるスーザン・ライスを選ぶ可能性ががぜん高くなってくるのだ。
日本にとって手ごわい相手
このライスが、日本にとっては手ごわい相手になる可能性がある。かつてライスは中国には宥和的で、日本には厳しい対応をしてきたからだ。日本の外務省でも、彼女の副大統領就任にはかなり警戒している。
では、バイデン大統領―ライス副大統領のコンビが現実のものとなったら、アメリカの外交・安全保障政策はどう変わるのか。
まず対中政策を見てみたい。現在、アメリカの議会は共和党・民主党を問わず、中国には厳しい見方をしている。米中関係は中長期的に見れば、ハイテク分野で覇権を争い、宇宙空間での軍拡競争も演じる関係だ。本質的に米中が相容れることはもうない。もちろんこれは中長期的なスパンで見た場合のことで、目先の数年の関係ならば、互いに利を分け合う選択をとることもあり得る。
トランプ大統領にしても、今年1月には中国との間で、米中貿易通商合意の「第一段階」に合意していた。これは中国の品物にかけるとしていた高い関税を撤回する代わりに、中国にアメリカ産の農産品やサービスなど2年間で2000億ドル相当を買ってもらう契約だ。トランプの目的は、自身の支持基盤であるウィスコンシン州やオハイオ州、ミシガン州などの農場経営者らの歓心を買うことだった。また当時はトランプ再選の可能性が高いと見られていたので、習近平国家主席も内心は嫌々ながらこの合意を呑んだ。
ところがその後、大統領選での劣勢が明らかになってくると、トランプは明らかに「対中強硬政策」に思いきり舵を切った。トランプ政権の対中政策の立案・企画を事実上仕切っているとされるポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)、レイFBI長官、バー司法長官、オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官などが、次々と中国批判の講演を行っているのはそのためだ。極めつけは、7月23日のポンペオ国務長官の中国批判演説だ。習近平を「失敗した全体主義イデオロギーの信奉者」と名指しで批判し、共産党による支配そのものを否定する内容だった。習近平をフランケンシュタインの如く形容し、中国の政治体制そのものを否定するこの内容は、従前の中国批判とは明らかに一線を画するものだ。これはトランプの焦りを表しているとも言えるが、もはやトランプが中国に宥和的な態度を見せることはない。
常識人のバイデンの場合はここまで中国への敵対姿勢をとることはないが、かといって米中対立の融和に乗り出すこともない。第一、大統領に就任しても、当面はトランプが破壊したヨーロッパ諸国やカナダやメキシコといった隣国との関係修復に専念せざるを得ないはずだ。
では副大統領ライスはどう動くだろうか。前述のようにライスの外交・安全保障政策の軸は、「アメリカの国益のためには同盟国・日本と仲良くするより、中国と良好な関係を築いて、二大国同士のウィン・ウィンの体制を構築するべき」というものだ。
労働組合を支持基盤に持つ民主党政権としては、労働者が歓迎するような貿易通商問題でアメリカが利益を確保できる体制を構築したいところだ。だからといって中国とすぐさま良好な関係を築くということは、現在の両国関係からして不可能なので、対中貿易が急激に増えることはない。そうなると、一番の狙い目は日本ということになる。関税などで日本からの輸入を押さえ、日本にはアメリカ産の農作物やアメリカ製品の購入を強硬に迫るようになるはずだ。クリントン政権を思い出せばわかる。日本を「政官業癒着のトライアングル」と批判した日米貿易戦争で日本が最も苦しめられたのは、あの時代だったのだから。
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(出典 news.nicovideo.jp)
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