教習車は生徒の運転技術の向上に向けて使われる必要がありますが、現実的には定期的な車両のメンテナンスやアップデートも必要です。しかし、教習所にはそのための予算や人員が限られているため、なかなか新しい車への買い替えができないのかもしれません。

 日本の自動車を巡る環境は、他の先進国と比べるとやや特殊なものと言える。運転免許センターや免許試験場で実技検定を受けて免許を取得することも制度として残されてはいるが、これは運転経験者が免許の取り消し処分を受けて、欠格期間を経て再取得する場合に利用するケースが多い。全くの新規で免許を取得するには、教習所を利用するのが一般的だ。

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 そう、自動車教習所に通って、段階を踏んでクルマの運転操作を習得していくことで、混沌とした日本の道路交通でも何とか交通事故を起こさずに済んでいる人も多いだろう。

 最近では外国人労働者教習所に通って、日本の運転免許を取得することも珍しくない。日本に骨を埋める予定があるのかどうか分からないが、ビジネスを続ける上で日本の運転免許を取得して運転した方が得策だという判断なのだろう。

 それは日本の道路事情が規律的で、それでいながら情報量が多すぎて複雑すぎるからだろう。とにかく信号機や標識が多くて、ややこしいのである。

 それとは正反対の環境が、新興国の交通事情だ。信号が少なく、交差点に早くたどり着いた方が優先されるという環境ならば、交差点はかなり危険なエリアだ。

 ある程度は交通事故が起こっても仕方ないという思想と、できる限り交通事故を、そして事故による死傷者を減らそうという思想の違いと見ることもできる。日本の教習所の考え方は後者で、事実、日本の交通事故死者は1600人を下回るレベルにまで減少した(1970年前後は1万6000人を超えていた)。

 であれば次の段階は、それを維持しつつ交通環境の改善を図ることにある。それくらい日本の交通環境、とりわけ道路交通の環境は規律正しく機能している。

 しかしながら、実際に路上を走っているクルマの中で、教習車は運転が未熟なだけではない独特の存在感を放っている。ボディサイドにデカデカと教習所の名前が入っていたり、グラフィックが描かれていたりすることもあり、教習車だけが浮いた存在なのは、周囲への注意喚起としても重要な意義があると思うが、問題はそこではない。

教習車ならではの“需要”とは

 マツダが「アクセラセダン教習車として販売していたから、今見ても違和感の少ない教習車もある。一方、教習車としても使われていたトヨタコンフォート」は今やタクシーでもあまり見かけなくなった車種だし、現在教習車として提供されている先代の「カローラ」も営業車以外はあまり見かけないクルマだ。

 そんな外観が問題なのではなく、重視すべきはその操作方法だ。近年、クルマADAS(先進運転支援システム)を始めとした電子デバイスの搭載が続々と進んでいる。

 そのため街を走るクルマ全体を見回せば、パーキングブレーキセンターコンソールの長いレバーで操作するサイドブレーキとなっているのは今や極めて少数派で、足踏み式、もしくはスイッチで作動させるEPB(電動パーキングブレーキ)が多い。現在販売されている新車ではEPBが圧倒的で、軽自動車にも搭載されている。

 マツダドライバーの運転感覚に寄り添うことにも注力しており、ハプニング時の緊急回避手段としてもサイドブレーキが有用であることから、近年までレバー式のサイドブレーキを採用してきた。ユーザーの要望の変化からEPBに移行した車種もあるが、いまだにレバーを採用する車種を残している。

 これが教習車の需要とマッチしていることから、マツダアクセラから「デミオ」(現行の「MAZDA2」)に教習車を変更し、わざわざ輸出仕様のセダン教習車として仕立てている。なぜそんなことをしているのか。それは前述の運転免許の取得方法にも端を発している。

●指定教習所は法令によって縛られている

 意外と知られていないのだが、自動車教習所は、教習に使われるコースの内容も決まっていれば、その教習に使われるクルマ教習車にも制約がある。コースの内容や道路の幅、教習車の大きさなどは厳格に決められているのだ。こうした旧態依然としたところに、良く言えば日本特有の真面目さ、悪く言えば頭の硬さを感じさせる。

 実は事故死傷者が減少しているのは、免許取得の厳格さや取り締まりなどによる安全に対する意識の高まりよりも、自動車メーカーによる安全装備、衝突安全性の向上によるところが大きい。

 つまり交通ルールや取り締まり、さらには運転するドライバー交通事故死傷者減少に対して貢献している割合は少ない。なぜなら交通事故の発生件数は半減している程度であり、その理由も自動ブレーキによってドライバーの操作ミスが減少している効果が大きいからだ。

