太陽電池はクリーンで非常に便利な発電システムです。しかし安定した電力供給源である一方、どうしても日照時間に影響されてしまいます。
「日照時間に影響されない太陽電池」があるなら、より安定して電力を供給できるでしょう。
なんだか一見矛盾に満ちたアイデアのようですが、実際にカルフォルニア大学の電子工学科の教授ジェレミー・マンデーらの研究によって、太陽を必要としない太陽電池が開発されました。
新しい太陽電池は、熱を放射することによって、夜間でも電流を生成できるとのこと。一体どのような仕組みなのでしょうか。
研究の詳細は「ACS Photonics」誌に掲載されました。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsphotonics.9b00679
夜も発電できる夜間太陽電池
通常の太陽電池は、太陽光を吸収して電力を生み出しています。光が照射されることで太陽電池を構成している半導体の電子が動き、電流が流れるのです。
一方、新しい太陽電池は光を放射することで電流が流れます。電流と電圧は従来の太陽電池とは反対方向に進みますが、電力は生成されます。
開発された太陽電池は、夜間に1平方メートルあたり最大50ワットの電力を生成できるとのこと。これは、従来の太陽電池パネルが日中に生成できる電力の約4分の1にあたります。
発電力は少し心もとないですが、夜間太陽電池は日陰に設置されていれば日中でも機能するので、従来の太陽電池を補完するには十分な働きが期待できるでしょう。
熱放射セルを利用した仕組みとは
夜間太陽電池は「熱が温度の高い方から低い方へ放射される」ことを利用しています。
「熱移動のある環境」と「熱移動から電力をつくるデバイス」があれば、電力は生まれるからです。
マンデー氏は「熱移動から電力をつくるデバイス」として、「熱放射セル」に目を付けました。
「熱放射セル」は周囲に熱を放射することで電力を生成するデバイスです。主に、エンジンなどから生じる廃熱を有用なエネルギーに変換することに焦点を当てて研究されていました。
「これらのデバイスの1つを取り出して、暖かい場所に置いて空に向けたらどうなるかを考えていました」とマンデー氏は述べています。夜間の地球が「熱移動のある環境」に該当すると考えたのです。
事実、宇宙空間は非常に寒い場所なので、暖かい物体を夜空に向けると赤外線として熱を放出します。日中とは真逆ですが、熱移動は確かに起こるのです。
この「夜間の熱放射」と「熱放射セル」を組み合わせたものが、夜間太陽電池です。エンジンの高熱放射ほどの電力は得られませんが、デバイスを設置しておくだけで自然と電力が生成される点は大きな魅力と言えるでしょう。
マンデー氏は夜間太陽電池の出力と効率を改善して、大規模な使用を目指しています。
(出典 news.nicovideo.jp)
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