洗脳される。

統一教会二世信者は、どんな苦しみを抱えているのか。実母の入信をきっかけに自身も高校生で入信した冠木結心さんは、合同結婚式韓国人男性と結ばれた。夫となる人と初めて会ったときには「こんな素敵な人を与えられた私は世界一幸せだ」と思ったが、相手は「日本人と結婚できる」という勧誘につられて入会しただけの男性だった。冠木さんが結婚生活を前に抱いた不安とは――。(前編/全2回)

※本稿は、冠木結心『カルトの花嫁 宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』(合同出版)の一部を再編集したものです。

■合同結婚式の会場で伴侶と初めて会ったときの高揚感

1995年8月25日ソウルオリンピックスタジアムでは、〈36万双合同結婚式〉が挙行されました。

前日に〈約婚式(※)〉があり、翌日が合同結婚式です。日本全国から集められた大勢の日本人女性、フィリピンやタイ、台湾や欧米から来ている外国人女性も見受けられました。皆、明日将来の伴侶となる人と初めて出会うのです。私の胸も高鳴っていました。

※聖酒式ともいう。この式がなければ原罪を脱ぎ、神の血統に転換することはできないとされている。「(聖酒には)父母の愛の象徴が入っている。血が入っていないといけない」と教祖は語っていたが、実際は3種類の酒と21種類の薬草で作られている。

約婚式の会場へ向かうと、バスの前に何人かの男性たちが立っているのが見えました。その中に写真でしか知らなかった自分の「理想相対(理想世界に共に行く永遠の伴侶)」が動いているのを見た時の、あのうれしさと高揚感は言葉では言い表せません。実際に会った彼は、背が高くてカッコよく、私には過分な相手だとさえ思いました。

「こんな素敵な人を与えられた私は、世界で1番幸せだ」、そう思った初対面の瞬間でした。

■高級時計のお返しは統一教会の記念品だった

約婚式には、お互いの準備したプレゼントを交換する時間がありました。互いのプレゼントは偶然にもペアウォッチでした。私は少し奮発して、デパートの時計売り場で買った日本の高級時計ブランドダイバーズウォッチを準備しました。

一方、彼がくれた時計は韓国の統一教会が一連の「世界文化体育大典(※)」の記念に製作したもので、時計盤には大きな大会のロゴマークが入り、イミテーションのダイヤがギラギラと散りばめられた趣味の悪い腕時計でした。せっかくもらった時計でしたが、どこに着けて行くにもためらわれ、イミテーションのダイヤもすぐに取れてしまい、結局一度も身に着けることはありませんでした。ちなみに、私が買った腕時計は、25年以上たった今も正確に時を刻み続けています。

※科学者による科学統一会議、世界言論人会議、世界平和サミット会議、世界宗教議会、世界平和女性連合、原理研究会世界平和教授協議会、ハンマダン体育祝典など、世界の英知が結集する文化大典とされ、そのメインイベントが国際合同祝福結婚式であった。

一夜明け、ソウルオリンピックスタジアムで行われる36万組の合同結婚式当日になりました。朝から自分で化粧をして、真っ白ウエディングドレス着替えると、準備されたバスに乗り込みスタジアムへと向かいます。ものすごい人の数、そのうえ、みな同じような格好をしているので、当日相手を探すのはとても困難です。私と彼は、約婚式の後にスタジアムのどこで待ち合わせをするのか決めておきました。

■待ち合わせ場所に彼がいない…違和感はここから始まった

当日は朝からあいにくの雨模様ウエディングドレスの上にビニールのレインコートを着て待ち合わせ場所に向かいました。待ち合わせ場所に着く頃には、ウエディングドレスの裾は泥だらけになっていました。彼の姿はまだ見えません。しばらく待ち合わせ場所でずっと待っていましたが、待てど暮らせど彼は現れません。

もう式が始まってしまいます。焦った私は、彼の所属する教会の人たちが座っているエリアを調べて、直接探しに向かいました。すると、そこに彼が座っているではありませんか。私を見て驚く様子も、謝る様子もありません。待ち合わせなど最初からなかったかのように、そこに座っていました。そんな彼を見て、私は内心とても悲しくなりました。

「本当は、彼は私と結婚することを良く思っていないのではないだろうか……」

違和感と不安を抱きながら、合同結婚式は始まりました。

朝からスタジアムに降っていた雨は、教祖夫婦が登壇した途端にぴたりと止みました。

「スゴイ! 御父母様(文鮮明夫婦の教会内での愛称)が来られた途端に雨が止むなんて!」

ところどころから人々の感嘆の声が聞こえてきます。

「万歳〜! 万歳〜! 万歳〜!」

震天動地。式の最後に会場中に万歳の声が響き渡り、合同結婚式は幕を閉じたのでした。

■一人で生きるためにチラシを見て統一教会に転がり込んだ

19歳という若さで結婚を選んだ彼には、事情があるようでした。小学生の頃に両親が離婚し、弟は父親と生活していましたが、彼は一人で生きる道を選びました。新聞配達をしながら、何とかお金を稼いでいたようです。ですから、まともに学校にも通えずに中学中退となったのです。そんな理由から、兵役も免除されました(※)