 今や新しい自動車教習所が開所されることは非常に少ない。合宿型を過疎地に作ることもあり得なくはないが、それでもかなりのレアケースだろう。そうなると教習車を完全に一新することは難しいことが見えてくる。

 まず大前提として、高速教習以外(これも教習所によって姿勢が異なる)は同一車種で教習を行うのが原則となっている。これは教習生が操作に慣れやすいということが大きな理由だ。

 それでもコンフォートのように、生産が終了されてしまったクルマは別の車種に交代させるしかない。そうなるとできるだけ今までのクルマと変化の少ない車種を選んで、車種による教習のレベル差を抑えようとすることになる。

 だからミニバンやSUVが人気でも、セダンを使い続けることになり、旧型のカローラや国内仕様にはないデミオセダン自動車メーカーが用意することになる。

 ブレーキホールド機能やEPBは、坂道発進などの運転操作を助けてくれるものだが、新しい機能によって運転が楽になると、試験の合格レベルが下がってしまうことになる。これでは免許試験の公平性が保たれないから、教習に利用することは難しい。

●教官の感覚や教え方が追いつくのか、という不安も

 ドライバー高齢化しているように、教習所の教官も高齢化が進んでいる。とはいえ定年退職する教官もおり、若い教官も入社しているので、ドライバー全体と比べれば平均年齢は低いだろう。それでも高齢化に向かっていることは間違いないので、長年の教習方針や内容が体に染み付いている教官は多い。

 しかも、教習所で使用している教本を見れば分かるのだが、改正された法律などは追加されているものの、全体として教習内容は旧態依然としている。

 教官が日頃使用しているクルマが電子デバイスの塊で、それらの機能を享受していても、それらの情報を教習に盛り込むようなことはしない。教官一人一人の意見で教習内容を変えてはいけない、という固定観念のようなものがあるのだろう。それは、指定自動車教習所の運転教習が法令で定められていることが大きく影響している。

 もし勝手なことをして問題が発生して、指定教習所の公認を取り消されてしまったらどうなるのか。その教習所の存続が危うくなるので、教官が自己流に教えることは難しい。

 教習内容が変わらなければ、教習車もそのまま使い続けられた方が本来は都合がいい。それでも老朽化や交換部品の廃番によって、教習車の信頼性が低下して故障率が高くなれば、教習の実施に影響が出てしまう。

教習車の装備は変えられない

 そこで定期的教習車の何割かを入れ替えることになるのだが、ここで問題が発生する。教習車によって操作方法が変わってしまうと、教える側にも戸惑いが生じる。運転教習を受ける生徒の方も、車種によって操作方法が変わってしまうと、それに慣れるための練習時間が必要になり、運転技術の習得に余計な作業が加わってしまうのだ。

 どちらかというと免許取得者ではなく、教習所側の都合でなかなか教習車の操作方法は変えられない、というのが実情のようだ。

 教習車が変わるのは、入れ替えのタイミングで行われるディーラー同士の販売競争が理由である場合も多い。ある程度まとまった台数で入れ替えるため、ディーラーは登録台数が稼げるのと、その後の納入も期待できることから、最初はもうけがほとんど出なくても契約を取りに行くのだ。

 生徒に対しても、教習車で慣れ親しんだブランドクルマを購入しようという刷り込みにも似た効果も期待できる。

 ともあれ、教習車に最近のクルマに合わせた先進的な装備を備えさせ、それを教習内容に盛り込むのはかなりハードルが高いことだけは間違いない。

(高根英幸)

え、まだこの装備があるの? 教習所のクルマ


(出典 news.nicovideo.jp)

金鯖缶

金鯖缶

ディーラー云々関係なく簡易化したシステム搭載機より「何が簡易化されてるか」を分からせる旧型の方が教習としては当然の内容だろうに。

アメリカザリガニ

アメリカザリガニ

トヨタドライビングスクールなんかはプリウスが教習車なのを売りにしているが、そのままプリウス洗脳して購入するように仕向けてるんだろうな。

ゲスト

ゲスト

助手席にもブレーキを付けたり、市販車とは機能が違うのよ。 教習車という少ない需要に、多種多様な車種を用意する必要が無いだけ。

エンジェル野郎

エンジェル野郎

免許取得して全員が全員アシスト機能マシマシの最新車に乗るわけでもなかろうに。シフト、クラッチ操作支援のAT乗れたら全部乗れるようにしろくらい暴論ちゃいますか?