投資に慎重なのかな?

岸田首相はゴールデンウィーク中に6カ国を外遊し、5月5日ロンドンで、外国人に向けて「安心して日本に投資してほしい。インベスト・イン・キシダ」と訴えました。日本人の貯蓄を投資へ向かわせ「資産所得倍増を実現する」と表明しています。

しかし、市場の反応は冷ややかで6日の日経平均株価は、終値で27,003円、185円03銭の上昇にとどまりました。ウクライナ情勢による先行きの不透明感と、円安による物価上昇で日本の先行きが暗い中、積極的に投資する人は少なかったということでしょう。直近の13日の日経平均株価の終値は26,427円で上昇の傾向は見られません。

政府はこれまでも個人の金融資産を何とかして投資に向けさせたいといろいろな対策を講じてきましたが、どれもうまく機能しませんでした。なぜ、日本では投資が活発にならないのでしょうか。今後、投資を活発化させるためにはどうすればよいのか、日本の課題について考えてみたいと思います。(ライター・岩下爽)

●日本の金融資産の半分以上が現金・預金

日本銀行の「資金循環の日米欧比較」(2021年8月20日)によると、日本の金融資産の構成は、現金・預金が54.3%、投資信託が4.3%、株式等が10.0%となっています。つまり、金融資産の半分以上が現金・預金ということです。

これに対し、米国は、現金・預金が13.3%で、投資信託が13.2%、株式等が37.8%になっています。投資信託と株式等を合わせると51%なので、金融資産の半分以上が投資で運用されているということになります。

ユーロエリアは、現金・預金が34.3%、投資信託が9.6%、株式等が18.2%となっています。ユーロエリアでは、保険・年金等の運用が33.8%と多いのが特徴になっています。

●投資に消極的な2つの理由

(1)金融リテラシーが低い

日本人が投資に積極的でない理由は諸説ありますが、投資について学んで来なかったことが一番大きい要因だと思います。勤勉で保守的な国民性であることと、「投資はギャンブルだ」という刷り込みもあって、貯蓄に極端に偏っています。

金融リテラシーに関して、全国の18~79歳の個人25,000人を対象として行った調査として、「金融リテラシー調査2019年」(金融広報中央委員会)があります。

米国金融業界の自主規制機関であるFINRAが2015年に調査した結果と日本の調査結果を比較したところ、①複利、②インフレ、③住宅ローン、④分散効果、⑤債券価格、⑥72の法則についての正誤問題で、平均正答率が、米国は53%、日本は47%でした。

また、経済協力開発機構(OECD)の調査と日本の調査結果を比較したところ、①金利、②複利、③インフレの定義、④リスクリターン、⑤分散投資という設問の正答率が、フランスが72%、ドイツが67%、英国が63%でしたが、日本は60%でした。

この結果から、日本の金融リテラシーは、米国や欧州諸国に比べると低いことがわかります。学校において金融教育を「行うべき」との意見は67.2%ありますが、実際に受けたとの認識がある人は、そのうちの8.5%しかいませんでした。

このような状況を受けて、学習指導要領が改訂され、2022年4月から高校で金融教育がスタートすることになりました。ただ、家庭科の授業の中で行われるため、どれだけ金融リテラシーが高まるかは不明です。

(2)日本に投資する魅力がない

投資対象が魅力的でなければ誰も投資はしません。投資する以上、投資対象が成長してリターンが見込める必要があるからです。投資が進まないのは、日本に将来性を感じられないからというのも大きな理由だと思います。

実際、日本の2021年の名目GDPは4,937,422百万USドルですが、この数字は、1994年の4,998,797百万USドルより低い水準です。多少の上下はあるものの、30年近く横ばいの状態が続いています。高度成長期のような右肩上がりの時代は終わり、経済も賃金も上がらない状態が長期間続いているわけです。

少子高齢化が進み、人口が減少する中で、日本がこれから成長することは容易ではありません。円安が進み、日本の購買力が落ちている中で、あえて日本に投資する必要性は乏しいわけです。もちろん、個別企業で見れば有望な企業はあると思いますが、マクロ的な視点で見ると投資が増える要素はほとんどないと言えます。

●直接的な効果が期待できない「資産所得倍増計画」の中身

投資を増やすためには、日本が成長すると思える状況にする必要があるわけですが、岸田首相は、その方法として「新しい資本主義」を目指すとしています。新しい資本主義とは、成長と分配の好循環を生み出すこととされています。

