とても興味深いです!

「ウクライナスキーム」の先輩・ゼレンスキー大統領から『台湾有事の時、頑張ってな』などと言われているようにも見える岸田総理
ウクライナスキーム」の先輩・ゼレンスキー大統領から『台湾有事の時、頑張ってな』などと言われているようにも見える岸田総理

ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。「#佐藤優のシン世界地図探索」ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索する!

 * * *

――佐藤さんに以前いただいた資料のなかで<米国は大きな戦争ができない国になっている>(4月16日ロシア与党幹部が佐藤氏に提供した情報)という記述がありました。この理由とは一体何ですか?

佐藤 米国内での「命の値段」が高騰しているからです。

――米国は自国の若者を戦争で大量に死なせる事ができないから、大きな戦争を仕掛けることができなくなった、ということでしょうか?

佐藤 はい。ですので、米兵が死ぬリスクのあるアフガニスタンからも撤退せざるを得なくなりました。ウクライナ戦争でも米国は最初から参加していません。

一点、少し穿って考える必要があるのが、ウクライナに出て来ない米国が果たして、朝鮮半島有事や台湾有事の際に出てきますか? という事です。

米国は、日本と韓国を"ウクライナ化"しようとする可能性はあります。北朝鮮と戦う時は韓国に戦わせ、中国と戦う時は日本に戦わせる。そうやって、米兵の命と米国の利益を守る。そんな「ウクライナスキーム」を考えていると思います。

だから、早めに自衛隊を攻撃型の体制に変えたのち、『色々な兵器とそのインストクターを米国から派遣したので、後は台湾、中国と戦って下さい』という流れになるのです」

――まさに「戦国自衛隊」ですね。

佐藤 ウクライナと同じような立ち位置で、米国の利益のために戦え、ということです。でもこれは、米国の発想というよりは英国の発想です。

英国は「セポイの反乱」の際にはインド兵を完全に潰さずに生き残らせました。そして、その後のアロー戦争、第二次アヘン戦争ではそのインド兵を中国人と戦わせる事により、英国の権益を保全しました。これは英国の典型的なやり方です。

自らの手を汚さないというのは、米英をはじめとするアングロサクソンのやり方ですが、このアングロサクソンの原点帰りが始まったのはウクライナ戦争からだといえます。ただ、中国の台湾侵攻に端を発する台湾有事は、ウクライナ戦争とは状況が全然違うのです」

――それは紛争の起きている場所が違うということですか?

佐藤 そうではなくて、台湾有事は中国の国内問題だということです。

「中国が台湾に侵攻した」と米国がいくら騒いでも、「それは中国の国内問題だから」ととらえるヨーロッパ各国の反応は全く違いますフランスマクロ大統領など、その姿勢がはっきりしています。西側諸国が対中国に対する姿勢を同じくすることなど、絶対にありません。

――先日のG7広島サミットでは、岸田首相の主導で西側諸国が、さらには「グローバルサウス」の国々が一体となりました。しかし、台湾有事では日米だけが一体となり、「ウクライナスキーム」が適用されれば、戦うのは日本だけ、となるということですか?

佐藤 そうなることを考えているアメリカの戦略家がいると思います。もう一点、米国が極東戦略上、日韓から手を引くとなれば、もはや台湾も何も関係ありません、その米軍の日韓からの撤退は、仮に次期大統領トランプ大統領になっても変わらないという保証はありますか?

――どこにもないですね。トランプ氏はビジネスマンですから。

佐藤 バイデン大統領は中国と突っ張り合いをしていますが、トランプ大統領の基本ディール(取引)です。北朝鮮金正恩総書記と取引した人が、習近平主席と取引しないなんて言えますか?

――言えないと思います。

佐藤 その辺も含めて、もう少し冷静に事態を見るべきです。興奮して、習主席が任期中に武力侵攻で台湾を統一する、などと決めつけない事が重要です。台湾の国民党は中国とやっていきたいと思っています。だから、台湾有事=日本有事というわけではありません。

日本にすれば米国が唯一の同盟国ですが、その米国が国益で動いている思惑をくみ取り、日本が付き合う部分、付き合わない部分を見極められているかといえば、今、日本はうまくやっているほうだと思います。ウクライナに米国の1/100の金しか提供していませんし。

――それは首相官邸に、ものすごく頭の良い優秀な知恵者であり策士がいるからなのでしようか?

佐藤 いや、そういう構図ではないです。日本は一元的な国家意思の形成が出来ない国なので、それぞれの役所が自分たちの考えている国益を追求し、それが全部合わさった時の力関係でパズルピースが埋まっているのだと思います。

――すると今、たまたまそのピースでできたジグゾーパズルの画がうまく描かれているだけなのですか?

佐藤 そうです。日本はこれまでも、いつもそんな感じですよ。

次回へ続く。次回の配信予定は6/9(金)予定です。

撮影/飯田安国
撮影/飯田安国

佐藤優さとう・まさる)
作家、元外務省主任分析官
1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。
『国家の罠 外務省ラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

取材・文/小峯隆生 写真/共同通信社

「ウクライナスキーム」の先輩・ゼレンスキー大統領から『台湾有事の時、頑張ってな』などと言われているようにも見える岸田総理


(出典 news.nicovideo.jp)