信じられない未来がくるようだ。


岡山大学7月8日、閉じ込め空間を用いた新しい化学気相成長(CVD)法により、原子レベルに薄い半導体材料の「遷移金属ダイカルコゲナイド」(TMDC)の大面積・高品質合成に成功したことを発表した。

同成果は、岡山大大学院 自然科学研究科の橋本龍季大学院生、岡山大 学術研究院 自然科学学域の鈴木弘朗助教、同・三澤賢明助教、同・鶴田健二教授、同・林靖彦教授、東京都立大学大学院 理学研究科 物理学専攻の宮田耕充准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノサイエンスとナノテクノロジーに関する全般を扱う学術誌「ACS Nano」に掲載された。

層状物質で、単層が原子3個分の厚みを持つ半導体材料「TMDC」は、単層でのみ発光特性を持つ直接遷移型半導体として知られているほか、この単層TMDCは優れた機械的柔軟性、光学特性、電気特性を持ち合わせていることから、次世代の光電子デバイスへの応用が期待されている。

そうした単層TMDCを得る方法にCVD法があるが、従来の固体原料を用いたCVD法では、得られるTMDCの結晶サイズが小さく結晶性が低いため、デバイス性能を低下させる要因とされており、高い結晶性のTMDC結晶を大面積で合成する手法の開発が求められていた。

そこで研究チームは今回、TMDCの一種である「二硫化タングステン」(WS2)を活用した大面積・高品質合成の実現を目指したという。


具体的には、安定したTMDCの成長環境を実現するため、2枚の合成基板を重ね合わせて構築したマイクロリアクタが用いて、狭い閉じ込め空間を作出。外部からの原料供給が制限される成長環境を構築したとする。また、タングステンの原料として、高温で液体状態になる金属塩「Na2WO4」を、あらかじめ成長基板に塗布することで、マイクロリアクタ内に閉じ込めたほか、WS2に用いられる硫黄の原料として、従来の固体原料よりも供給制御性に優れた有機硫黄を採用し、厳密に供給量を制御することで、単層WS2の合成を高精度に制御することに成功したとする。

実際に原料供給量のバランスの精密制御が行われたところ、従来のCVD法では数10μm程の結晶しか得られなかったのに対し、500μmを超える大きな完全単層WS2結晶が得られたとするほか、条件を整えることで、1mmを超えるような、目視でも確認できる巨大な結晶も得られたとする。

また、「Na2WO4」と「Na2MoO4」という2種類の金属塩を組み合わせることによって、面内で2種類のTMDC(WS2とMoS2)が接合した面内ヘテロ構造の合成も可能となったともする。

さらに、こうした合成方法における、WS2の成長メカニズムを調べたところ、合成温度に対する結晶サイズの変化、特異な結晶成長様式のフラクタル成長、原料の表面拡散エネルギーの理論計算などから、マイクロリアクタ内では原料拡散が律速過程になる、表面拡散律速によって成長していることが判明したとするほか、異なる温度で合成されたWS2の発光(フォトルミネセンス:PL)特性に着目し、結晶品質を調べたところ、結晶性が低いTMDCでは、PLピークが低エネルギー(長波長)側にシフトし、半値幅が大きくなったほか、発光強度も弱くなったという。

加えて、合成温度に対するPL特性やその均一性を系統的に調べたところ、最適な合成温度(820℃)では面内均一で、高い品質を示すPL特性が得られたとする一方、温度が高すぎる場合や低すぎる場合は、結晶の品質や均一性が低いことが確認されたとする。

このほか、今回の手法で合成されたWS2による改良された転写技術を用いて、合成基板から単層のWS2がシリコンウェハに転写され、電界効果トランジスタ(FET)を作製したところ、電子伝導型(n型)のFETとして、良好に動作することが確かめられたとするほか、光照射下での電流応答が観測されたところ、WS2が吸収する特定の波長に対し、明瞭に応答することも解明されたという。

なお、TMDCは、次世代のウェアラブルセンサ発光素子や発電素子などへの応用が期待されている材料であることから、研究チームでは今回の研究成果をさらに進めていくことで、IoE社会を支える次世代フレキシブルデバイスの実現に近づくことが期待できるとしている。
(波留久泉)

画像提供:マイナビニュース


(出典 news.nicovideo.jp)

ハムスター

ハムスター

タングステンかぁ。どこが一番持ってんだい?「ちうごう!」っとか言いそう