具体的には、①成長戦略、②分配戦略、③全ての人が生きがいを感じられる社会の実現の3つを柱としています。

(1)成長戦略

①科学技術・イノベーション、②地方活性化、③カーボンニュートラルの実現、④経済安全保障

(2)分配戦略

①賃上げ、②「人への投資」の抜本強化、③未来を担う次世代の「中間層の維持」

(3)全ての人が生きがいを感じられる社会の実現

①男女共同参画・女性の活躍、②孤独・孤立対策、③少子化対策・こども政策、④消費者保護

どれも大事なことばかりですが、これを聞いて直ちに投資しようと思うでしょうか。具体的に円安が止まり、賃金が上昇するなどの目に見える効果が表れてくれば、将来に対して少しは期待が持てるようになるかもしれませんが、そうでなければすぐに効果が表れるような政策ではないためすぐに投資が進むとは思えません。

賃上げなどは安倍前首相も繰り返し言っていましたが、結局は賃金が上がることはありませんでした。そのため、今回も期待は薄いのではないかと思っている人が多いはずです。

●投資を増やすためにはどうすればよいのか

(1)金融教育の充実

投資をするにはある程度の金融知識が必要です。アメリカでは小学生から株や不動産の勉強をしていますが、日本では、ようやく高校での金融教育が必修化されたところです。低学年から金融を学ぶ必要性があるかについては賛否があるところですが、アメリカと日本でこれだけ投資割合が違うところを見ると、金融に慣れ親しむことの重要性はあるのかもしれません。学校での金融教育も重要ですが、効果が表れるまでには時間が掛かります。即効性を求めるのであれば、社会人に対しても金融教育の機会を増やしていくことが重要です。

(2)税制の優遇の拡大

金融所得課税に対しては増税論があります。高額所得者の場合、金融所得課税の税率は給与所得などの超過累進課税の税率より低いため不平等であるとの意見があるからです。しかし、投資を促すという点ではむしろ減税すべきです。減税すれば、お金持ちはより積極的に投資をするようになるからです。

岸田首相は、2000兆円とも言われる個人の金融資産を投資に回させるとしていますが、金融資産を多く持っているのは、高齢者でかつ一部のお金持ちです。これを投資に回させるのであれば、高齢者のお金持ちが投資したくなるようにする必要があります。

一般投資家については、NISAの認知度も高まってきていますので、運用枠を拡大することも検討すべきだと思います。また、現在は運用枠が購入額とされているため、頻繁に売買ができないという問題があります。購入額ではなく一定の運用益までは非課税にするなどの対策も有効ではないかと思います。

(3)研究力の増強

かつての日本は、圧倒的な技術力で世界を席巻してきました。多くのノーベル賞受賞者も輩出しています。しかし、近年は研究力が落ちてきていると言われています。文部科学省が公表した「科学研究のベンチマーキング2021」によると、かつては、米国が論文数で1位であり、2005年までは日本が2位でした。ところが、2006年には中国が世界第2位となり、2018年には米国も抜いて中国が1位となりました。2019年度では、英国とドイツにも抜かれ、日本は5位まで落ちています。

その原因として考えられるのが、大学の研究開発費と大学の研究者数です。文部科学省の「大学の研究力の現状と課題」の資料によると、EU、米国、中国は研究開発費が上昇しているのに対し、日本は、減少傾向にあります。米国は研究者の数を発表していないため、人数はわかりませんが、EUと中国は右肩上がりで上昇しているのに対し、日本は横ばいの状態で推移しています。

日本は資源の少ない国なので、技術力や頭脳で世界と戦っていく必要があります。研究に力を入れれば、その結果は必ず後で付いてきます。研究費と研究者を増やし、将来性に期待が持てるようになれば、今より投資は増えるはずです。研究力の増強の中にはDXなども含まれますので、GAFAに対抗していくためにも積極的にお金を掛けていくべきだと思います。

なぜ日本人は投資に積極的にならないのか 岸田首相「資産所得倍増プラン」の限界


(出典 news.nicovideo.jp)

tada-chan

tada-chan

一番に経済の政策方針が全く見えない。買わせた後で金融資産にガッツリ増税してきそう。アベノミクスの始まった時みたいに今の値から日銀や年金の資金で更に買い上がってくれるの?

MONO

MONO

投資が平均的に成功するのは高度成長期のときだけ

餠()

餠()

大学の経済学部の多くが文系、って問題がだいぶ前に言われてたけど、その後改善されたんかいな? そのへんから手を付けなきゃどうにもなるまい

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確かに。バブル崩壊以降日本経済は未だにその後遺症を引き摺ってるし、さらに金融教育も全くと言って良いほどしてこなかったのも手伝って「投資は損をするものだ」というトラウマが深く根付いているのかもな。