日本を震撼させた「昭和の未解決事件」と旧統一教会の関係。有田芳生氏らが語る - 日刊SPA! 日本を震撼させた「昭和の未解決事件」と旧統一教会の関係。有田芳生氏らが語る 日刊SPA! (出典:日刊SPA!) |
教団の報道が減っているので、報復に出るのかな?
旧統一教会に対しては今夏にも解散命令が出される公算が高い。安倍晋三元首相の銃撃事件の裁判も迫るなか、ここにきて教団と「昭和の未解決事件」の関係が国会で取り上げられた。
果たして、教会と36年前に日本を震撼させた事件を結ぶ接点とは何なのか……? 『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』を上梓したジャーナリスト・有田芳生氏、元朝日新聞阪神支局襲撃事件特別取材班キャップで『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)の著書もあるジャーナリスト・樋田毅氏らが当時を振り返る。
◆朝日新聞に届いた犯行と同社製の散弾容器
有田氏には、赤報隊事件への教団の関与を疑うに足る根拠もあるという。
「阪神支局襲撃の3日後に朝日新聞東京本社に届いた脅迫状には、『とういつきょうかいの わるくちをいうやつは みなごろしだ』と書かれていました。そればかりか、襲撃に使われたのと同じ米レミントン社製の使用済み散弾容器2個が同封されていた。
実際に犯行に使用された散弾は米国製で、同封された散弾容器は日本でライセンス生産されたものだが、ポイントは脅迫状が投函された日付です。犯行に使用された散弾がレミントン社製と報道される前に、脅迫状は投函されていた。
つまり、犯人、あるいは犯人の関係者でなければ、レミントン社製の散弾容器を送りつけることなどできない。しかも、消印は東京の渋谷局。当時、統一教会の本部は渋谷にありました」
◆非公然の軍事部隊を統一教会は持っていた?
事件への関与が取り沙汰されると、統一教会は関与を全面否定し、「ひどい濡れ衣だ」と談話を発表した。ところが、この脅迫状を起点に教団への公安警察の捜査が始まる。
「警察は『統一協会重点対象一覧表』を作成し、52人の信者をリストアップしていた。僕が入手したこのリストには、驚くことに『勝共非合法軍事部隊』『統一教会軍事部隊』として信者の名が記され、元自衛隊員の信者に実射訓練を受けていた。
また、広域指定116号事件(赤報隊事件)特別取材班のキャップを務めた元朝日新聞記者の樋田毅氏によれば、捜査当局の『重点対象一覧表』の上から2番目にリストアップされている信者は、元自衛隊員だった」
◆警察の捜査の手が教団に伸びていたのは事実
元朝日新聞大阪社会部記者・樋田毅氏の著書『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)によれば、陸上自衛隊市ヶ谷第32連隊を除隊後、右翼団体・大日本誠流社を経て、統一教会の非公然軍事部隊のメンバーとなっていたこの人物に、兵庫県警も重大な関心を寄せていた。
’87年、右翼団体に所属し、東京・新橋で街宣活動をしていたこの人物に樋田氏が取材を試みると、ひと言も発さずに雑踏のなかに走り去ったという。警察も行方を追うが足取りは掴めず、その後、僧籍を得たこの人物は、’90年に奈良県の小さな寺で一酸化炭素中毒で死んでいた。
「兵庫県警幹部は、この元自衛隊員の信者が『赤報隊事件に関わっていた可能性はある』と話したが、本格的な事情聴取はできておらず、事件と繋がる証拠は得られなかった。赤報隊事件は、右翼や新右翼か、あるいは統一教会による犯行なのかはわからない……。ただ、警察の捜査の手が教団に伸びていたのは事実です」
◆教祖・文鮮明氏は説教で朝日新聞に攻撃命令?
だが、赤報隊事件の前後、統一教会の文鮮明教祖は説教のなかで驚くべき発言をしていたという。
「事件の半月前の’87年4月18日、文氏は韓国の漢南洞公館で、朝日新聞の教団追及記事に怒り、『ぐずぐずしていたらやられてしまうのです』と話したという。
さらに、赤報隊事件後の5月30日、秘密裡に教団幹部を呼びよせ、韓国のリトルエンジェルス芸術会館で『私が命令するだけで彼ら(編註・日本の信者)はどんなことでもやる』『朝日新聞と読売新聞を攻撃するように言いました』と命令を出したことを認めている。
文氏自らが言ったように、狂信的な信者のなかには、教祖が命令すれば凶行に走る者がいたとしてもおかしくはない」
◆旧統一協会「当法人の関与はございません」
今回、国会で取り上げられた赤報隊事件への関与について、統一教会に質問書を送ると「当法人の関与はございません」との返答があった。一方、有田氏は宮本議員の国会質問をこう受け止める。
「宮本議員は、統一教会が事件に関与していた可能性を国会で質問することで、教団の本質を国民に知らしめようとしていたのでしょう。昨年、安倍元首相が銃撃されて以降、教団について盛んに報じられるようになり、現在も2世信者の問題や教団に対する解散命令の見通しが報道されています。
だが、これらは教団の断面の一つにすぎず、本質はまったく報道されていない。実は、昨年8月に日本テレビの情報番組『スッキリ』で、『霊感商法をやってきた反社会的集団だと警察庁も認めている』と発言したら、教団から名誉毀損で訴えられました。
するとテレビのオファーは一切なくなり、大手メディアで発言する機会を奪われてしまった……。教団の本質を発信する場を探していたところ、漫画家の小林よしのりさんと、統一教会をテーマにした共著を出さないかと声がかかったのです」
有田氏は3月に上梓した『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』(扶桑社)のなかで、教団を巡る多くの問題を丹念に振り返り、これまでメディアが報じてこなかった「新事実」をいくつも提示している。
「『オウムの次は統一協会だ』。1990年代半ば、公安の最高幹部の一人はそう私に教えてくれました。当時、公安が統一教会をマークしていたのは間違いありません。だが、オウムの事件がひと段落ついても、統一教会に対する捜査はついに行われなかった。実は、それから10年が経った2005年にこの幹部に会ったとき、『(この10年間)何もありませんでした。今だから話せることを教えてください』と質したら、彼は『政治の力があった……』とだけ言って、それ以上何も語りませんでした」
なぜ捜査にブレーキがかかったのか? 待ったをかけたのは誰なのか? そして、そもそも統一協会は一体何を目指していたのか? 疑惑は疑惑のまま闇に葬られ、その後、統一協会はいくつのも訴訟を抱えていたにもかかわらず、いつの間にか「世界平和統一家庭連合」と名前を変え、何事もなかったかのように国家権力の中枢に近づいていく。
日本を震撼させた「昭和の未解決事件」は時効を迎えているため再捜査の道が開かれることはない。だが、安倍元首相銃撃事件を機に噴き出した統一協会を巡る多くの疑惑を解明することなしに、この国を前に進めることはできないはずだ。
【有田芳生氏】
1952年生まれ。ジャーナリスト、前参院議員。’86年、『朝日ジャーナル』(朝日新聞社)で霊感商法追及キャンペーンに参加。以降、『週刊文春』(文藝春秋)などで統一教会問題を取材する。近著に漫画家・小林よしのり氏との共著『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』(扶桑社)
【樋田毅氏】
1952年生まれ。ジャーナリスト。朝日新聞大阪社会部を経て、地域報道部・社会部次長などを歴任。著書に『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)など。2022年5月、『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞
取材・文/齊藤武宏 山本和幸 取材/山﨑 元(本誌) 撮影/浅野将司 写真/時事通信社 AFP=時事

(出典 news.nicovideo.jp)
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