※韓国には徴兵制度があり、満20〜28歳の男性に兵役義務が課される。入隊期間は時代によって違うが現在は1年半。学歴、身体、家庭事情など4段階の兵役判定が行われる。ただし、病気や心身障害のある場合や、本人がいないと家族が生計を立てられない場合、孤児、体格的に不適当とされる場合、性転換した場合は兵役が免除される。ほか高卒未満の学歴の場合、犯罪歴のある場合なども、兵役に就けないことがある。

友達の家を転々として生活していた18歳の時、彼はチラシを見て統一教会に転がり込んできたそうです。当時の彼は、まるで孤児のようだったと当時の教会長から聞かされたことがあります。なかなか人を信用しなかったり、少しひねくれたことを言う人でしたが、それも彼の生い立ちが関係しているのではないかと思われました。

■日本人女性と結婚できればそれでいい

統一教会に入会すると日本人と結婚できる」と知り、彼は合同結婚式に参加したのです。韓国の統一教会では、信仰よりも結婚を前面に出して伝道しています。結婚の機会のなかった男性たちは、結婚をちらつかされ、入会を勧められていたのです。教会の担当者からすれば、36万組の合同結婚式を成功させるために、手段を選んでいられなかったのでしょう。

特に韓国では「日本人女性はよく働く」と言われていました。自分で相手を見つける努力をしなくても「理想の相手」を選んでもらえるし、自前で結婚するよりもずっと安い費用で嫁がもらえるという、これ以上にない機会でした。数合わせのため、ただ結婚目的で集められた男性たちは、とりあえず教義を信じたフリをして合同結婚式を済ませれば、それでジ・エンドなのです。そんな事実を、私はだいぶ後になってから知りました。

また文鮮明は「(日本人には、)選民であるうら若き韓国の乙女を従軍慰安婦として苦しめた過去の罪があるため、韓国の乞食と結婚させられたとしても感謝しなければならない(※)」と言っていました。私にとって、この教祖の言葉は深く刻まれていました。なぜなら、私の相手がまさに、そうした人物だったからです。

※侮蔑語を含むが、文鮮明の表現をそのまま掲載した。

■信仰と愛と努力で夫を変えられると思っていた

統一教会の洗脳を受け、知らず知らずのうちに日本人としての罪意識を植え付けられていた私には、この結婚は感謝でしかありませんでした。メシアの生誕した国である韓国と繫がれたこと、そしてイスラエルの民である韓国人(※)と結婚できたことを心から感謝しました。

旧約聖書では、再臨するイエスを迎え、神のみ旨を成就する選民がイスラエルの民とされる。統一教会では、文鮮明が再臨のメシアであり、生誕の地の韓国人が〈イスラエルの民〉とされている。

少し変わった夫ではあるけれど、信仰と愛と努力で変えることができるのではないか。本気でそう思っていました。しかし人間が変わるということが、そんなに単純で簡単でないことを嫌というほど思い知るのです。

■3年間の聖別期間を終えて夫が日本にやってくる

合同結婚式後は、3年に及ぶ聖別期間があります(※)。夫のひねくれた性格は、その後も度々私を困らせましたが、私たちは出会った瞬間から夫婦であり、夫婦にならなければならない関係でしたので、嫌なことも、気に入らないことも、生理的に受け付けないことも、すべて甘受しなければなりませんでした。それでも、今まで恋人を作れなかった私にとっては、とても新鮮で楽しい時間でした。それはまだ、韓国と日本で離れて暮らしていたからかもしれません。

※祝福結婚式に参加した夫婦が、同居し実際の家庭生活を始める(家庭出発)前に性関係を持たず、お互いに家族としての関係を育む期間とされる。当時は3年だったが、近年40日になった。

聖別期間が終わると、彼は住む家や仕事のない韓国を離れて日本に渡って来ました。私たちは日本で家庭出発(※)をすることになったのです。そして本当の地獄は、ここから始まろうとしていました。(後編に続く)

合同結婚式に参加した二人が、聖別期間を経て、家族として同居し結婚生活を開始すること。

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冠木 結心かぶらぎ・けいこ)
統一教会元信者
東京都出身。1990年代、実母の入信をきっかけに、高校生のころから洗脳が始まり自身も入信する。その後、合同結婚式に2度参加。いずれも韓国人男性とマッチングされ、1度目はDV夫、2度目は借金夫。日本と韓国で壮絶な結婚生活を送る。教祖・文鮮明の死を機に洗脳から目覚める。40歳を前に人生を取り戻すべく、2013年に2人の子どもと共に逃げるように帰国。現在はカメラと猫をこよなく愛するシングルマザー

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2020年2月7日、加平の清心平和ワールドセンターで旧統一教会主催の合同結婚式に出席するカップルたち - 写真=AFP/時事通信フォト


(出典 news.nicovideo.jp)

ピョン吉

ピョン吉

韓流が好きで損をしたから、今度は被害者面で同情を乞おうというわけか?w 責任感の無さw 正に韓流人w

ASFASFASFA

ASFASFASFA

教祖からして下半身モンスター犯罪者だからな