エクアドル、ガラパゴス諸島には複数の「ガラパゴスゾウガメ種」が存在するが、絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメ(Chelonoidis phantasticus)が、113年ぶりに種の存続を再確認した。
1906年、たった一匹のオスのガラパゴスゾウガメが、フェルナンディア島をさまよっているいるのが見つかったが、この個体を最後に、仲間の存在が確認されたことはなく、絶滅したと思われていた。
ところが、2019年に偶然見つかった孤独なカメが、どうやら、この種の生き残りであるらしいことがわかったのだ。
50歳のこのメスのカメは「フェルナンダ」と名づけられた。
フェルナンディナゾウガメ(Chelonoidis phantasticus)は、かつて15亜種が存在したとされるガラパゴスゾウガメの一種である。
この驚くべき発見で、フェルナンディナゾウガメが絶滅していなかったらしいことがわかったわけだが、 この事実は進化生物学者たちを困惑させてもいる。
というのも、1906年に発見されたオスの個体(検体の後、現在その標本がカリフォルニア科学アカデミーにある)と、2019年に発見され、今回同種であることが確認されたメスの個体の遺伝子ゲノムは非常に似通っているのに、見た目がまったく違うからだ。
「フェルナンダ」の甲羅は、比較的小さく滑らかだが、オスの方の甲羅はリクガメ類のようにでこぼこしている。
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ガラパゴスゾウガメの一種、フェルナンダ / image credit:Galapagos Conservancy
生きている個体が見つかったことは希望があると同時に、新たな疑問を投げかけ、多くの謎がまだ残っていることを露呈しました
アメリカ、コネチカット州のイェール大学生態学・進化生物学の上級研究員アダルギサ・カッコーネ氏は、こう述べている。
フェルナンディナ島には、捕獲して繁殖させることができるゾウガメがほかにもいるのか?
フェルナンディナ島でゾウガメたちはどうやって暮らしてきたのか?他のガラパゴスゾウガメとの進化的な関係はどうなのか?といった疑問です
火山島で50年以上生き延びていたフェルナンダ
フェルナンディナゾウガメ(以下C. phantasticus)は、ガラパゴス諸島のの中でももっとも辺境にあるフェルナンディナ島の火山活動によって絶滅したと考えられてきた。
ここでは、この200年の間に25回の噴火があり、C. phantasticusのような動きの遅いカメにとって、逃げることもできず、エサをとることもできなかった悲惨な場所だったはずだ。
ところが、50歳を過ぎていると考えられるフェルナンダは、その間ずっとこの島で生き延びていたことになる。
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フェルナンディナ島は、ガラパゴス諸島の中でも新しい島のひとつで、地質学的にも若いため、火山活動が非常に盛んなのです。
常に新たな溶岩原野ができ、通り抜けるのも難しく、人間がまともに探索に入るのも困難な場所です。
ゾウガメにとっては、生息に適した場所が孤立して、あちこち移動することができなくなってしまったのでしょう(カッコーネ氏)
フェルナンダの甲羅は、1906年に見つかったオスの甲羅とは少し違い、2種の交配の可能性もある / image credit::Galapagos Conservancy
交配種の可能性も
1906年のオスとフェルナンダのゲノムは非常に近いにもかかわらず、母親から受け継ぐミトコンドリアDNA(別名、細胞の動力源のための遺伝子コード)にいくつかの違いが見受けられた。
この違いは、フェルナンダが実際には、2種類のガラパゴスゾウガメ、例えば、C. phantasticusのオスと C. nigraのメスの交配から生まれたせいではないかという可能性がある。
フェルナンディナ島の隣にあるフロリアナ島に生息していたC. nigraは現在は絶滅しているが、人間がゾウガメを移動させた経緯があり、C. nigraのメスがフェルナンディア島で休暇を過ごし、そこでオスと出会って交配して、ミトコンドリアDNAを残した可能性もあるという。
研究者は、真のC. phantasticusは誰なのか、フェルナンダが交配種なのかを明らかにしたいと思っているが、それにはもっとたくさんの個体が必要である。
フェルナンディア島の生活が過酷だから外見が違う可能性
だが、彼らの違いの原因は、フェルナンディア島での生活が過酷だという現実ももうひとつの理由かもしれない。
「フェルナンダは元気ですが、成体でも体の小さな個体です。ですから、形態学的にも博物館にあるオスの標本とは見た目がかなり違います」カッコーネ氏は言う。
「これはおそらく、エサがなかったため、成長が阻害されたことと関係があるのかもしれません。隔離された場所にいたため、その成長に影響があったのではないでしょうか」
2019年に発見されたフェルナンダは1世紀前に絶滅したと思われていた種だった
ガラパゴスゾウガメの繁殖計画
フェルナンディア島が過酷な環境だったにもかかわらず、島に残されていたゾウガメの糞からは、ほかにもガラパゴスゾウガメがここで見つかる可能性があることがわかる。
そのため、ガラパゴス国立公園とガラパゴス保護団体は、フェルナンダの血縁を見つけ、種の保存ができることを期待して、捕獲に乗り出そうとしている。
だが、繁殖できる個体を見つけることは、この試みの達成がまだ半ばにすぎないだけだという。
私たちが抱えている保護の問題は、もっと多くのゾウガメを見つけて繁殖計画を始めるのはいいけれど、彼らの棲みかをどうするかということです。彼らの棲みかは、すでにもうふさわしい場所ではないからです
この論文は『Communications Biology』に発表された。
References:Discovery of lonely tortoise doubles known members of Galapagos species | YaleNews / 'Fantastic giant tortoise,' believed extinct, confirmed alive in the Galapagos / written by konohazuku / edited by / parumo
(出典 news.nicovideo.jp)
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