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東北大学12月20日、6年間の縦断研究の結果、歯の喪失と認知症発症との間に有意な関連が確認され、その関連を友人・知人との交流人数といった社会的な要因や、野菜や果物の摂取などの栄養に関する要因から部分的に説明できることがわかったと発表した。

同成果は、東北大大学院 歯学研究科 国際歯科保健学分野の木内桜大学院生、同・小坂健教授、東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 健康推進歯学分野の相田潤教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、歯・口腔・頭蓋顔面科学などを扱う学術誌「Journal of Dental Research」に掲載された。

認知症は少子高齢化が進む日本において、その予防および進行抑制が重要な課題となっている疾患で、その発症のリスク要因として、高血圧糖尿病など、栄養に関連するものや精神状態の悪化、身体活動量の低下、社会的な交流の低下などが挙げられている。

口腔は会話や食事を行う際に使用する器官であり、栄養摂取や社会的な交流といった経路を介して認知症発症に影響する可能性があるものの、口腔状態と認知症発症の関係について、社会的な要因や栄養に関する要因といった角度から調べた研究はこれまでなかったという。

そこで研究チームは今回、「歯の喪失は認知症発症リスクを増加させ、そのメカニズムは栄養摂取や社会的な要因で説明される」という仮説に基づいての検討を行うことにしたとする。

具体的には、日本老年学的評価研究機構のデータ2010年(ベースライン)、2013年2016年の調査に回答した人を対象に、2013年の媒介変数の効果を見るため、ベースライン2013年の要介護者、2013年以前に認知症を発症した人、死亡した人や、追跡不能であった人を除外したほか、ベースライン時点で認知機能関連項目スコアの認知機能低下を示す質問3つすべてに「はい」と答えた人も除外して調査が行われた。

歯の本数(20本以上/0-19本)と、2013年から2016年までの認知症発症との因果関係を、何が媒介(仲立ち)するかの分析として、媒介変数に体重減少、十分な野菜や果物摂取(1日1回以上)、閉じこもり、交流人数(10人以上)の有無を用いたほか、年齢、婚姻歴、義歯使用、等価所得、教育歴、高血圧糖尿病、飲酒歴、喫煙歴、日々の歩行時間の影響が統計学的な方法により調整して、3万5744名(うち女性が54.0%)を対象に実施(平均年齢は男性が73.1(SD=5.5)歳、女性が73.2(SD=5.5)歳)。その結果、歯の喪失が認知症発症に有意に関連していることが確認された(ハザード比=1.14(95%信頼区間:1.01-1.28))ほか、媒介変数による間接効果はハザード比=1.03(95%信頼区間:1.02-1.04)となったという。

また、各変数の媒介割合は、体重減少が男性6.35%/女性4.07%、野菜や果物摂取は4.44%/8.45%、閉じこもりは4.83%/0.93%、交流人数は13.79%/4.00%だったという。これは、男性では特に友人・知人との交流人数、女性では特に野菜や果物摂取が、歯の本数と認知症発症の因果関係を仲立ちする役割を果たしていることを示すとしている。

なお、研究チームでは、今回の研究結果から、口腔の健康状態を維持し、歯をできるだけ残すことは、人との交流といった社会関係を維持することにもつながるほか、栄養摂取の維持を通じて認知症発症予防につながる可能性が示唆されたとしている。
(波留久泉)

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